心の奥深い所で
6月にある教え子に会った。彼が中学を卒業して以来。その間、連絡も何も取り合うことはなかった。彼は理数系科目に強くて、国立高専に進んだ。高専卒業まであと1年となった年、彼はやめた。彼には隣に住む幼なじみの女の子がいた。同級生というこもあり、よく一緒にいた。中学1年の時、その幼なじみが病気で亡くなった。その時の彼は、悲しくて泣くこともなければ、そのことについてこれといった感情を抱くことはなかったという。いや、現実のこととして受け止めることができなくて、感情を抱けなかったのかもしれない。僕にはわからない。僕は当時、塾生たちから同級生が亡くなったことを聞いていて知っていたのだが、彼がどんな様子だったのか全く覚えていない。ある日、そのことが突然彼に襲ってきた。現れた。何もできなくなってしまった。学校に行くことはもちろんのこと、食事をとることさえもままならない状態になった。鬱になり、そして退学した。去年の秋から半年間、イタリアに住むパソコンソフト会社を営む伯父のところに出された。それがうまく作用したのかどうか僕にはわからないが、彼はこの春から、パソコンのシステム系の専門学校に通い始めた。僕は彼の語る言葉に集中して耳を傾けること以外、これといった大したことも何も言ってあげることはできなかった。でも彼は元気に頑張っているように、僕には見えた。今日、彼からメールが届いた。元気に頑張っているようだ。と思う。