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堀古英司の「米国株式の魅力」 カブカブログ(日記・ブログ) |
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ウォール街からの日記 [全102件]
当コラムでも度々ご紹介してきましたが、我々の運用方針は「良いビジネスを安く買う」事です。これだけであれば一般にバリュー投資と言われるものでしょう。しかし我々はバリュー投資を発展させ、「そもそも市場が効率的であれば、良くて安い株など存在しない」という考え方を取っています。その上で「良いビジネスを安く買」おうと思えば、市場、又は個別株がどのような時に効率的でなくなるか、そのような機会を徹底的に狙うという戦略を取っています。我々はこれを「スペシャルシチュエーション・バリュー」(特別な機会に特化したバリュー投資)と呼んでいます。 個別株で「特別な機会」はスピンオフ(分離・独立)、合併・買収、破綻後の再生、新規公開など多数のパターンが挙げられます。しかし時に、このような個別株の「特別な機会」以外に、市場全体として「特別な機会」が提供される場合があります。昨年のリーマン・ショック以降の相場は正にそのような状況だったと言えます。このような時には、「より良いビジネスがより安く買える」という状況が起こります。実際昨年以来、このような状況で投資する機会に恵まれた3つの銘柄をご紹介したいと思います。 1つ目の銘柄は検索大手グーグル(GOOG)です。このコラムや講演会等で幾度かご紹介しましたが、私はグーグルは非常に「良いビジネス」だと考えています。要は株価が安いという条件さえ満たせば「買い」なのですが、1回目のチャンスは2004年の新規公開時にやってきました。通常新規公開と言えば高い株価が付くものなのですが、当時は全く反対で、メディアを中心にグーグル株不買い運動のようなものが起こっていました。不当に安い株価での公開となった局面を捉えて投資を実行しました。そして2回目のチャンスは「リーマン・ショック」でした。「リーマン・ショック」の本質が何であるかさえ分かっていれば、グーグル株を買うというのは怖い事ではないはずです。昨年10月、310-320ドル近辺で結局ファンドの約18%まで買い進む事ができました(その後グーグル株は250ドルまで下落した後、現在550ドル)。 2つ目の銘柄はエンジニアリング大手KBR(KBR)でした。KBRは2007年に資源サービス会社ハリバートンからスピンオフした会社です(我々はスピンオフを「良いビジネスを安く買う」最も魅力的な機会と位置付けています)。スピンオフという事で、当時からずっと注目していたのですが、なかなか株価が安くなる機会を提供してくれませんでした。初めて機会を提供してくれたのは「リーマン・ショック」でした。それまで20-30ドル台で推移していた株価は10ドル台に突入。しかし1株当たり14ドルの現金を保有する同社にとって、14ドル以下の株価は説明が付かない水準と言えました。こちらも昨年 10月に14ドルに達したため投資を実行する事ができました(その後KBR株は10ドルまで下落した後、現在24ドル)。 3つ目の銘柄は記憶装置大手のEMC(EMC)でした。EMCもスピンオフに関連した銘柄で、2007年にVMWareという仮想技術の会社を分離しています。VMWareという成長企業を切り離してしまった事で、市場の成長期待が萎んでしまったのでしょう。株価は下落の一途でした。しかしスピンオフとはいえ、その後もEMCはVMWare株の80%以上を保有していたのです。我々の計算では保有するVMWare株の価値だけで1株当たり5ドル、 EMC本体の価値だけで11ドル、合計1株16ドルの価値があると見ていました。こちらもリーマン・ショック後の下落場面を捉えて、ほぼ10ドル台で投資を実行する事ができました(その後EMC株は8ドル台まで下落した後、現在17ドル)。 確かに「リーマン・ショック」は世界経済や金融市場にとって大きなピンチでした。しかし上述の通り、ピンチというのは同時にチャンスでもあります。ハイテクバブルが崩壊した2000年、同時多発テロが起こった2001年、不正会計問題が起こった2002年、イラク戦争が始まった2003年、そしてリーマンショックの2008年、いずれも例外ではありませんでした。今後も株式市場には色々な局面が訪れる事と思います。しかしどのような局面が訪れようと、実はそれをピンチと捉えるか、チャンスと捉えるかの方が重要だと考えています。 最終更新日時 2009年10月27日 19時39分52秒 トラックバック(0) |
7月の楽天証券10周年セミナーでも少し触れましたが、現在の国際金融環境を鑑みるに、金は欠かせない投資対象の一つと考えています。我々が運用するファンドで金への投資(正確にはドル建て金ETFのコールオプション)を実施し始めたのは今年春の事でした。ファンドを運用し始めて9年半になりますが、当時はまさかファンドに金を組み入れる事になるとは考えてもみませんでした。 繰り返し申し上げてきた通り、大手金融機関が連鎖倒産して金融システムが麻痺してしまうかもしれないという「リーマン・ショック」は今年春で一旦終了しました。しかし、それは世界各国政府による様々な対策のおかげである事を忘れてはなりません。そして各国政府はそれを実行するために、大きな犠牲を払っているのです。 大きな視点で見れば、現在世界経済を襲っているのはデフレです。各国政府はこれを克服するために財政出動して国債を増発、しかしその国債は中央銀行が買っていますから、市場には印刷された通貨が残ります。こうして世界にはこれまでにないペースで通貨が印刷されています。これまで通貨、又は通貨をベースとした様々な資産に価値保全機能を求めてきた投資家にとってはたまったものではありません。相対的に、自分は多めに持っていると思っていた通貨が、知らないうちに周りの人も皆、沢山持っている、という状況が起こりつつあるのです。 このような状況で、投資家はどのように資産の価値を守る事ができるのでしょうか?金への投資は一つの有効なヘッジ手段だと考えています。もともと短期金利は殆どゼロという状況が続いています。政府の希望は、ゼロ金利を続ける事によっていつか住宅価格が上昇して資産デフレが解消する事でしょう。しかし住宅価格は、バブルだったものが下落して正常に戻りつつあるというのが現実ですから、金利ごときで解決するような簡単な問題ではありません。むしろ今の状況では、政府の意図せざる結果を生む事になってしまうでしょう。即ち、低い短期金利を利用してレバレッジをかけられる、商品のような市場に投資家の資金が流入してしまうのです(株も悪くありませんが、商品の方が高いレバレッジがかけられます)。中でも規制が強化されつつある原油市場と異なり、金市場で実需の割合は低いですから、金価格が上昇して困る人はそれほどいないでしょう。 金はよくインフレヘッジと言われます。しかし私はむしろ、デフレが続けば続くほど金に資金が流れやすくなると考えています。デフレが続けば各国政府はますます通貨を印刷してくるだろうからです。通貨が印刷されても、皆がこれをタンスにしまっている間はインフレは起こりません。その間に投資家は、せっせと資産の一部を金に移して保全を図っていくという訳です。 このような考えから、これまでにはなかったような、株式や債券に投資されていた資金の一部が金に向かいつつあります。しかし巨大な市場である株式や債券と比べ、金というのは極端に小さな市場です。株式や債券市場からの少しの資金流入で、価格は敏感に反応してくるでしょう。しかも一連の金融危機に対応して各国政府が取った対策に嫌気をさした株式や債券の投資家の資金が金市場に流入し始めてから、それほど時間が経っている訳ではありません。金は今週、史上最高値を更新しましたが、相場はまだ若いと考えています。 最終更新日時 2009年10月9日 11時45分13秒 トラックバック(0) |
リーマン・ブラザーズが破綻してから今日で丁度1年となります。皆さんの生活にとって経済は非常に重要な要素だと思いますが、リーマン・ショックが実体経済に影響を及ぼし始めたのは少なくとも数ヵ月経ってからだったと思います。経済の先行きを占う上で、金融が如何に重要であるかを証明する出来事だったのではないでしょうか。 リーマン・ショックは一言で言えば、「大き過ぎて潰せない、という前提が崩れたショック」だと思います。その証拠に、リーマン破綻後、AIG、大手証券会社、ワコビア、シティ、バンカメと、大きな金融機関に限って連鎖倒産の危機にさらされました。約6ヵ月後、財務省が大手19行を対象としたストレステストを実施し、実質的に「大き過ぎる銀行は潰さない」という姿勢を表明したので、3月に一旦このショックは峠を越したのです。 リーマン破綻からしばらく経って、「アメリカの行き過ぎた市場主義が原因」という意見が出てくるようになりました。私は逆だと思います。何故なら純粋な市場主義の下では、企業のリスクは自己責任であり、「大き過ぎて潰せない」という概念は存在しません。大きな金融機関が政府が救うだろうという、市場主義を歪める期待が根付いてしまっていたからこそ、ショックとなって返ってきたのです。ですのでリーマン・ショックは正に、市場主義が徹底していなかったからこそ起こった問題だという認識が必要だと思います。 それでは今後、このような事態を防ぐにはどのようにすれば良いのでしょうか? 私は大きく2つあると思います。第一に、「大き過ぎて潰せない」金融機関を作らない事です。場合によっては大きくなり過ぎた金融機関を解体し、もしもの場合の影響を最小限に留められるようにすべきです。しかし、現在アメリカは逆の方向に向かっています。即ち、破綻する中小金融機関を大手金融機関が次々と吸収する動きとなっており、マグマが更に巨大化しつつあるように見えます。 第二に、資本を充実させる事です。資本を充実させれば、個別の金融機関の破綻はあっても、それが連鎖するのを防ぐ事ができます。我々の分析では、今後発生する不良債権とそれに伴う損失処理の必要額を考えれば、現在の自己資本規制を8%から15%や20%に引き上げても足りないくらいではないかと思います。しかしこの点についても現在、アメリカは逆の方向に向かってしまっています。大手金融機関の間では資本を充実させるどころか、公的資金を返済、巨額のボーナス支給を再開する動きが強まっています。議会を中心に、金融機関の報酬を規制する動きがありますが、私はそれよりも、今後発生が予想される不良債権額に鑑み、思い切って自己資本比率を引上げさせるべきだと思います。現在の大手金融機関の状況では、これによって結果的に公的資金を返済したり、ボーナスを支給したりする余裕は無くなる筈です。 リーマン・ショック後、ほぼ全ての大手金融機関が政府によって救済され学んだ筈が、殆ど反省もなく、徐々に元の木阿弥に戻りつつあります。このような状態では、「次の危機を待つのみ」という状態は続く事になるでしょう。但し大手19行を守るという前提の下なので、次の危機はリーマン・ショックとは異なる形態を取ると見られます。即ち大手19行に危機が発生した場合は、自ずから議会の承認が必要な巨額の公的資金の注入が必要となります。しかし大手金融機関が上記のような態度で、アメリカの一般国民、ないし議会が公的資金の拠出を承認するでしょうか? 現時点では可能性はほぼ皆無だと思います。その時金融市場はどうなるか…? TARP(不良資産救済プログラム)が当初否決され、ダウが777ドル下落した去年の9月末が思い出されます。 リーマン・ショックは非常に大きな痛みを伴いました。しかし、市場が送ってきたこのようなメッセージをアメリカは謙虚に受け止めなければならないのです。即ち、世界の国々がいくらでも国債を買ってくれ、それによってアメリカ国民がいくらでもお金を借りられる時代は終わったのです。市場はアメリカが、債務を適正水準に戻す事を求めているのです。家計は債務が適正水準に戻るまで消費も投資も増やす事はできません。企業は債務が適正水準に戻るまで雇用を増やす事はできないのです。ウォール街を含め、アメリカが市場のメッセージを謙虚に受け止め、将来に生かす事ができるようになるまで、市場は次々とメッセージを送り続けてくる事になるでしょう。 最終更新日時 2009年9月15日 11時13分5秒 トラックバック(0) |
2007年に始まったアメリカの一連の不良債権問題に関し、明確にしておかなければならない事があります。それは第一に、2008年9月「リーマン・ショック」をきっかけに始まった大手金融機関が連鎖倒産し、金融システムが麻痺してしまうような状況は今年春をもって既に遠のいた事、第二に、一方で不良債権問題は解決していないという事です。大まかに言えば、アメリカ財務・金融当局は、前者に対しては問題先送り措置を取り、後者に対しては多くの負担を国家に転嫁する措置を取りました。ですので今後不良債権問題に伴って発生する損失は、一部が金融機関、残る多くの部分が政府の負担になります。この結果、来年以降アメリカが経験するであろう危機は、リーマン・ショックとは性質が異なるものになると考えられます。 アメリカ財務・金融当局が一番初めに取った問題先送り措置はリーマン破綻3日後の空売り規制でした(第228回 米財務・金融当局が「麻薬」に手を出した理由(2008年9月22日))。もちろんリーマン・ブラザーズが破綻したのは空売りが原因ではありません。リーマンが不良債権を抱えていたのが原因であり、それに耐えられる資本を蓄えていなかったのが原因です。しかし当局は不良債権や資本不足の問題に着手する代わりに、金融機関の空売りを規制するという愚策に出てしまったのです。 時価会計ルールの緩和も問題の先送りに過ぎません。銀行がお金を貸して、金利は毎月受け取り、将来見込まれる貸倒損失は計上しなくて良いのであれば、「今は」儲かるに決まっています。保険会社が保険料だけ受け取り、将来見込まれる保険金支払に備えていないようなものですから、問題が先送りされているだけなのは明らかです。 ストレス・テストは市場心理を大幅に改善させる効果はありましたが、今回の不良債権問題が大手行750億ドルの資本増強で済むと信じている人は殆どいないと思います。実際我々の分析では、同じ債権でも額面100に対して市場価値に近い50近くまで落としている銀行と、まだ80-90のままバランスシートに載せている銀行と様々です。そもそも個別債権の評価が30-40%違う銀行業界で、有形普通株自己資本が4%で健全と判断するストレステストを、不良債権問題の解決のきっかけとするには無理があるのです。 これら先送りされた問題は銀行に残ってしまっています。しかし、政府が大手19行は潰さないという強い意志を示しているので、リーマン・ショックのように、それによって金融システムが脅かされる状況になる可能性は低いでしょう。一方で毎週FDIC(連邦預金保険公社)が発表している中小銀行の破綻は今後も増加していく事になると思います。 リーマン・ショックに代わって今後大きな問題になると考えられるのは、現在政府が実施している様々な「保証」です。昨年10月に議会承認された70 兆円のTARP(不良資産買取プログラム)資金は今年3月時点で残り5兆円と、ほぼ枯渇するに至りました(株式相場が安値を付けたのも、TARP枯渇に対する懸念が一つの要因でした)。困り果てた当局が積極的に利用し始めたのが、すぐに負担が発生しない様々な「保証」です。今年6月時点で、様々なプログラム名の下、連銀で約620兆円、FDIC関連で約170兆円、政府系住宅金融関連で約75兆円の保証が実施されています(連銀であろうと、FDICであろうと、政府系住宅金融であろうと、最終的に国民負担である事に変わりはありません)。 これらはいずれも、すぐに負担は発生しないものの、住宅市場や雇用情勢が回復しなければ同時に損失が発生し始め、しかもその負担は巨額なものに上るというリスクを内包しています。果たしてアメリカ政府の財務体質はこのようなリスクに耐えられるのでしょうか。答えはもちろんNO, WE CAN’Tです。 最終更新日時 2009年9月3日 15時4分50秒 トラックバック(0) |
前回のコラムで、次の金融危機の引き金になると申し上げた「レバレッジ倍率5倍組」、その正体は平均的なアメリカの住宅保有者です。 リーマン・ショックの半年前、2008年3月に証券会社ベアスターンが実質破綻するまで、アメリカの適格住宅ローンは、自己資金が20%、ローン上限金額417,000ドル、一定以上のローン支払い能力というのが要件でした(但し自己資金は3%以上であれば一応、要件を満たすとされていました)。自己資金が20%以下、という事は1÷20%=5で、レバレッジ5倍以上です。これが平均的なアメリカの住宅保有者の姿です。 便宜的に、417,000ドルを4000万円に置き換えて考えてみましょう。自己資金1000万円を拠出し、銀行から4000万円を借りて5000 万円の住宅を購入したとします。アメリカ主要都市の住宅価格動向を表すケース・シラー住宅指数は最新の数字で前年同月比17%下落していますから、前年の同時期に5000万円で購入した住宅は「平均で」4150万円にまで値下がりしています。「平均で」4150万円ですから、中にはもっと価値が下がっている住宅もあれば、そこまで下がっていない住宅もあるという事です。 一方で住宅ローンを借りて1年しか経っていないという事は、元本はまだ殆ど返済していないでしょうから、ほぼ4000万円そのままでしょう。もし今、この住宅を4150万円で売って住宅ローンを返済したら、当初1000万円拠出した自己資金の部分は150万円しか残りません。恐らくその150万円の中から住宅売却に伴う様々な手数料や税金を負担しなければなりませんから、既に自己資金はほぼ消えてしまっている計算になります。 自己資金がほぼ消えただけならまだマシな方かもしれません。中には、例えば3500万円に値下がりしてしまっている住宅もあるでしょう。このような住宅をもし今売却しても、4000万円残っている住宅ローンは完済できない事になります。このような住宅ローンはUnderwater(水面下)ローンと呼ばれます。この例では住宅ローンの4000万円が「水面」で、住宅価格がそれ以下に値下がりしてしまっているという事です。先日ドイツ銀行が発表したレポートによると、このようなUnderwaterローンは2011年までに住宅ローン全体の48%に上ると言われています。ちなみにアメリカでは、住宅保有者の約7割が住宅ローンを保有しています。私がこの「レバレッジ倍率5倍組」が来年以降、大きな問題となると考えている理由は以下の通りです。 アメリカでは半数強の州で住宅ローンは「ノンリコース」(担保を超える返済義務を負わない)です(たまに日本の評論家の方で、アメリカの住宅ローンは全てノンリコース、というような言い方をされる方がいますが、それは誤りです)。それではノンリコースによってどういう事が起こるのでしょうか? 通常、住宅ローンのデフォルト(債務不履行)は、住宅ローン保有者の所得減少、失業など、返済しようにも出来なくなる場合に起こるものです。しかし住宅ローンがUnderwaterと分かった場合に人々はどのような行動を取るでしょうか?現在4000万円の住宅ローンを抱えているが、隣で同様の住宅が3500万円で売っています。すると、銀行に対する信用さえ気にしなければ、住宅ローンの返済を止め、今住んでいる住宅を銀行に差出し、隣の住宅を買うなり借りるなりした方が有利という状態になります。即ち、住宅ローンはUnderwaterになった瞬間、これまでには居なかった「銀行に住宅を渡した方が得」という層が急増してしまうのです。言うまでもなく、銀行が住宅を持つとロクな事はありません。差し押さえにかかる弁護士、裁判所の費用や、売れるまでの住宅の管理費や固定資産税、空き家の場合は傷みが激しく空き巣に入らる事もしばしばです。この結果、住宅の価値もローンの価値も更に下がってしまうのです。 アメリカで住宅金融が現在の、政府系住宅金融機関を柱とするシステムになってから、平均住宅価格が前年比10%以上下落するのは初めての事です。しかも今回は大半の住宅ローンがUnderwaterとなりかねない、20%の下落に近付いてきています。アメリカは今後急増すると見られる、「銀行に住宅を渡した方が得」という人達と対峙しなければならないという、大きな爆弾を抱えているのです。 最終更新日時 2009年8月17日 14時24分17秒 トラックバック(0) |
昨年9月15日リーマン・ブラザーズ破綻の翌朝、私はテレビ東京の朝の番組に出演させていただく機会がありました。その番組の中でキャスターの方から「次の破綻は?」と聞かれ、「銀行業界に広がっていくでしょう」と答えました。 バブルが形成された原因や過程の話を別にすれば、2007年前半から一貫して進行しているのは、住宅をはじめとする資産価格が下落しているという事です。そして破綻していっているのは概ね、レバレッジ(自己資本に対する債務の倍率)の高い順番だという事です。 住宅金融において一番レバレッジ倍率の高かったのは本コラムでも2007年後半から幾度かにわたって書かせていただいた(第212回 サブプライム問題の本命は?:モノライン(4)(2008年1月29日))モノライン(金融保証会社)でしょう。保証債務の殆どが財務諸表には表れていないため、一見レバレッジの高さを測ることは困難ですが、我々の分析ではモノライン大手のMBIAやアムバックでレバレッジ倍率は100倍を超えていました。これは例えば、100万円の頭金しかないのに、9900万円を借りて1億円のマンションを買うようなもので、無理をしている事は明らかでした。案の定、2007年半ばに70ドルであったMBIA、90ドルであったアムバックの株価はそれぞれ2008年初に10ドルを割るに至りました。 次に破綻に追いやられたのは政府系住宅金融機関であるファニーメイとフレディーマックでした。これら政府系住宅金融機関の法定自己資本比率は2.5%なので、これだけだとレバレッジ倍率は40倍(1÷2.5%)という事になります。しかし、この2社は簿外の保証業務も行っていて、それを合わせると50-60倍というレバレッジ倍率になります。この2社は、1回目に訪れた2008年7月の危機においては政府の保証により一旦救済されたものの、9月初に訪れた危機には耐えられず、結局リーマンの一週間前に政府の管理下に置かれる事になりました(第227回 ファニー・フレディー問題(6)〜ファニー・フレディー公的管理下へ(2008年9月8日))。 その次がリーマン・ショックに代表される大手証券会社でした。大手証券会社は近年レバレッジ倍率を徐々に高め、30-40倍というのが平均の姿でした。破綻の危機はリーマンだけでなく、一瞬にしてメリルリンチ、ゴールドマン、モルガンスタンレーに広がるに至りました。 ここまで来て冒頭の通り「次の破綻は?」と聞かれたら、レバレッジ倍率が10-20倍の業界を考えるのは当然の流れです。レバレッジ倍率10-20倍の業界は何か、を考えた場合、これは明らかに自己資本比率8%(=レバレッジ倍率1÷8%=12.5)でやり繰りしている銀行業界に他なりません。実際リーマン・ショック後、2008年末にかけて危機はワシントン・ミューチュアル、ワコビア、シティ、バンカメなど大手銀行に広がりを見せました。 預金を保護しなければならないという制約がある以上、政府としてはこの「レバレッジ12.5倍組」を救済しない訳にはいきません。公的資金70兆円がほぼカラカラになるまで使い切り、問題の先送り措置を講じて、ようやく今年3月に一旦金融システムの混乱を沈静化するに至ったのです。このコラム(第240回 「問題先送り」で相場は上昇へ(2009年4月9日))で書かせていただいた通り、米当局は今回、かなり時間を稼ぐのに成功した感があります。一方、私はかなり時間を稼ぐのには成功したものの、残念乍ら決してこれで終わった訳ではないと見ています。 これまでの順番で行けば、次は「レバレッジ倍率5倍」に危機が訪れる事になります。そして実際、私はこの「レバレッジ倍率5倍組」が次の金融危機の引き金になると考えています。その「レバレッジ倍率5倍組」の正体は何なのか(7月初の楽天証券10周年セミナーにお越しいただいた方はご存知ですね)、次号でご説明したいと思います。 最終更新日時 2009年7月29日 19時5分53秒 トラックバック(0) |
今月4日(大阪)と12日(東京)に行われた楽天証券10周年記念セミナーで、私は株式相場について2009年は↑、2010年は↓との見通しと、その理由について講演させていただきました。 今年後半にかけて株式相場が上昇するとの見通しは、実は4月(第240回 「問題先送り」で相場は上昇へ(2009年4月9日))から変わっていません。様々な批判はあるものの、米国政府は問題を先送りするのに力を入れ、少なくともそれによってすぐに金融システムが麻痺してしまうような最悪の状態は避けられたのです。問題を先送りせずに、根本的な問題を含めて解決できれば良かったのでしょうが、それらを全て解決する時間もお金もありませんでしたし、最後の方は議会や国民の猛反対に遭いましたから、仕方がなかったという見方もできます。最悪の状態は避けられたにも拘わらず、株式市場はまだ「最悪の状態が近々再び訪れる」という水準での取引となっている訳ですから、このギャップが縮小する形で株式相場は上昇すると見ています。 今年1月の楽天証券新春セミナーで、「9・15をきっかけに余計なリスクが始まった」と申し上げました(9・15はリーマンが破綻した日であり、金融システムにとっては9・11級のショックであった事から私が名付けた言葉です)。重要な事は、それまでも景気後退や不良債権問題に対する懸念は存在していた事で、9・15をきっかけに始まったものではないという事です。では9・15をきっかけに始まったものは何かというと、大手金融機関が連鎖倒産していくかもしれないという、取引相手(カウンターパーティ)リスクです。実際、リーマン破綻から数日後にAIGが実質破綻、ウォール街の大手証券会社も連鎖倒産寸前にまで追いやられました。10月から年末にかけてはシティやバンカメを含む大手銀行、そして3月初めにかけてシティやAIGに再び資本注入されるまで、市場の取引相手リスクに対する懸念は後退する事はありませんでした。 新春セミナーでは、私はこれは「余計なリスク」であり、CDSの統一市場設立が進んでいるので3月にも相場は底を打つとの見通しを示しました。「余計なリスク」というのは、このリスクはCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)市場のインフラが未成熟なまま急拡大してしまった事によって生まれたものだからです。 1970年代、外国為替取引において、多くの銀行が欧州時間に旧西ドイツのヘルシュタット銀行に独マルクを支払ったのに、米国時間に米ドルを受け取れない、という事態が発生して金融システムが揺らいだ事がありました。今では外国為替取引は差金決済になっていますから、このような「余計なリスク」は殆ど発生しませんが、当時は外国為替市場が未成熟であったからこそ発生した事故でした。CDS市場は1970年代の外国為替市場と同じような状態で、インフラさえしっかりしていれば、このような「余計なリスク」は排除できたはずなのです。CDS統一市場の設立は現在進行形ですが、少なくとも今年春先までのような「余計なリスク」の多くは心配しなくてよくなった事は確かです。 このような、去年9月から今年3月まで続いた「余計なリスク」が一旦去った証拠は先行指標を中心とする、様々な所に表れています。リーマン・ショックが走った昨年9月と比較してみますと(カッコ内はリーマンショック前)、10年物国債利回り3.69%(3.73%)、株価変動率指数 24.4(25.6)、住宅建設業指数15(17)、ミシガン大消費者信頼感指数71(70)、ISM製造業指数44.8(43.4)となっています。対して株式相場の方はダウ8700(11,000)、S&P500指数940(1250)と出遅れが顕著です。セミナーでもお話しさせていただいた通り、7-9月期はオバマ景気対策が最も強く表れてくる時期でもあります。2009年は↑と見てよいと考える理由です。 次回は、実はセミナーで多くの時間をかけてお話しさせていただいた「2010年は↓」についての考えをお示ししたいと思います。 最終更新日時 2009年7月21日 19時6分53秒 トラックバック(0) | |一覧| |
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