2
どうやら夢の中のようだ。夢の中はいつもほわほわしている。そうやっていつも起きたときには何の夢を見ていたのか忘れる。それを夢の中でも理解している。おかしな話だ、と思う。これでは何を覚えていて何を忘れているのかわからない。もしかしたら現実もそうなのか?そう思うと、現実なんて何が本物で何が嘘かわからなくなる。現実。夢。本物。嘘。繰り返し繰り返される言葉。考えるのをやめようとしてもやめられない。言葉が渦巻く。必死に遮断する。こうゆう時にうまく操作できない。だから、夢は嫌いだ。光が目の前に差し込む。目を開けたのが先か、光が差し込むのが先かはわからないが、目の前が明るくなる。天井が見える。いつもの家の天井。!!渚はびっくりして起き上がる。「こんにちわ、目が覚めたのね。」女性の声が聞こえる。目を開けると、テーブル越しに女性が座っている。「え??ここは?」渚は状況把握ができていない。「ここは私の事務所。あなたは気を失っていたの。」女性はやさしげに言う。「気を?どうして・・・」と言ったところで渚はすべてを思い出す。さっき見た光景。倒れる人。飛び散る血。沢山の人。「そう、あなたはあれを見て気絶したの。」「でも、どうしてここに?」「あなたここの隣に住んでるでしょ?見たことあるから。」「は、はい」「だから、ここで休ませてあげたのよ」「あ、ありがとうございます」「しかし、迷惑な話よね。あんなところで殺さなくてもいいのに」「ええ・・・」渚は死体を思い出した。ちょっと気持ちが悪くなった。女性は落ち着いた表情で言う。「ごめんね、仕事柄ああゆうのには慣れてて。」渚は何の仕事だ?と単純に思う。「あなたは学生?」「はい。」「殺された子も学生らしいわよ。」「そうなんですか・・・」と言いつつ、渚は死体を思い出す。こうゆう時に脳は意外と制御できない。不便だ。そう思い、思考を遮断する。その瞬間、嫌な予感が頭をよぎる。「あの・・」渚は不安げに聞く。「何?」女性は相変わらずの調子だ。「殺された人の名前は?」「わからないわ、もしや、知りあいなの?」「いや、見覚えがあるな、と思って。」そのとき後ろからドアの開く音が聞こえる。「あの、目、覚めましたか?」入ってきた男が言う。「ええ、今さっき」女性が答える。知り合いのようだ。「では、少し話を聞かせてもらいましょうか」女性は男に席を譲り立ち上がる。それに反応して渚は言う「あの、あなたの名前は?」「私??私は紫門涼子。よろしく。」