首都直下型地震と想定外の火災
東海地震を予知するために様々な研究が進められているが、予知不可能なのが直下地震だ。断層はとてつもなく多い上、ズレの周期が複雑なためだ。想定外の場所に、想定外のタイミングで襲いかかるのだ。日本にはわかっているだけでも2000箇所以上。東京では東京湾北部一帯にあり、阪神淡路大地震に匹敵するM7.3と想定されている。揺れの周期が1秒前後の細かい振動を起こす短周期地振動を起こす。ダメージを受けやすいのが、10m以下の木造2階建て家屋だ。築30年の木造住宅を2棟移築した。耐震補強したものとしていないもので、短周期地震を起こすテストをすると、補強なしは10秒ほどで1階部分が見事につぶれてしまった。M7.3で最大震度6強の地震が起きたことを想定すると、火災が発生。木造家屋の被害で家屋倒壊12万棟、火災焼失65万棟と予想。木造家屋密集地帯ではいったん火の手があがるとそれを食い止めることはできない。火災が起きると、道幅が狭く入り組んでいるため消火活動が極めて困難だからだ。周囲で火災が発生すると、酸素が一気に使い果たされてしまう。すると無酸素状態になった中心部が周囲の空気を吸引し上昇気流が発生、炎どうしが合流して巨大な火柱となる火炎合流がおきる。本当の恐怖はそれだけでなく、炎に触れていない家までが燃えるのである。炎の温度は軽く1100度を超えているが、すさまじい輻射熱(ふくしゃねつ)が離れた家をも発火させるのだ。この火炎合流が発生すれば、木造家屋が密集する環状7号線周辺は一気に火の海と化す。それはまさに燃え盛る炎のリング。内側にいても外側にいても逃げ場はない。なぜならば炎のリングは風向き一つでその勢力を増し、東京23区ほぼ全域を焼き尽くす可能性があるからだ。2005年の中央防災会議の被害想定で首都直下型地震の想定死者数は11,000人。しかし、火炎合流など想定外の事態が起きたとき、犠牲者の数は桁違いに増えることは間違いない。