いわぴいのドラマ日記

　「毎日同じことを続ける。それが職人だ！」親方のラストシーンの言葉が、浅草寺の鐘の音のように心に響きました。江戸情緒を色濃く残した浅草の街の風雅な夏が終わり、侘びを感じられる秋が来たというところでしょうか。「いい職人になるよ」と親方に言われた奈津も、浅草に来て本当に良かったですよね。

　それにしても結局は、対決ものになってしまいましたか・・・。それがちょっと残念でしたね。どうしても料理の鉄人が終わってから「将太の寿司」といい「鉄板少女アカネ」といい、料理となると対決ものになってしまいますね。せっかく浅草の話だったので、もっと陽介と奈津の話を深くしても良かったような気もしますが・・・。一ツ橋流の家元が引退するのでは仕方のないことだったんでしょうか。

　正直、女将が話を受けたときには、もう駄目なのかなと思ってしまいました。家元のお弟子さんたちはもっとおいしい和菓子屋さんを見つけてるのかと思いましたから。しかも、親方が言うには「総力戦」にするために、竹蔵と奈津に準決勝を任せるということだったので、見ているこちらが気が気ではなかったですね。

　それ以上に緊張してしまっていたのが奈津でした。あの気持ち、すごくわかりますね。最高責任者ではないにしろ、ひとつでも自分が間違えたらお店全体が損失をこうむるという、異様な威圧感を感じていたのではないでしょうか。ぼくもこの間まで感じていたことなので、練習で手の震えが止まらなかった奈津を見たときは、自分のことのように辛かったです。

　そんな奈津を救ってくれたのが親方でした。浅草の町を散歩して、上野公園を散策し、とにかく体を動かせば力が湧いてくると勇気付けてくれた親方。そして、普段の力を出せば竹蔵が何とかしてくれるとリラックスさせてくれた親方。まさに上司の鏡のような人ですね。これが、マネージメントというものですか。一流の職人というのは、本当にすごいなあと感心してしまいました。

　圧巻だったのは決勝戦でしたけどね。親方と竹蔵のおかげで奈津は落ち着きを取り戻し、決勝戦にコマを進めることが出来た和菓子フェスティバルでしたが、「幸福」というお題が出されてしばらく止まったままだった親方を見たときにはちょっとだけ冷や汗をかきました。目をつぶって浅草の人たちや景色を思い浮かべだしたときには、思わず「勝った！」と思いましたが（笑）親方が考えている間に少なくなった残り時間を埋めるだけの的確な指示と息のあったチームワークで優勝を勝ち取ったんでしょうね。これが義理と人情の街・浅草流のおもてなしというところでしょうか。

　優勝した後の奈津の涙も、奈津からフランスへ旅立つ陽介への蓬莱まんじゅうもすべてが浅草という夢の街の贈り物だったのかもしれませんね。大吉のお守りも親方との出会いも、浅草寺の観音様が奈津に送ってくれたこの夏最高のプレゼントだったのではないでしょうか？また、季節がめぐった後の奈津の成長や街の人たちの様子が見てみたいなと思います。いいドラマでした。

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