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2007年12月07日
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■偶然の併走?

 株価指数と長期金利(10年物国債利回り)を毎日見ていると、数字の上三つがごく近い関係を保ちながら上下していて面白い。たとえば、26日月曜日は日経平均終値が15135円で長期金利が1.480%だから「151」と「148」、この一週間前の19日は日経平均が15042円で長期金利は1.465%で「150」と「146」といった調子で、ここのところ長期金利の側がやや下にあるが、今年に入ってからかなり長い期間両者は併走している。ここしばらくは共に下落傾向にあったので、長期金利が株価を「リードしている」かのように見えた。

 あらためて考えると、両者の数字が揃うべき理論的根拠はない。ただ、現在、両者の上下動がほぼ揃っているのは、両方のマーケットの参加者が共に相手側のマーケットの動向を参照しながら投資環境を解釈しているからということもあるが、大もとでは両者が共に「景気」を見て動いているからだろう。


■株価と長期金利、それぞれの決まり方

 株式の理論価格については、(1)景気拡大が企業の利益成長につながるのでプラスだが、(2)金利の上昇は、債券と株式の関係を株式に不利にするし、企業の借入資金のコストが高くなるのでマイナスに働く、という大きく二つ関係があるのだが、目下の日本の株価に対しては、景気、それも米国の景気の影響が圧倒的だ。

 トヨタ自動車に代表される日本の好業績企業の業績が海外での稼ぎに負うところが大きいことや、日本の株価に影響を与える海外の投資家の行動が特に米国の株価に左右されやすいということが背景にある。また、日本の金利がまだゼロ金利時代の水準を引きずっていて、金利物の金融商品と株式との比較が敏感に働きにくい状態になっていることもあるのかも知れない。

 一方長期金利は、(1)大まかには予想される名目GDPの成長率くらいの水準で決まる、(2)将来の短期金利の予想から決まる、といった決まり方をすると考えておけばいいだろう。もう一つつけ加えると、時には(3)海外の長短の金利に影響されることがある、というのが一応の基本知識だ。

 「名目のGDP」だから、物価が上昇すると見られると上昇するし、実質の経済が成長するという見通しに対しても長期金利は上昇する。

 従って、円高は、物価の下落につながるし成長率それ自体に対してマイナスなので、長期金利の下落要因になる。


■長期金利と財政再建の関係

 なお、名目GDPと長期国債利回りのどちらが高いのが「普通」なのかは、財政再建の問題と絡んで専門家の間で熱い議論の対象になっている。

 まず、国家財政が破綻するか否かを判断する条件の一つに「国債利回りが名目成長率を下回っていれば国の債務は無限に発散しない」という内容の「ドーマーの条件」と呼ばれるものがある。税収がほぼ名目GDPに比例して増えるとすると、政府債務の残高に対する金利が名目GDP成長率を下回っているなら、政府債務の累積額の名目GDPに対する比率は、一定の倍率で頭打ちになるはずだという数学的な条件だ。もっとも、理論上は確かにそうなのだが、政府債務がGDPの何十倍かの比率で天井を打つような場合も含まれていて、これが政治的に容認されるのかどうかは定かでないといった条件だ。これを満たさない状態になると、財政再建が急を要することについての反対論は急減する筈だ。

 また、名目GDPと長期金利の関係は、当面の財政の見通しがどうなるかに大きく影響する。たとえば小泉内閣以来の公約である2011年度のプライマリー・バランス黒字化といった状況が達成できるかどうかが、両者に左右される。与党内でも意見の分かれる、消費税などでの増税を急ぐべきとする意見と名目成長率を高めることが先だという意見のどちらを取るべきかを判断する場合に、前提条件として両者の関係をどう考えるかは問題になる。

 この問題を、筆者なりに大雑把に考えてみる。

 まず、世の中の「資本」全体の成長率(即ち利益率)とGDPの成長率に一方的な偏りがあると資本ばかりが成長したり資本が相対的に細ってしまったりするから、両者が長期的におおむね等しくなければならないということはいえそうだ。もちろんこれは、超長期的なバランスであって、いつでも達成されるというようなものではないのだが、一応はこう考えていいだろう。

 さて、一国の経済の資本の調達には、短期のものもあれば長期のものもあるし、株式によるものもあれば国債以外のリスクのある債券によるもある。この中で、長期国債がどの程度のポジションを占めるかによって結論は異なるのではなかろうか。先進各国の現実のデータを見ると、時期により、国によって長期国債の利回りは名目GDPを上回ったり、下回ったりしていて、データから自信を持って結論を出すことは難しい。

 ただし、信用リスクは国債が最も低いことを考えると、長期債利回りの方が「低くてもおかしくない」というくらいのことは言えると思う。経済財政諮問会議などで、「長期債利回りの方が高いのが当たり前だ」というような意見もあったように記憶しているが、これは、少なくとも「当たり前」とまでは言えない事柄だろう。


■個人投資家にとっての日米長期金利

 ただし、ドーマーの条件の成立は、国家財政にとってはいいことでも、もっぱら国債レベルのリスクしか取らない個人は、資産運用によって財産の長期的な価値を十全に保つことが難しいことを意味するので、喜んでばかりいられる話ではない。

 もっとも、一投資家としては、長期国債の利回りが名目GDPの先行きの見通しに反応していることを意識して日々の市場変動を理解していれば、ほぼそれで十分なので、いささか政治的な背景を持った上記の議論にこだわる必要はない。再び大まかなことをいえば、条件の変化や偏りは金利の変動によって調節されるはずでもある。

 基本的に「長期金利は将来の名目GDPの動向を見ているのだ」と考えると、少し心配なのは、米国の長期金利がここしばらくの間低下の足を早めていることだ。サブプライム問題が表面化する前には一時は5%に迫る4%台後半の利回りがあったのに、11月26日には3.85%まで低下している。

 この長期金利の水準は、米国の物価上昇率が2%台後半であることを考えると、向こう数年の実質成長率の平均がせいぜい1%そこそこの見通しと整合的だということだろうし、FRBによる政策金利の利下げも0.25%単位ならあと3回くらいは(合計で0.75%)遠からず行われる、というような状況を米国国債の投資家は見ているように思える。そういった状況は率直に言って、日本株の投資家にとって、なかなか厳しいものだと言えるだろう。

 いずれにせよ、長期金利、つまり長期国債の利回りは、安全に長期運用できる利子率の目処だし、景気の見通しに反応する経済の体温計のようなものだ。

 長期金利は、日本のものはもちろん、できれば米国のものもよく見ておきたい。





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最終更新日  2007年12月07日 11時08分20秒
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