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2016.06.13
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カテゴリ:シナリオ
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昔、布教と修行のため、托鉢をしながら全国を行脚している六人の僧がいました。ある山里の集落
にやって来たときのこと。村人たちが悲痛な表情で話し込んでいます。

村長 : みんなも見た通り、昨日、例の怪鳥がイノシシをわしづかみにして飛んでいった。ヤツの
     体は、ここへ来るたびにどんどん大きくなっている。次は子どもたちや子馬を襲うに違
     いない。お役人に助けを求めても、たた怯えるだけで一向に役に立たない。
     こうなったら、もう村を捨てて逃げるしかない。
村人A: あの鳴き声を聞くと身の毛がよだつ。家族も怯えておるし、馬たちも食欲が落ち、痩せ始
     めた。一日も早く、ここを出るべきだ。
村人B: 同感だ。昼間でも戸を閉めて震えている有様で、農作業もできん。このままでは餓死して
     しまう。早くこの村から逃げたいが、一体どこへ行けばいいのやら。

村人たちは怪鳥に怯えて、村を出る算段をしているようです。六人の僧は声をかけました。

一の僧: 我々は修行僧です。失礼ながら、先程より皆さんの会話を聞いておりました。差し出がま
     しいようですが、いきさつを詳しく教えていただけませんか?
村長 : オォ、お坊さまたち、お聞きでしたか。いつの頃からか、恐ろしい怪鳥がやって来るよう
     になりました。初めの内はニワトリやウサギなどをさらっておったのですが、最近は体
     が急に大きくなり、昨日は、たまたま村に迷い込んで来たイノシシをわしづかみにして
     飛び去りました。次に来る時は、もっと大きな体になっていると思います。
     いずれは、村の子どもたちや子馬が餌食になるのではないかと心配になり、村を出るし
     かないと話していたところです。皆、怪鳥に怯えきっているのです。
二の僧: イノシシを掴んで飛ぶほど大きくて、力の強い鳥なのですね。
村長 : ええ、とても大きくて羽根にも鋭い爪が付いているのです。あんな鳥は見たことがありま
     せん。まさに怪鳥です。次に現れる時は、間違いなく子どもたちや子馬を掴むほどの大
     きさになっていると思うと、ただただ恐ろしいのです。
三の僧: で、その怪鳥が現れるのは、いつごろなのですか?
村長 : う~ん、そういえば、夕暮れ近くで、まだ空に明るさが少しだけ残っている時分に現れま
     すね。でも、お役人も逃げ帰るほどですから、お坊様たちにはとても無理だと思います
     よ。一緒に逃げましょう。


六人の僧は車座になって相談を始めました。しばらくすると、僧たちは村長を呼び、怪鳥退治の方
法について話し始めました。

四の僧: まずは奪ったものをどこへ運ぶのかを突き止めます。大急ぎでイノシシを生きたまま捕ま
     えてきてください。今度、怪鳥が現れたら、そのイノシシの胴体に長くて丈夫な縄の端
     をしっかりと結び付けておくのです。
五の僧: 縄の片方の端は私の体に結び付けます。私が必ず怪鳥の住処を突き止めますよ。
村長 : お坊様を危険な目にあわせるのは本当に心苦しいのですが、ここは皆様に頼るしかありま
     せん。これからすぐに村人全員でイノシシ狩りに行ってきます。村の存続がかかってい
     るのですから、必ず大きいやつを捕まえて来ます。
六の僧:怪鳥がどこに住んでいるのかが分かれば、退治する方法も見つかることでしょう。

数日が経ちましたが、怪鳥はやって来ません。この間に、村人が大イノシシを捕まえてきました。
大イノシシは胴体に縄をしっかりと巻きつけられ、広場の杭に繋がれています。毎日、夕暮れが近
づくたびに、五の僧は反対側の縄をしっかりと体に巻きつけ、山積みにした枯れ草の中に身を隠し
ました。そして、ある日の夕刻のことです。裏山から、背筋が凍りそうな奇妙な鳴き声と共に、巨
大な鳥がバッサバッサと大きな羽音をさせながら飛んできたかと思うと、広場の中央に繋がれてい
る大イノシシを鋭く長い爪で、わしづかみにして飛び立ちました。続いて縄につながれた五の僧も
大イノシシと共に空中に舞い上がります。残った五人の僧はすぐに駆け足で追いかけました。

一の僧: 村人の言う通り、見たこともないほど巨大で奇妙な鳥だったな。この辺りで見失ってしま
     ったが、五の僧は大丈夫だろうか?
二の僧: ここは岩山だ。あれだけの巨大な鳥が巣を作れる場所ではないと思うが、なぜ、こんな場
     所でこつ然と姿が消えてしまったのだろう?
三の僧: アッ!笛の音が聞こえる。あれは五の僧の笛の音だ。あそこだ!五の僧が岩の上に立って
     いる。みんな、急げ!
四の僧: 五の僧、無事で何より。怪鳥はどこだ?
六の僧: 岩穴の前に縄が外れて落ちているが、イノシシはどうした?
五の僧: ここに着いて直ぐに、私は結わえておった縄を外して岩陰から様子を見ていた。すると、
     あの怪鳥は地響きがするほどの大きな鳴き声を発した直後、イノシシと共に急激に体が
     縮み、この大岩の隙間にできた穴に入っていったのだ。私の体が入る程度の大きさだか
     ら、穴の奥を調べて見ようと思ったが、うかつに入るのは危険なので、皆が来るのを待
     っておった。
一の僧: う~ん、そうか。これで謎は解けたぞ。この穴には入らない方がいい。それよりもこの岩
     穴から出入りできないように、しっかりふさぐことが大切だ。

どうやら、イノシシも小さくなったために縄から体が抜け出てしまったようです。これまでの経験
から、あの怪鳥は異界の生き物で、この岩穴が異界との通路なのだと僧たちには解りました。

二の僧: 夕暮れにしか現れないのは、いかにも異界の生き物らしい習性だ。
三の僧: しかし、岩穴をふさぐだけで、あの怪鳥は本当に出て来ることができなくなるのだろう
     か?かなり力が強そうだぞ。
五の僧: 大丈夫だ。穴に入っていった怪鳥は小さい体になっているので、力も体格に合わせ弱くな
     っていると思う。穴から出て大きな声で鳴かない限り、体も大きくなりはしないし、力
     も強くならないはずだ。
四の僧: だが、万が一を考えて、怪鳥がどう頑張っても穴から出てこられないように幾重にも大き
     な石を置き、念入りに出入り口をふさぐべきだ、我々だけでは無理だぞ。
五の僧: ならば、村人の助けを借りようではないか。
六の僧: 村人に異界のことを理解してもらうのは難しいだろうが、安心して今の場所に住むために
     この作業が必要だと説明すれば、一緒に石を運んでくれるはずだ。

村人は六人の僧と共に、力を合わせて岩穴をしっかりとふさぎました。六人の僧が村を離れた後、
村の危機を救ってくれた僧たちへの感謝の気持ちを子々孫々に伝えるために、村人はふさいだ岩穴
の前に六体の地蔵を建立しました。誰ともなく「穴ふさぎ地蔵」と呼んだそうです。





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最終更新日  2016.06.13 07:57:36
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