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カテゴリ:ショートストーリー
あゝ人生に涙あり
ある田舎町の小学校で卒業式がありました。 おきまりの校長先生やPTA会長の長々とした挨拶などがあり、 卒業証書の授与もあって、まあ、ここまでは どこの学校にもあることでした。 でも、今回のこの学校の卒業式では、一風変わった出し物がありました。 それは、 校長先生の独唱。 伴奏はいらないそうです。 この校長先生は今年で教師生活うん十年で定年を迎える、 この町では真面目で有名な女性の先生です。 さて、何を歌うのでしょうか? それは、卒業式の当日まで秘密でした。 曲名は校長先生しか知りません。 先生方も 生徒たちも 親御さんたちも 校長先生が何を歌うか、 ああでもない こうでもない 噂しあっていました。 予想は、校長先生の真面目な人柄からして ♪ほたるの光♪ いやいや、 そう思わせておいて グーッと若ぶって SMAP ♪世界で一番の花♪ あたりを皆さん予想していたのでした。 ところが、 校長先生が 「さあ、みなさんも、よろしかったら、どうぞ」 のかけ声に続いてアカペラで独唱し始めたのは ♪じんせい らくありゃ くもあるさ くじけりゃ だれかが さきにゆく・・・♪ 御存知、テレビ水戸黄門のテーマソングでした。 校長先生が歌い始めて、しばらくは生徒たちも親御さんもクスクス笑っていました。 「ああ・・・水戸黄門の・・・」 という感じでしたが・・・ だんだん、校長先生の気迫に押されて みんな神妙に聴き入るようになり、 最後の方になると 笑いながらすすり泣く子たちも出てきました。 そして、 校長先生が歌い終わると 一同、惜しみない拍手が送られたのでした。 そうです。 この式は、 校長先生の卒業式でもあったのです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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