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窓からの陽光。静寂の中の劇的瞬間。描写の緻密さ。デルフトの巨匠も出品。
上野の東京都美術館にフェルメール展を観に行きました(12/14まで。金曜日は午後8時まで)。結構混んでいましたよ。行かれる方は早い時間帯に。 フェルメールが展覧会に出品される事は殆ど無いので珍しいですね。今回の展覧会ではフェルメールの作品が7点出品されています。他、同じオランダはデルフトの地で活躍した、フェルメールに影響を与えたとされる画家達の絵も31点合わせて展示中です(注意。パンフレットにはフェルメールの「絵画芸術」が出品されると書いてありますが、作品保護の観点から急遽「手紙を書く婦人と召使い」に変更になりました。他、エフベルト・ファン・デル・プールの「デルフトの爆発」も同じ理由で出品されていません)。 では、鑑賞する際に何の参考にもならない(^O^)感想を(番号は作品番号)。 1.ヤン・ファン・デル・ヘイデン「アウデ・デルフト運河と旧教会の眺望」 2.ヤン・ファン・デル・ヘイデン「アウデ・デルフト運河から見た旧教会の眺望」 この二枚は同じ画家が同じ風景を同じ方向から描いています。ただし15年の歳月を隔てて。並列し展示するのは良いアイディアですね (1はデトロイト美術館所蔵、2はオスロ国立美術館所蔵)。1より2の方が、空気遠近法の技法が上達しているのが判ります。 実は3階に同じ場所の現在の写真が展示されています。それがあんまり変わってないの。17世紀から変化なし。う~ん、凄いというか、だから欧州ではダダイズムが登場したのか、というか。 因みに、この作者、消防ホースの発明家でもあります(^o^)。 3.ヘラルト・ハウクヘースト「デルフト新教会の回廊」 白い柱と湾曲した天井アーチの幾何学的ラインが美しい作品。空気の清涼感が感じられます。遠近感が誇張されていますね。ハウクヘースは透視図法に秀でた画家として有名で、だからこういう誇張もお得意だったのです。「魚眼レンズのよう」と作品解説にありました。 魚眼レンズって既に発明されていたのでしょうか。気になります。もし彼が魚眼レンズを知らなかったとしたら、かなり面白い。 右下に点景で犬がいます。 4.ヘラルト・ハウクヘースト「ウィレム沈黙公の廟墓があるデルフト新教会」 「ウィレム沈黙公」は、まぁ言ってみれば「オランダ独立の父」みたいな人です。何故「沈黙公」と呼ばれるかというと、旧教vs新教対立激烈なりし頃の16世紀に、表向きは旧教徒のような態度を示す事によって(つまり黙っとった訳)、新教徒を大虐殺から救ったからです。 オランダの日光東照宮みたいな物ですかね(違うって)。この絵、点景の人物はさらりと描かれています。犬もいます。 5.エマニュエル・デ・ウィッテ「デルフト新教会の内部」 実際の教会内部を正確に写した物ではなく、右の柱を削除し、左の柱の間隔を詰めて描かれた物、と解説にありました。 教会内部の手前にカーテンレールとカーテンが描かれています。実際にこのようなカーテンが教会内部に掛かっているのでしょうか。それとも、トロンプ・ルイユ(だまし絵)なのでしょうか。 点景で犬が3匹います。1匹がもう一匹のお尻の匂いを嗅いでご挨拶中。そこにもう一匹が駆けて来ています。うんうん、犬って嗅ぐよね。 6.ヘンドリック・コルネリスゾーン・ファン・フリート「オルガン・ロフトの下から見たデルフト新教会の内部」 「新」教会だからでしょうか。左手前の床が工事中です。聖者でも埋めるのかも知れません。 点景で犬が3匹。特に右手前、柱の前の犬に注目してください。 柱に寄り添っている体の線、首の角度。間違いありません。この犬はおしっこしようとしています。次の瞬間、片足を上げて柱にしはじめる筈です。良いのでしょうか。ここは教会の中です。飼い主は話に夢中になっています。(この画家、流石に犬を良く観察してるわ。若しくは犬好き(^o^)。 教会に当時は犬を入れて良かったんですね。いつごろから禁止されるようになったのでしょうか。(そういえば、向うでは土足でそのまんま家の中に入っちゃうね。日本人のように犬の足を雑巾で拭いてから、犬を家の中に上げるというような面倒くさい事は、今でもしない筈だ。教会の中にもそのまんま入れちゃっても変ではないような気がする)。 7.ヘンドリック・コルネリスゾーン・ファン・フリート「オルガン・ロフトの下から見たデルフト旧教会の内部」 こちらは旧教会。この絵は6の絵とついになっています。建築物を描いた絵で対というのは珍しいと解説にありましたが、本当にそうですね。 床の敷石の質感が素晴らしい。点景で犬が二匹追っかけっこ。子供も何やらしています。当時の市民の生活の一端が覗かれますね。 8.パウルス・ポッテル「馬屋のそばの人々と馬」 農家の風景を描いた小品。旦那さんと奥さん。庭には鶏が沢山。そして馬。 馬小屋脇の、点景の犬に注目。大注目。とっても小さいのですが良く観てください。 犬が頭を後ろ足で掻いています。そうそう、こういう格好するよね。そして小さいながらも緻密に描かれたタマタマが顔を覗かせています。マイベスト犬ふぐり大賞受賞作品。17世紀に犬のタマタマを描いた画家がいるとは、オランダは侮れない国ですね。 9.ダニエル・フォスマール「壊れた壁のあるオランダの町の眺望」 「壊れた」とは、火薬庫の大爆発を指します。相当死傷者が出た大事故らしい。 しかし、そうした事と関係なしにレンガの感触が良く描かれた作品。一種の廃墟趣味か。 点景で犬が一匹。 11.カレル・ファブリティウス「自画像」 で、この人が、その火薬庫大爆発で吹っ飛ばされた画家。作品も大部分吹っ飛ばされてしまったらしい。フェルメールのお弟子さんに当たる人らしいです。才能がある人だけに残念。 柔らかそうな胸毛の人ですね。 14.カレル・ファブリティウス「楽器商のいるデルフトの眺望」 一見で妙な絵と感じられる絵です。遠近感が極端すぎ。右側に遠景の町並みが描かれ、中央にそれより近くの教会、左側に、3、4メートル先に座している楽器商、そして手前に描かれたコントラバス?などは鑑賞者にぶつかる程の手前。ぶつかっては困るので(^o^)、画面から上半分は飛び出し、ぶち切られています。 どうも、ある種のだまし絵として箱の中に入れられて鑑賞されたのではないか、と解説にありました。この画家が、遠近法に習熟していた事を示す作品です。 そういう事から離れて観ると、妙に落ち着かない気分にさせる絵です。歪んでて、夢の中で見たような風景だな(落ち着かないから、この絵葉書を購入。150円也。今回の展覧会の葉書は普段より50円高い)。 15.カレル・ファブリティウス「歩哨」 近世の兵隊さんが座りこんでいます。手には銃。手入れをしているのか、居眠りしているのか、鉄兜が陰になって判りません。ただ、鉄兜はピカピカなので、手入れが行き届いており、起きているような気がします。 一種の寓意画らしい作品。怠惰への戒めとか。 黒い小犬が兵隊のご主人様をお座りして見つめています。少なくとも犬は勤勉で眠っていません。 16.ピーテル・デ・ホーホ「幼児に授乳する女性と子供と犬」 この画家は暖かい家庭を描く事によって、ある種の道徳的示唆を鑑賞者に与えようとした画家だそうです。夫、父は画面に登場させないとの事。(「鑑賞者が夫、父の立場に立って見るように」という事か) 胸をはだけて赤ちゃんに乳を与えるお母さん。横で幼いお姉ちゃんは大型犬に水?を与えています。 器を持たれているので、犬はホンの少し飲みにくそう。足を踏ん張っております。 因みにこの画家、晩年は精神病院で孤独のうちに生涯を閉じたそうです。そんな人が暖かい家庭の絵を何枚も描いていたなんて、一寸悲しいものがありますね。 17.ピーテル・デ・ホーホ「食料貯蔵庫の女と子供」 解説に衝撃事実が。当時のオランダでは子供の離乳食にビールが推奨されていたとの事。だから画中で女性が子供に渡している壷にはビールが入っているのです。何考えてんだか判りません、昔のオランダ人は(もっともアチラさんのビールは栄養満点だそうです。私もエビオス錠飲んだ事ありますし)。 因みに画中の子供、スカートを穿いていますが男の子だそうです。なおなお訳が判りません。 ドアは開け放たれ、奥の部屋が描かれています。空間的な開放感が感じられますね(しかし「ドア開けっ放し。開けたら閉める」)。 19.ピーテル・デ・ホーホ「アムステルダム市庁舎、市長室の内部」 極端な透視画法によって描かれた作品。辻褄合わせに左上部、垂れ下がった緋色のカーテンが隠すように描かれてあります(って、明らかに不自然でしょうが(^o^)。 ここにも犬が。市長室に上がりこんでいて良いのでしょうか。 20.ピーテル・デ・ホーホ「女と子供と召使い」 愛らしい作品。幼い子供が女中さんの手を引っ張り「ね~」と言っています。子供の体は引っ張っている為、斜め。その「斜め」の所が可愛い。 21.ピーテル・デ・ホーホ「窓辺で手紙を読む女」 この時代、手紙のやり取りが普及し始めたとの事。良い解説です。現代の携帯やメールを想起するよう、ありました。フェルメールを鑑賞する際にも役立つ知識ですね。 23.ピーテル・デ・ホーホ「女主人への支払い」 牛小屋の中、女主人と客の男が立って議論をしています。支払いを巡っての揉め事です(何の支払いであったのやら)。 牛小屋の中に差し込む陽光の描写が見事。あちこちの窓から柔らかい陽の光が差し込み、複雑な陰翳を作っています。 女主人の脇に立つ、犬の目がきついです。目線は明らかに男を睨んでおります。一寸したきっかけで吠え掛かるでしょうね。犬の体の緊張感が出ています(犬って訳判んなくても人間の言い争いに参加しようとするよね)。 当時のオランダの画壇では、しばしばこの「支払いを巡っての、女主人と男客の揉め事」がテーマとして好まれたとの事。この解説だけでは訳が判りませんね。 単に当時のオランダ人は変な人たちだったのかも知れません(おいおい)。 24.ルドルフ・デ・ヨング「女主人への支払い」 上記ピーテル・デ・ホーホに影響を与えた人。こちらは明確に諷刺画と判るような絵。茜色の手前の男の服の色がアクセントになっています。 それにしても嫌な笑い方をする男だね。言い争いを見て「へへへ」笑い。争い事を見て喜ぶような奴はろくなもんじゃないね。 ここから、展覧会場は二階へ。いよいよフェルメールへ。 (その2)に続きます。 「塗り絵」だそうです。会場でも売っていました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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