よく吟味してつかうにおいては・・・・ 宮本武蔵 『五輪書』
よく吟味してつかうにおいてはその家久しく崩れがたし。 宮本武蔵 『五輪書』気配り、目配り、おもいやりこういう言葉があります。ハイテックな時代になったとしても、これは重要なファクターだと思います。宮本武蔵は勝負に勝つということをまとめた兵法書、『五輪書』のなかでつぎのように表現しています「兵法の道、大工にたとへたる事」としています。気配りするとは、木くばりすることなり、といっています。現代社会においての管理者のしごとを大工の棟梁の仕事に置き換えてみましょう。人材を使うことも、棟梁が家を建てる時に材料選びをすることも同じことということです。材料を使うときは、節があるとか強度はどうか?どっちに反っているかなどをよく見極めて、この材木はどこに使おうかと思案すべし。このことから、人員配置の場合でも同じことが言えるでしょう。適材適所ということです。そうすれば、立てた家も堅牢で倒れない家になるということのようです。宮本武蔵が晩年に世話になった大名に細川忠興がいます。忠興は、いいました。「用兵は将棋の駒の使い方とおなじである。駒には、それぞれ違った能力を備えている。その能力に応じて配備すべきである。歩は歩の位置に、香車は香車の位置に、桂馬は桂馬の位置に配置すること。」トップの位置は王将です。その脇を固める重役である、飛車と角。金銀は中間管理職であり、桂馬・香車はベテラン社員。そして一般社員が、歩ということ。細川忠興は最後に、「われ思うに、大切にすべきは、歩のちからなり。敵陣に侵入すれば、金に成りて手柄をたてる。」宮本武蔵がいっていることも同じなのです。木配りすることは、この将棋の駒の使い方と同じということ。その木(人材)の能力を見極めて、ビジネスライクに配置すること。好き嫌いの原理は除き、客観的に大局をみて、冷静に人員配置をすることが肝要になります。気配りをする前に、なすべきことをやりぬき、そのうえで断行するということです。義理人情を抜きにして、最適な人事をさきに行いなさいということ。『人は石垣、人は城、情けはみかた、あだは敵』こんな歌もありますね。よく吟味してつかうと盤石な体制にになり、強固なものができあがるでしょう。 MOOSEの中学時代のおはなしです。市内の将棋大会がありました。オブザーバーは、大山康晴名人でした。市内の中学校から、2~3人が市の文化センターにあつまりました。対局は5回ありました。3勝2敗以上で、商品をもらえるということでした。MOOSEは、2勝2敗で最後の対局をむかえました。べつに相手の飛車を積極的に手に入れるつもりはなかったけど、しゃにむに突っ込んでくるので、飛車をとり、かわりに歩が2枚あいてにいきました。対局は膠着状態で、序盤戦の様相のまま時間切れとなりました。勝負は判定となったのです。審判するのは、大山名人でした。MOOSEは、判定のしようがないけど、飛車をとっているので自分の勝ちかもしれないとのんきなことを考えていました。結果は・・・・・大山名人はいいました。「う~~ん。歩がないから、きみの負けだね」MOOSEは、くやしくてたまりませんでした。商品をもらい損ねたからにほかありません。あとで冷静に振り返ってみました。飛車1枚と歩2枚。歩をもっているほうが勝ち?なんで?しかしよく考えてみると、もし王手されたとして、飛車でとめると飛車を相手が手に入る。そうなると、すかさずつかわれてしまうと自分の痛手は大きい。歩を取られたとしても、歩のままってこと。『歩のない将棋は、負け将棋』この理屈に納得がいまでも、本当はできないわたしなのです。 へっぽこ棋士、MOOSE