理想の家
ひと気があまりなく使われていない部屋が沢山あり、そんな部屋の扉の一つを開けると、象牙で出来たインドの象の置物や優雅な時代の名残の家具などが、いつのまにか忘れ去られ、使われていた時代そのままに時間を止めている。私が子供の頃から理想の家としているのは、そんな、バーネットの「秘密の花園」やロビンソンの「思い出のマーニー」に出てくる様な、陰気で古びた大きな屋敷である。私の育った家は築100年以上は経とうかという古色蒼然とした日本家屋だった。母屋と、別に離れが2つあり蔵が4つある。古いのは一緒だけれど子供にとっては怖いばかりで、ロマンチックさなどは微塵もない家であった。そんな家の畳の上で諸外国の物語を読みながら、自分とはまるで環境の違う、遠い異国の風景や生活を空想する。遠い英国のお屋敷。フランスのお城。いつかは実際に見てみたいものだ・・・、と田舎娘の夢は枯野ではなく、遠くヨーロッパの空を駆け巡ったものである。往時の記憶が尾を引いているのか、今だにロマンチックで廃墟めいた、枯れた感じのするモノが大好きである。ヨーロッパの古い庭園やお城、修道院などは本当に好きでたまらない。そんな私が一昨日手に入れた本。京都のとある洋書屋で、定価の半額かつ2割引というお安さだった。併し今までに見たどんなインテリアの本よりも私の好みに合致している。ま、どこがお城だ、秘密の花園だ、と言われればそれまでなのだが、私が幼年より抱いてきた好きなお家のイメージにまさにぴったりだったのだから仕方ない。あるのは過去の人々の気配だけで、生々しい生活は枯れてしまって存在しない空間。貝殻や珊瑚、鳥の剥製、古い肖像画など、生命は過去の記憶でしかない形骸化したオブジェが飾られる。 The New French Decor : Living with Timeless ObjectsLalande, Michele Trillard, Gilles (PHT) Nash, Liz (TRN)Harry N Abrams Inc (2007/12 出版) Hardcover:ハードカバー版ISBN: 9780810994591DDC分類: 747.0944Source: ENG秘密の花園(上)秘密の花園(下)思い出のマーニー(上)新版思い出のマーニー(下)新版