なりゆき散策日記

　賞を受賞して評価も高いというので、思い切ってみることにした。

　あらすじが、重くて聞いただけで「信じられない」とヒロインに
感情移入できるか不安だった。

　プレシャスはヒロインの名前。偉く肥っている。
親しい友だち、心を許せる先生などいない。
こうであればいいと想像するときのプレシャスは笑顔で他人に囲まれ
賛辞のなかにいる。

　つらいときには楽しいことを思い浮かべてはやくいやな時間が
おわることを待つ。

　ハーレムのアパートで母親は生活保護手当を糧にして仕事もしない。
ツメには鮮やかなマニュキュア。ブランドを下した陽のあたらない部屋。
プレシャスに命令し食事を作らせる。そして作られたものをみては、
プレシャスに文句をいい、「自分で食べな」という。

　「こんなものが食べたい」
「これを買いたい」「こう将来はなりたい」
親子の会話がない。

「読み書きなんで無駄さ」と母はいう。これが母親の最大のコンプレックスかと
思ってみていた。この母親は、そんな経験を積んで今の生活をしているんだろう？

　子どもが好きでもないのにできたのか？

　目的もなくテレビをながら見続け、手当の調査がくるときだけ
｢仕事を探してます。電話はこなくて」と言い訳する。

　プレシャスは、一度出産してその子はダウン症。祖母が面倒をみている。
そしてまた妊娠した。父親は同じ男だ。母親の恋人か自分の父か
映画をみた限りでは、つきつめてわからなかった。レイプだから。

　二度目の妊娠が原因で学校を退学になる。

そして、フリースクールを勧められそこで初めて居場所を見つける。

　初めて書くということで自分の気持ちを表現することを知る。
人前でスピーチすること、クラスメートと打ち解けて仲良く心許せること。
尊敬できる先生。

　しかし家庭はそのままだ。

　やはり家庭から離れるのが一番いいことなのかもしれない。
どこまで行政が入り込めるかが、プライバシーの兼ね合いもあって
進まないのだろうけど…。

　ソシアルワーカーにマライア・キャリーがほとんど素顔ででていて
私は分からなかった。腫れぼったい顔だけどどこかで見たことある。
ビバリーヒルズのブレンダかなと思いながらみてました。

　黒人社会の負の連鎖の構造を出しているわ。

　今までみた黒人の映画でも底辺の家庭だと思いました。

　プレシャスはとても前向きで、高校や大学への進学も希望して
未来を疑っていない。これでもか、これでもかと泣きたくなるくらい
ひどい劣悪な環境に追いやられるのだけど、プレシャスが悪いのではなくて
周囲の人間が悪い。

　育てれないなら養子に出す、施設に預ける、公的機関に相談すると
私がプレシャスの母親に助言したくなったけど、そこはきっと文字も読めないから
情報もしらないままにここまで生活していたんだと想像しました。

　だから読み書きが大事、勉強が必要なのよという考えにならないで　

ひきこもって社会から寸断された閉鎖された空間ですごしている。


　とてもつらい内容だったけれど、見てよかったと感じた。
子どもは親を選べない。私も今からでは遅いので孫ができたら
絵本の読み聞かせをきちんとしてあげようと決意しました。