NASA科学者ジェームズ・ハンセン博士が地球温暖化を語る4
ハンセン博士はよくこんな質問を受けるという。「地球の長い歴史を見ると、気候が時代によって大きくちがう。それに比べれば今の変化など小さいものではないか」と。でも実は人間の文明がはじまってから、まだ数千年しか経っていない。この時代全体が氷河期のはざ間のあたたかい時代で海面水位も安定している。地球上の全ての生き物は、この安定した気候に適応している。いいかえれば、気候の変化が極めて小さい範囲でしか生きていけないのである。過去の気候の大変動では90%の生物種が絶滅したこともある。地球の平均気温が、今よりわずか1℃から2℃上昇しただけで地球は全く違った姿となり、多くの生物が絶滅してしまうであろう。人間はどうにかしてこの大規模な気候変動を生き延びられるであろう。でも他の多くの生物は死んでしまう。そして生き残った人間も大きな被害を受けて、今よりずっと貧しくなってしまう。危機を回避するために残された時間はあまりない。なぜなら、すでに大気中にたまっている温室効果ガスだけでもあと0.5度の気温上昇を引き起こしてしまうからである。これ以上の温暖化を抑えるためには、あと数年以内に、これまでとは全く違った道を歩まなければならないのである。NHKのナレーション地球の平均気温の上昇は、気候を大きく変えてしまう。今より2度上がると、海水の温度が上昇し熱帯性低気圧が急速に成長するため、台風やハリケーンが強さを増す。大雨も増加、世界各地で洪水のリスクが高まり、多くの人が命や財産を失う。100年に一度しか起きなかった、熱波や干ばつがより頻繁におこるようになる。対策をとる余裕のない貧しい国々を中心に水不足が深刻化し食糧生産が減って、飢餓や栄養失調に陥る人が増加する。多くの人が故郷や家を失い、難民になると見られている。温暖化は私たちの生活基盤を大きく破壊してしまうのである。2007年夏日本はかつてない猛暑に覆われ、観測史上最高の40.9度を記録した。その時北極でも世界の科学者を驚かせる異変が起きていた。北極の夏の解氷面積がこの30年間ずっと現象傾向にあったが、2007年は急激に減少して、過去最小を記録。これまでの予測を30年以上先取りする急速な変化であった。