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ボーイズ・ビー・アンビシャス

☆「ボーイズ・ビー・アンビシャス」の「国際化時代を生きる学生のための『帰雁の蘆』」を作成する上で、「現代語表記」の基準が必要になってきた。そこで岩波文庫の「武士道」1974年9月の改版にあたっての「新字体、新かなづかいに表記を改め、副詞、接続詞など一部の漢字をかな書きにし、ルビをふやし、また外国の固有名詞の表記を現代の慣用に近づける」をベースに、原文をそこなわない範囲で表記を現代化した。

「副詞、接続詞など一部の漢字をかな書き」について、具体に整理し列挙してみよう。


あ ・・・・・・あたり、あなた、あまねく、あまり、ありません、いかなる、いま、えた、えない、おっしゃる、および
か ・・・・・・かつ、こと、この、このたびの、これである、これまでの、これらの、かくかく、
さ ・・・・・・さらに、されど、しかし、しかして、したい、したがって、しばしば、すべての、その、そのもの、それぞれの、それは、
た ・・・・・・たかだか、ただ、たち、たぶたび、ついて、つづく、できない、できる、どうして、というのは、ところ、
な ・・・・・・なお、なくんば、なし、ならびに
は ・・・・・・はさまって、ばかり、ひける、べき、べく、ほとんど
ま ・・・・・・まで、まごつかせた、みずから、むしろ、もし、もしくは、もたない、もち、もちろん、もって、もっと、もの、
や ・・・・・・ようやく、よって、よりて、よる、
ら ・・・・・・
わ ・・・・・・わかった、わたって、

漢字(ふりがな)
あ ・・・・・・或る、如何(いかん)、否や、打ち、閲読(えつどく)、負債(おいめ)
か ・・・・・・彼ら、配(くば)られた、切れ目
さ ・・・・・・書(しる)されたる、次第
た ・・・・・・対し、計企(たくらみ)、近づける、取りうる、終(つい)に、説き及んだ
な ・・・・・・
は ・・・・・・鼻腔(びこう)、編纂(へんさん)、略(はぶ)
ま ・・・・・・完(まった)き、全く、許(もと)、無為(むい)、
や ・・・・・・役立つ、やり方、
ら ・・・・・・
わ ・・・・・・



漢字かな書き
あ ・・・・・・有難い、お国
か ・・・・・・借りもの、繰り返し、この上なし
さ ・・・・・・それ自身、
た ・・・・・・
な ・・・・・・
は ・・・・・・何たるや
ま ・・・・・・見いだした
や ・・・・・・止むをえず、
ら ・・・・・・
わ ・・・・・・解らせる、煩(わずら)わす















札幌農学校の3兄弟と広井勇

第2信(英文 封書)           内村鑑三日記書簡集第5巻p5-7
  陸中盛岡 新渡戸様方にて 太田稲造愛兄    
         大至急 8月3日発す
              札幌農校 内村鑑三

1880年(明治30年)8月3日 札幌にて

 親愛なる兄弟パウロ〔新渡戸稲造〕
 盛岡からのお手紙昨夕着、われわれは一大衝撃を受けた。
ーそのためわれわれは食欲を失い、暗涙にくれた。
いつも陽気な連中が、誰も彼もだまりこんでしまった。
われわれは自分を君の境遇に置いてみた。
ーおお! 何たる悲しい、たえがたい試練か!
君が生まれ故郷を訪れた唯一の目的は、疑う余地もなく、お母さんに会うことだった。
しかも、ああ! ああ!
お母さんは君の到着以前にすでに逝かれたのである。
兄弟よ、僕にはどう君を慰めたらよいのかわからない。
「喜ぶ者とともに喜び、泣く者とともに泣きなさい」と使徒は言っている。
僕は君に対する自分の気もちや強い同情がどんなであったか、また今あるかについて語ることを避けるが、在札幌のクリスチャンの兄弟たちの悲嘆の状を伝えることとする。
エドウィン〔足立元太郎〕は昨夕から食事をとろうとしない。
一週間前から頭痛を訴えているフレデリック〔高木玉太郎〕も同様である。
フランシス〔宮部金吾〕は悲嘆の余りベッドの上に伸びている。
ヒュー〔藤田九十三郎〕は自分の年老いた両親が、君のなつかしいお母さんと同じ運命に陥ったらどうしたらよいのかと案じつつ、今まで熱心にやってきた測量の仕事に、今朝はとりかかろうとしないでいる。
チャールズ〔広井勇〕は、持ち前の男らしさから、自分の悲しみや同情の念を顔にこそ出さないが、静かに、物思いにふけりながら、君を想う忍び難い心持ちをハッキリと見せている。
兄弟よ、こうしたしらせは、君の悲しみを慰める役には立たないかも知れない。
しかしこれらはすべて、僕は心から証言するが、偽善から出たものでも、体裁をつくるものでもないのだから、われらの恵み深き父なる神が、われわれのハートの中に住まわせてくださったところの、真の友情と兄弟愛のしるしとして、受け取ってくれたまえ。

 兄弟よ、神の道は、われらの道と違う。
君はヨブの忍耐について、すなわち彼が引き続く苦難にいかにたえたかを知っているはずだ。
君はモーセとエリヤについて、彼らがしばしば自分たちの期待に反する事をたくさんになさしめられたが、最後に幸福と希望と繁栄との栄冠を授けられたことを覚えているはずだ。
われわれは選ばれた子孫、すなわち特殊の民で、神、すなわち広大さ、偉大さ、力強さをもって全宇宙の創造主にいましながら、同時に憐れみにとんで、孤児と苦しむ者との友にいます神に、永遠の希望を寄せる特権を授けられた者ではないか。
もし君のお母さんが君から福音を聞かされてから、それを信じることなく、永遠の眠りについたとしたら、お母さんは福音の光に照らされることに死んだよりもはるかに大きな、はるかにひどい刑罰にあわれなければならないのである。
今後のことは、神が定めておいて下さったところではあるまいか。

 おお!キリストにある愛する兄弟パウロよ、君の試みを
「イエス・キリストの現れるとき、賛美と栄光と誉れとに変」らせてくれたまえ。
君にとり大きな、しかり、確かに最大の試みではあるが、しかし
「火で精錬されても朽ちるほかない金よりもはるかに貴い信仰の試錬」である。

 兄弟よ、悲しみに負けないでくれたまえ。
悲しみは君の健康に大害があるし、君は健康を取り戻すために故郷を訪れたのだから。
君の亡きお母さんは、ご自身の身体以上に、君の健康を案じておられた。
勇気を出して、強い健康な人たるべく努めてくれたまえ。
そして君の祖国と、神と、大切な君の家名と、君自身とのために立派な有益な働きをして、君の亡きご両親を喜ばせるように努力してくれたまえ。
《身を立て 道を行い 父母の名を後世に挙げるは 孝の至りなり》
君のために祈ることを決して忘れない。
兄弟よ、愛する兄弟よ、僕は心から期待し、祈っている。
身体は健康に、信仰は生気にあふれ、希望はあふれ、恩恵にみちみちた君に再び会い得んことを。
 君の最も親しき兄弟にして友なる
                 ヨナタン・内村鑑三
 ご親戚の皆さんへくれぐれもよろしく

1880年(明治30年)7月28日 札幌にて      内村鑑三日記書簡集第5巻p3-5

第1信(英文 封書)  陸中盛岡 太田(新渡戸)稲造殿    
              札幌農校 内村鑑三

7月28日 札幌にて

 親愛なる兄弟パウロI・O
 函館からの手紙、一同心からうれし落手、君の旅行が陸路は快調に、海路もさして不快でなかった由に、一同大喜びである。
君の今後の旅も安全・快適ならんことを。
君の手紙が学校へついたときには、われわれ7人は(フレデリックを除き)定山渓へ行っていて留守だった。
一同、同地に4日を過ごした。
持参の重い荷物と、あらゆる種類のブヨの攻撃とに悩まされながらも、実に愉快な、大成功の遠足だった。
その間チャールズ(広井勇)は野望にかられて、豊平川の水源に向かって2度探検を試み、その結果、彼が久しく渇望していた貴重な砒石の岩層には達しなかったが、川岸で一個の大きな砒石塊を発見した。
それゆえ僕の(同時にわれわれの)最悪の敵は大食漢(藤田九三郎)だった。
彼は怠け者で、しかも他人のエネルギー(物理学の表現を借りていえば)の最大の、また恐ろしい消費者である。
君がわれわれの一行の一人でなかった事は感謝である。

 君は今、異教主義という暗い深淵にただ一人のクリスチャンの星として輝いていることと思う。
「厳冬に臨んで、初めて常盤の松を識別できる」と昔のシナ人は言っている。
われわれが、愛と平和と善意とが熱心に求められているクリスチャンの兄弟たちの間にいるときには、バラ、桜草、ツバキ、ゼラニウム、エニシダ、シクラメンなどがいっせいに同じ花壇に咲き乱れて、たえずわれわれの眼にさらされていても、残念ながらわれわれは、その美しさに見飽き、彼らに水そそいで、熱心に、努力して、誠意をもって、彼らの成長を助けることを怠るのである。
-それどころかー
手荒く、いなしばしば、手きびしく、扱うのである。
しかし可憐な桜草が、コホベ、ヨモギ、スゲ、イなどが圧倒的に優勢な、すさまじい雑草の群の間に、咲いているのを想像してくれたまえ。
当然われわれはその優しい美しさを賞でて、その成長を妨げる妨害物を取り除き、根元の土をやわらげ、支柱をたててその発育をうながすだろう。

兄弟パウロよ、僕は信じている。
(僕が昨年の夏体験したように)、君が札幌のクリスチャンの兄弟たちのことを思えば思うほど、君はいっそう彼らにとって親しいものとなり、かつわれわれもまた、君について、思えば思うほど、また君がわれわれといっしょにいたときに、君に対する愛と情においてわれわれが欠けていたことを思えば思うほど、いっそうわれわれは後悔の念にとらえられ、君に対する結び付きをいっそう強くされ、君のためにささげる祈りは、君もよろこんでくれると思うが、いっそう熱烈になるのである。

 われわれの間にこのような偽りなき愛を恵みたまえる神の聖名はほむべきかな。
われわれの心と心をつなぐ鎖は、「壊ちる黄金よりもはるかに貴く」、永遠に不滅でなければならない。
距離は遠く、君とわれわれとをへだてる海は広い。
しかしそのへだたりが増せば増すほど、われわれの結びつきと心持とはいっそう強くなる。
神の聖名はほむべきかな。

 われわれは目下、皆無事で健康状態もふつうである。
測量の方は僕の体が弱いため余り成功とはいえない。
それゆえ僕の財産がふえることについては余り心配しないでくれたまえ。
しかし藤田は非常に頑健なので、君が札幌に帰ってくるときには、大した金持ちになっているだろう。
植物学者[宮部金吾]は少々疲れている。化学者[高木玉太郎]は少々頭痛を訴え、工学者(野心家の)[広井勇]はとても金に困っている。豚学者(ピゴロジスト)は小説を読んでいる。体育館とカハウ[佐久間信恭]とは変わりない。

 次の機会まで、サヨウナラ
    君の古い兄弟にして友なる
              ヨナタン[内村鑑三]
 二伸 君のお母さんと、もしお父さんが目下盛岡におられたら、お父さんとに、くれぐれもよろしく。
われわれのために祈ることを忘れないように。
われわれも絶えず君のために祈っている。






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