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カテゴリ:尊徳先生の世界
・孔子は「国を治める者、敢えて鰥寡(かんか)を侮らず。しかるをいわんや士民においてをや。それ米粟を愛する者、庭上の散粒、なおこれを洗い、以て粉団と為す。いわんや苞米においてをや。」と言われた。
・尊徳、幼い文子が庭の鶏に白米をやって喜ぶのを静かにたしなめられた。 「汝は、どれほどの辛苦を経て白米となったを知るか。私は幼くして父をうしない、母と共にいた。水害のために田を失い、一粒一銭の工夫もなく、大変苦しんだ。もし、当時汝が鶏に与えるだけの米があれば、どうしてこれほどの苦痛をしようか。竹や木をきり、いばらを払て焼き捨て、起し返し、田畑として、耕し、植え、草をとり、稲を刈り、こき、ひき、臼でつく。白米になるまでの人力はどれほどか。一粒といえども太陽が照さなければ生じない、照しても、人民の努力して耕作しなければまた生じない。もしこれを思うならば、どうして一粒といえども空しく鶏に与えることができよう。鶏は日々庭園を回り、みみずや小虫を食える。どうして人の食糧を費やすに及ぼうか。」 尊徳先生はこのように幼い者でも𠮟りとばすことなく、切々と教えられたのである。 二宮先生語録巻の3 【187】孔子は言われた。 「国を治める者は、敢えて鰥寡(かんか:鰥とは61歳以上で妻のいない者、寡とは50歳以上で夫のいない者)を侮らない。しかるをいわんや士民においてをや」と。 米穀を愛する者は、庭の上に散らばった米粒ですら、これを洗って粉にひいて団子とする。いわんや俵の米はなおさらである。タキギを愛する者は折屑であってもしかも捨てない。細片ですらなお洗ってこれをたく。いわんや束になったタキギはなおさらである。かつ鰥寡孤独(孤は16歳以下で父のない者、独は61歳以上で子のない者)は再び本どおりに復することができない。よろしくこれを憐れみ助けるべきである。これを侮蔑することなく必ず先に憐れんで助ける。そうであれば国家を治めること、手のひらの上でめぐらすようであろう。 二宮先生語録巻の一 【22】人の食で米より貴いものはない。だから人は米粒が地上に散らばるを見ると数粒でも惜しむのじゃ。じゃが荒れた地を見て惜しむ人はいない。これはほかでもない。泰平の世に慣れてそのもとを忘れるからじゃ。荒れた田一町ごとに年に米十石を損する。十石は二千人の一日の食じゃ。どうして地上に米粒が散らばる比であろう。地上に散乱した米粒は鳥や雀がついばむ。荒田で失った米はあたかも米を川の流れに投げ入れたのと同じで、知らずに人の命を損なう。世の人は天照大神が原野を開いた苦労を顧みず、先祖が田から産出した苦労を思わず、いたずらに荒れるにまかしている。その過ちは大きい。人はよくその過ちを改め、私の開墾の仕法に頼り、一畝(せ)一歩(ぶ)でも開墾し、努力して功績を積めば、上は国恩に報い、中は身や家を養い、下は民の食物を豊かにする。勤めなくてはならない。 『報徳秘稿』二〇五に、尊徳の娘の文子が幼い頃、庭の鶏に白米をやって喜んでいるのを、自分の幼い頃の苦労話をされてたしなめられた話が載る。「なんじ、いくばくの辛苦を経て白米となりしを知るや。予幼にして父をうしない、母とともにいる。水害のために田を失い、一粒一銭の工夫なく、大いに艱苦せり。(略)もし、当時なんじが鶏に与えるだけの米あらましかば、何ぞかくのごとき苦痛をせん。それ、竹木をきり、いばらを払い、焼き捨て、起し返し、田畑となしてより、あるいは耕し、あるいは植え、あるいは草をきり、あるいは刈り、あるいはこき、あるいはひき、あるいは臼でつく。白米になるまでの人力いくばくぞ。また、一粒といえども太陽照したまわざれば生ぜず、照したまうといえども、人民の力耕なければまた生ぜず。もしこれを思わば、何ぞ一粒といえども空しく鶏に与えん。鶏は日々庭園を回り、みみずや小虫を食(は)む。何ぞ人食を費やすに及ばん。もし窮民を撫育し国家を興さんとならば、幾千金をなげうつとも我これをとめず。なんじ、それこれを思え。」 尊徳先生はこのように幼い我が子に対してさえも、白米の尊さとともに国家を興すことをも説諭されたのである。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2019年11月20日 03時38分44秒
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