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カテゴリ:こはく文庫
2021年4月刊 くるみ舎・こはく文庫 著者:吉田行さん 伯爵令嬢だが体が弱かったため、屋敷の中だけで生きてきたフロレンシアはある日、馬車の事故で両親を突然亡くし天涯孤独の身になってしまう。両親の葬儀が終わったばかりだというのに、美しいフロレンシアとその爵位を狙い、強引に言い寄ってくる男たちから彼女を救ってくれたのは、国王の嫡子であるクラウディオだった。クラウディオにより王宮へ招かれたフロレンシアは、生まれてはじめて恋を知った。しかし、生まれつき血が少なく子供を成すことはできないだろうと言われているフロレンシアは、子孫を残さねばならない立場にあるクラウディオを思い身を引く覚悟を決め……。 ↑楽天ブックスより、あらすじ文引用 kindle unlimited読み放題にて読了。 病弱な令嬢とそんな令嬢を妻に迎えた王子のお話。 ここからネタバレと感想。 クエスタ伯爵の一人娘であるフロレンシアは、生まれつき体が弱く酷い貧血症であったため、主治医からは将来子供を成すことは難しいと告知されていた。 よしんば妊娠できたとしても出産の際に命を落とす危険性がかなり高いと聞いた両親は娘を憐れみ、家の為に婿を取る必要はないと常々言っていた。 この国では女性は爵位を継げない。本来ならば今年18歳になるフロレンシアは然るべき相手と婚約くらいしていなければならない年齢なのだが二人は敢えて婚活の類はしていなかった。 自分たちに何かあった時は国王に後見を頼んであるので心配はいらないし、フロレンシアが一人になっても一生何不自由なく暮らせる財産もあるからと。 眩暈により昼間からベッドの住人であった娘に縁起でもない話をしていたクエスタ伯爵夫妻は、その日王宮からの帰り道馬車の事故により、二人揃ってこの世を去った。 馬車が崖から落ちたと聞いていたが、不思議と二人とも綺麗な死に顔であったのが唯一の幸いだった。 フロレンシアは突然一人になった不安と悲しみで数日寝込んだものの、両親の葬式の場には喪主として何とか立つことが出来た。 そんな彼女の元に、ドラン公のマリオンと名乗った男が現れ、自分はフロレンシアの婚約者であると告げられた。生前の父に娘を頼むと言われたと主張するマリオンに、彼女は違和感を覚えた。 両親は常々、自分に結婚する必要はないと言っていたのに、果たしてフロレンシアの知らない相手を婚約者に選ぶだろうか。 フロレンシアの付きのメイドであるエマも不審に思ったらしく、主も知らぬ婚約者など有り得ないと主張したが相手は貴族、メイドの言葉などに聞く耳を持たず、ついには痺れを切らしてフロレンシアを連れ去ろうとする暴挙に出た。 そんな彼女を救ったのは寸での所で式場に現れた王太子・クラウディオで、彼の宣言により、フロレンシアの身柄は王家預かりとなったのであった。 その日のうちにフロレンシアはエマと王宮住まいとなったのだが、彼女の生活に関してはクラウディオが一任されているらしい。 クレスタ伯爵は娘のためにたんまり財産をため込んでいたと言う噂でもあったのだろう、フロレンシアと結婚すれば、美しい彼女だけでなくその財産も手に入ると考え、マリオンが早々に乗り込んできたようだ。 だが、今後もその手の輩が押しかけて来る可能性があるのは否めない。そんな時エマ一人では防ぎきれないのは明らかだった。 おそらく、それを見越してもしもの時のためにと王に後見人を頼んだのであろう。 改めて両親の愛情に感謝しつつ、フロレンシアの王宮での暮らしは思ったよりも順調だった。 クラウディオは体調を崩してよく寝込む彼女の元に日参しては、何くれと望みを聞き尽くしてくれた。 そんな彼にフロレンシアは段々と惹かれて行くのだが、子を産めない自分が王太子に恋をしても迷惑だろうと考え、ある日彼女は修道院に行きたいのだとクラウディオに申し出た。 だが、その申し出は却下された。クラウディオはフロレンシアを妃にしたいのだと言う。 実は彼のお妃候補としてフロレンシアの名が挙がったこともあったらしいが、娘の身体を案じた父が辞退したのだそうだ。 クラウディオは喪服姿だった彼女に一目惚れし、父王にも結婚の許可をもらったと改めてフロレンシアに求婚したのだった。 とは言え、自分は子を産めないと彼も知っているはず、それでもいいのかと聞くと、弟の長男に王位を継がせると話は既についていると言う。 諦めなければならない恋だと思っていたのに、結婚に障害が無いと知ったフロレンシアはクラウディオの求婚を受け入れ、両親の喪が明けてから二人は盛大な式を挙げたのだった。 二人の結婚に伴い、クラウディオの弟・ベルトランの家族が王宮で暮らすことになったのだが、どうやら彼は女性問題で騒動を起こして長らく辺境の地に送られていたのだそうだ。 しかも、クラウディオとはすこぶる仲が悪いらしい。 だが、王太子夫妻に子が望めない以上、ベルトランの長男のディエゴがいずれ王位を継ぐことになる。 本当はディエゴのみを引き取りたかったようだが、まだ6歳の少年を親元から引き離すのは可哀想だとフロレンシアが止めたのだった。 ベルトランは外面と愛想の良い男であったが、あのクラウディオが毛嫌いするだけあり、お調子者で傲慢であった。王宮に戻って早々女遊びを繰り返し騒動を起こしていたのだが、未来の王であるディエゴの父と言うことで目溢されていた。 ある日、フロレンシアはメイドたちの噂話により、国王が十年ほど待ってディエゴを次期王に据える心積もりらしいと耳にして衝撃を受けた。 本来ならばクラウディオが継ぐはずなのに、後継を望めないから王位継承から蚊帳の外にされかかっているのだと知り、フロレンシアは彼の子を産むことを決心すると、そのことをクラウディオに打ち明けるのだった。 当然、彼女に死んでほしくないと反対されたが、自分は絶対に死なないからと考えを曲げず、結果クラウディオが折れる形となった。 半年後、フロレンシアが懐妊。時を同じくしてベルトランの数々の問題が明るみに出て、彼はまた辺境の地送りとなり、クラウディオの立場は守られた。 数か月後、フロレンシアは男の子を産んだが、難産だったことと大出血のせいで三日三晩意識不明に陥った。幸い、目覚めて事なきを得たが貧血により母乳を与えることが出来ず、アルフォンソと名付けられた息子の世話は全て乳母任せとなった。 たまに会わせては貰えても、息子は一向に彼女に懐かず思い悩む日々が増え、後継を産んだ自分は役御免とばかりにフロレンシアは再び修道院行きを希望したのだった。 だが、この状況にはクラウディオも思う所があったらしく、家族三人だけでの離宮住まいを提案した。 今後は乳母に頼らずに夫婦二人で息子を育てようと言うのだ。 アルフォンソはテレーズと言う乳母に一番懐き、テレーズもまたそれを自負していたようだが、虚弱な身体ながら努力するフロレンシアの姿を見て見守ることにしたようだ。 アルフォンソが3歳になる頃にはかなりのママっ子となり、フロレンシアもまた息子に付き合い太陽をよく浴びたことで体質も改善されていくと、再び身籠って第二子である王女・ブランカを産んだ。 数年後、クラウディオが王位を継ぎ、王妃となったフロレンシアとはいつまでも仲睦まじく、四人もの子宝に恵まれたのだった。で、了。 総ページ数127ということを鑑みて、まあこんなとこかなぁって内容でした。 クラウディオが良い旦那さんってのはまぁ伝わってくるんですけど、虚弱なヒロインは途中出産が元で亡くなるのかと思いきや、体質改善されて4人も子供産んでました。 それが悪いってわけじゃないし、悲恋物は読んでても辛いからハッピーエンドが一番なのだけれど、あれだけ子供産んだら命が無いとまで言ってたのにな、と思うと・・・。 取り敢えず、家族6人で幸せそうで何より。 評価:★★★ 展開自体は早いので、さらっと読む分にはいいかと。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2022.02.25 22:38:13
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