カテゴリ:読書
何年ぶりかで死神の千葉くんの登場。前作の「死神の精度」は6人の人生に関わる6編の短編集。この作品は私の中では伊坂幸太郎のベスト3に入る作品です。
死神の千葉くんは前作と全く同じキャラクターで、今回は一つの話で完結する長編です。短編には短編の。長編には長編の面白さがあり、じっくりとした展開の中に伏線が。。。しかしながら最後まで結末が読めず、唖然とさせられるのは、いつものように伊坂幸太郎の独壇場です。
ここからは<<ネタバレ>>です。 死神の千葉くんの仕事は、人間の世界へ調査員として派遣され、対象となる人物と接触して7日間の調査を行い、死ぬことを「可」とするか「見送り」とするかを報告するという役割。死神の調査員はいたる所にいて、人間が不慮の事故で死ぬのは全て死神の判断による。 他の死神が適当に「可」の判断をするのに対し、千葉くんは生真面目な性格で、対象者に思い入れをすることは全くないが、7日間付き添い可否を判断する。まあ。彼の場合も結果としては殆ど「可」となるのですが。 今回の対象者はサイコパスの本城という男に最愛の娘(小学生)を殺された小説家の山野辺。しかし、本城は裁判で証拠不十分のため無罪判決となる。 山野辺夫妻は周到に本城への復讐を計画する。しかし、冷静沈着で狡猾なサイコパスの本城は逆に彼らを陥れようと画策する。 この状況だけからは、どちらに転んでも救いのないドロドロした暗い話ですが、山野辺夫妻と行動を共にする死神の千葉くんのキャラクターのお陰でさほど暗くもならず、危機を脱しながら話は進みます。 死神は特異な身体能力を持ち、死ぬことも無いので千葉くんはもう何百年も調査員をやっている。その割には、人間の言葉や習性への理解は心もとないのです。 山野辺夫妻は、真顔で見てきたように参勤交代の話をする千葉くんに(実際見てきたことを話しているのだけれど)、呆れを通り越して失笑し、緊張感を和まされる。 そして、山野辺夫妻は何度も本城の手口にはまり、千葉くんに助けられる。ただし、千葉くん自身に助けようという意思があったわけではなく、たまたま死神の特異な能力が都合よく働いたということですが。。。 しかし、終盤で山道を車で逃走する本城を、ママチャリの後ろに山野辺を載せて、息も切らせず脚こぎで追いつき、さすがの悪人本城もあわてて崖から湖に転落してしまう。。。これまでの死神シリーズには無かった、千葉くんが派手に超能力を発揮した部分です。 一方、本城にも別な死神調査員が付いている。そして、この時期、死神本部からへんてこなキャンペーンが出ていた。20年保証の「可キャンペーン」。要するに、死ぬことを「可」とするも、20年の延命後に死ぬというもの。 実はこのキャンペーンが驚愕の意味を持つことになる。本城は怪我の痛みと窒息の苦しみを抱えたまま20年間、転落した湖底で身動きできないまま放置されることになる。 考えようによっては、本城は最悪の憎たらしいサイコパスではあるものの、何とも残酷な結末で。。。ちょっとやり過ぎか。という感じでした。 やはり前作の「死神の精度」が、短編ながら傑作で面白かったかな(^^) 上のボタンをクリックしていただけると嬉しい お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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