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2017.07.17
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カテゴリ:シナリオ




 時刻表のないバス停にはバスがいつ来るのか誰も分かりません。そんなバス停に2人
の男が集まってきました。

男A: 今日も急な呼び出しだ。畑仕事の道具を放りっぱなしだよ。でも仕方ないね。

男B: 私も豆腐づくりの最中だったからな。後を女房に任せたけど大丈夫かな。
   おっ、今日の乗客が建物から出て来たようだ。誰なのか聞いているかい?

男A: 町長さんだと聞いている。会議中に倒れたらしい。町のために頑張っていた人
   だったのにお気の毒な事だったね。それに、今日は二番目のバス停にも停まる
   んだ。ヒロくんという難病で苦しんでいた子供が乗って来ると聞いている。

男B:今日は2つのバス停に留まるのか。珍しいな。バスが来たぞ。
   おっ、今日はボンネットバスじゃないか。

男A: ヒロくんの希望だろうね。ボンネットバスが大好きな子でなかなか詳しいそう
   だよ。夢はボンネットバスの運転手さんになることだって。

男B;何だ!あの車体の絵はムーミンたちのキャラクターが一面に描かれている。
   このバスには似つかわしくない絵だと思うけどな。

男A: たぶん、ヒロくんがこれまで頑張って来たので、そのご褒美のつもりなんだろ
   うね。

そこへこの町の町長だという男性が近づいて来ました。

町長:そこのお二人さん、お話の途中ですがよろしいでしょうか。私はここでバスに
   乗るように言われて来たのですが、こちらに向かって来るあのバスで良いので
   しょうか?

男B:お待ちしていました。町長さんですね。私たちはあのバスの中であなたのお世話
   をする世話人です。どうぞよろしく。

ムーミン谷のキャラクターが描かれたボンネットバスが、時刻表のないバス停に止まり、
静かにドアが開きました。

男A : 町長さん、ご一緒に乗り込みましょう。どうぞ。
    運転手さんご苦労さま。このバスでムーミン谷のデザインは珍しいですね。

運転手: 次のバス停で乗ってくるヒロくんと言うお子さんは、ムーミンが大好きと聞
     きましたので喜んでもらえるかなと思いましてね。町長さんにはこんなバス
     で申し訳ないのですが・・・。

町長 : 私はバスのデザインにはこだわりませんから大丈夫ですよ。でも訳がわから
     ないまま、このバスに乗るように言われて、こうしてバスに乗り込んだの
     ですがどこへ行くのですか?

男B : このバスは町長さんのご先祖様が眠る菩提寺のあるバス停まで行きます。

町長 :このバスは我が家の墓がある寺へ行くということですか? 初めてなのでよく
    わかりませんが、よろしくお願いします。見たとおり、手荷物は何もありま
    せんので、何のお礼もできませんがお許し下さい。

男A : このバスは先ほど私たちと一緒に乗り込んだ火葬場を出発して、町長さんが
    永眠される菩提寺へ向かう霊柩バスなのです。このバスの乗客は全員が初め
    てで、そして最後の乗り物になります。ですから私たちにお心遣いなどのお
    気遣いは無用です。菩提寺のバス停にはご親族さんとご先祖様が一緒に迎え
    に来ていますので安心してください。

運転手: 皆さん、まもなく二番目のバス停に留まります。こんなことは珍しいです。
     町長さんとヒロくんが乗ってくる時間帯がうまく合って、菩提寺のバス停
     が同じだったからなんですけどね。

二番目の時刻表のないバス停に着きました。そこには、二人の女性に手をつながれた
子供が待っていました。子供はバスが止まるとバスに描かれたムーミンの絵を手でな
ぞり、大はしゃぎをしながらバスをぐるりと一周しました。そして、バス停まで連れ
添ってくれた白衣の女性たちに手を振ってバスに乗り込んできました。

男A: お待ちどうさま、ヒロくんだね。何回も大きな手術を受けて頑張ってきたね。
   でも、もうあの苦しい手術はないから安心してね。私たちは君のお墓まで送る
   世話人ですよ。よろしくね。

男B: ヒロくん、このボンネットバスは気に入ってくれたようだね。

ヒロ: うん、僕はバスに詳しいんだ。特にボンネットバスとムーミンのお話が大好き
    なんだ。何だかこのバスに乗ったらムーミンのいる絵本の国に行くみたいだな。

男B: そう思ってくれると嬉しいね。しばらくムーミン谷のお話をしながら行こうね。

町長: 今日の乗客は私とこの子の二人だけですか?

男A: そうです。このバスは特別な大災害や大事故でもない限り、混み合うことはあり
   ません。どうかゆっくり座っていてください。

ヒロ: ねえ~、僕はどこでこのバスを降りるの?

男B: ヒロくんも町長さんと同じバス停で降ります。ヒロくんも町長さんも同じ菩提寺
   だからです。お二人のお墓はとても綺麗で、お花がいっぱい飾られていると思い
   ますよ。

男A: でも、今日はお二人の葬儀が重なってしまったので、ちょっとお墓の周りはお線
    香臭くて煙いかもしれませんね。少し我慢が必要かもしれません。

運転手:それでは終点の墓所のある菩提寺に向かって出発します。発車オーライ!

「時刻表のないバス停」とは火葬場発、お墓行きの霊柩バスの停留所のことなのです。





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最終更新日  2017.07.17 07:49:46
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