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気配りと保身と作略のオトナ社会。情けなくも愛らしい日本の社会人。
「ほぼ日刊イトイ新聞」のサイトの企画が本になったもの。所謂社会人が職場で使う「符丁」語集といった本です。 前書きに、社会人になって間もない若者や、これから就職しようという学生に役立つ、「実用書」でもあると(多分半分は冗談で)書いてあります(野暮を承知で書くと、ここに出ている言葉を全社会人が使っている訳ではないですからね。広告業界といった特定業界の人しか使わないであろう言葉や、人によっては絶対に使わない言葉なんかが多数集録されています。いないと思うけど、うっかり使っちゃ恥かく場合がありますよ)。 オトナ語による昔話や歌詞のパロディも多数収録、巻末には便利な(便利か?(^o^)索引まで付いています。 一寸興味を感じた語。 「~的に」 「僕的には」の「~的に」。この珍妙な言い回しの元は、「オトナ語」にありましたか。「僕としては」と言うより、「僕の立場としては」「僕の見方としては」と立場を曖昧にしたいというオトナの事情が生み出した言葉だとか(せめてこの語が「珍妙なものだ」という意識ぐらいは残したいものです)。 「さくっと」 この語の元も「オトナ語」だそう。 「サチる」 初見。飽和する事(英語saturation)。売り上げなどが頭打ちである事を指して使われるとの事です(使われているのかぁ)。 オトナ語の特徴の一つとしてカタカナが多く含まれる点が挙げられるそうです。(p51)「従来の日本語ではうまく表せない概念などをカタカナで表現するのならまだわかる。けれど、わざわざカタカナにしているとしか思えないような言葉も非常に多く存在する。」 「オトナ語」という見地からではありませんが、私も前々からカタカナ英語の珍妙な乱用に奇異な感じを抱いていました(正直煩わしいし、使っている人が頭悪いそうに見えますよね)。汚染源は「オトナ語」かぁ。何ででしょうね。 一つには、明白に意志のみを示すと都合が悪い場合(特に拒否の意志)があるという事ですね。語感から来るニュアンスで若干「そちらの事情も斟酌しております」という含みを持たせたい。そのためにはなるべく間接、出来るならさらにその「間接表現」すら、間接的な語に置き換えた方が好ましい訳です。 で、「カタカナ英語」。「拒否します」→「同意出来かねます」→「アグリー出来かねるんですよ」といった具合。 もう一つには「もっともらしさ」「はったり」の類でしょうか。アメリカのコメディなんかに「やたらフランス語で気取る成り上がり男」なんていうのが出てきますから、日本程ではないにしてもこうした「珍妙外国語」が存在する国は多いのでしょう。 「その国に外国語コンプレックスが存在するか否か」で国を分類してみるのも面白いと思います。 「リスクヘッジ」 (p57)「『失敗したら大変だからこうしておきます』などと言うと信頼を失うが、『リスクヘッジとして3つの策を用意しています』 などと言えば先方も安心である。」 「オトナ語とは、その人のためのみ使用されるものではないのだ。」気配りね。 「コストパフォーマンス」 値段が高いのにあまり美味しくない食事を、「コストパフォーマンスが悪い」と言った人がいて、何を気取っているんだと思った事を思い出しました。食事を味わう事が、何やら工業製品を“処理”しているようで、“不味そう”な言葉。 「インセンティブ」 誘因。オトナ語では「馬の鼻先のニンジン」。(p58)「オトナがカタカナを好む要因の一つは、生々しい話がややオブラートで包まれるということもある。」 「アテンド」 本来の英語では「接待、世話」の意味。オトナ語では同行する事、立ち会う事の意。ただ横につっ立っているだけでも「アテンド」と言い換えれば、おぉ、立派な「仕事」だ。 「レジュメ」 フランス語から来ていたって御存知でしたか。でも何故フランス語の単語が。 「ジャストアイデア」 単なる思いつきの事(^O^) (私は聞いたこと無いオトナ語です。ギョーカイ人だけか)。 「ベネフィット」 メリットの事。メリットをさらにカタカナ語に言い換えてどーする(これも使った事ないなぁ)。 「~ライク」 例「ハリウッドライクな豪華さで」「年末特番ライクな賑やかさ」。情けないカタカナ語。もろギョーカイ人語でしょうね。 「パブ」 英国風居酒屋の事ではなく、パブリシティー(publicity)の事。「広報、宣伝と言え」とは言わない。「せめて略すな」と言いたい(^-^) 。 「ペイする」 本来の英語(pay)と違って、支払いや賃金という意味では使われない。「投資した分に釣り合う事」の意でしか使われない。何故、使われないのか。 「フィードバックする」 なんと「結果を報告する」という意味なのだ(これまた初見。ギョーカイ人のみか)。これは誤用だよね。学術用語を使いたがるギョーカイ人のとほほ振り(「伝統」を「DNA」なぞという言い方、残念ながら普通の人も使い始めているよう。情けない)。 「アグリーする」 (p72)「これは『同意する』でいいんじゃないだろうか。」そりゃ、そうだ。 「エクスキューズする」 (p73)「言い訳する事。『これは言い訳ですけどね』とは口が裂けても言えないが、『先にエクスキューズしておきますが』とは言えるからオトナって面白い。」カタカナ語にした事によってこんな妙な事が。当たり前ですが、部下を叱る時に「エクスキューズするな」とは絶対言いません。曖昧にする意味がないから。 「~様の携帯電話でしょうか?」 個人の携帯電話に掛ける時は最近こう言いがちであるとの事。(p94)「そう、いままさに、携帯電話におけるマナーはオトナたちによってつくられている最中なのだ。」 「~と思われます」 (p126)「オトナは個人的主張を巧みに不特定多数の声にすり替える。」「思います」なら「私が思っている」だけ。「俺だけじゃないぜ」ニュアンス。 「聞こえてくる」 「~ではないかという声が聞こえてきます」という用法。上記と同じく「個人的主張」を「不特定多数の主張」であるかのようにすり替え。「みんなそう言っているぜ」ニュアンス。 「一番ベスト」「一番ベター」 (p160)「オトナ語に文法を求めてはダメだ!意味を求めるより、感じるんだ!辞書をひくんじゃなくて、感じるんだ!」(^O^)。 巻末に「オトナの読みまつがい」コーナーがありました。 「スカイパーフェクトTV」じゃなくて「スカイパーフェクTV」だって指摘されて、初めて気付いた。皆さん御存知でしたか。 ジャーゴンって“身内”で使う言葉だから、多用するとみっともなくなります。基本的には社外の人とのやり取りに使うのは避けた方が無難(「なる早でお願いします」こんな文章をメールで出すと失礼になる場合も。他、顧客に出す文章で「中の人ですが」はやめろ。私は「外の人」だから態々注意しないけどね)。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009年05月24日 23時44分29秒
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