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カテゴリ:シナリオ
この乾燥きくらげの国内需要は右肩上がりで続いています。飲食店での消費が多いため、目立ちませんが国内消費量は「なめこ」と肩を並べる市場規模なのです。こうした背景には、あらげきくらげを生産する新規参入が増え、ここ10年間で約8倍にも生産量が増えて、今では国内産が市場の5%を超えるシェアにまで伸びていることがあります。それでもまだまだ生産者は少ないのですが、成果として、国内産の乾燥きくらげ、そして、これまで手に入らなかった生きくらげが産地のスーパーでは店頭に並ぶようになりました。これは国内での菌床栽培が確立されて流通するようになったからですね。 天然のあらげきくらげの旬は6月〜9月で、春から初秋にかけて広葉樹の朽ち木や倒木などに発生します。キノコなのに夏季に収穫できるのが特徴です。残念ながら天然物のあらげきくらげが店頭に並ぶことはないです。今回は茨城県鹿嶋産のあらげきくらげの紹介です。
<きくらげの仲間たち> (1)キクラゲ科キクラゲ属:「きくらげ」「あらげきくらげ」 「きくらげ」は表が黒褐色、裏は淡褐色で細い毛が多い。乾燥させると黒 変 して縮小してしまうので乾燥に向かず市場には出ないようです。 「あらげきくらげ」はやや大きく肉厚で、裏の毛が多く、肉質がきくらげと比 べて固いのが特徴。ちなみに、突然変異の白く花びら状になっている「白 いきくらげ」も存在します。 (2)シロキクラゲ科シロキクラゲ属:「しろきくらげ」「はなびらにかわたけ」 「しろきくらげ」は昔から不老長寿の妙薬、精力剤などとして珍重されてい ます。 「はなびらにかわたけ」は茶褐色で花びら状に成長する食べられるきのこ です。
学術的にキクラゲ科のキノコに毒性はありません。ですから、私たちが食用としている「アラゲキクラゲ」、「シロキクラゲ」、「ハナビラニカワタケ」の3種類の全てに毒性はありません。しかし、注意が必要なのは、きくらげと全く別の分類であるにも関わらず、見た目がそっくりなクロハナビラタケというキノコです。このキノコは毒キノコのなかでも危険性が高いとされています。
<あらげきくらげの生産量ランキング>(2020年) 市場に流通しているのはほぼすべてが菌床栽培物です。そして、市場には乾燥きくらげと生きくらげの形態で出回っています。尚、原木栽培に挑戦している農家もいますが規模は大きくありません。 (生きくらげ) 1位岐阜県356.4t(28.9%)、2位熊本県158.6t(12.9%)、3位が茨城県124.2t (10.1%)上位3県で50%以上を出荷しています。 (乾燥きくらげ)・・・まだ輸入に頼っていますから、国内の生産量は少ないで す。1位北海道15.2t(14.5%)、2位鳥取県13.2t(12.5%)、 3位鹿児島県8.0t (7.6%)
乾燥キクラゲは、その重さを10倍にすることで、生のキクラゲの相当量に換算されます。生産量が少ない理由は価格です。中国産は1/3の価格で供給されています。国産は生きくらげの生産に活路を求めています。 <あらげきくらげの豆知識> 1. 生きくらげ:色が濃くて厚みがあり、表面にしっとりとした艶のあるものが良 品です。形は元々、平たい円盤状、耳状、花びら状といろいろあって不揃い なのであまり気にしなくても大丈夫。表面に白い粉のようなものが付着して いることがあるが、これはカビではなくきくらげの胞子。水洗いすれば落 ち、食べても問題はありません。 2.乾燥きくらげ:国内生産量約60tに対し輸入量は2350t(うち99%以上が中国 産)。国産の乾燥きくらげを見つけるのは難しく、通信販売で探すのがいい かもしれない。高級品は茶褐色〜黒褐色で大きさが揃ったものが多いが、見 た目を気にしないなら不揃いで安価なものもあります。 3.乾燥きくらげと生きくらげの違い ①「乾燥きくらげ」は、収穫したきくらげを天日干しなどして乾燥し、長期保存できるようにしたもの。そのままでは食べられないので、一度水につけて、水戻ししてから調理します。水戻しする前は日持ちするので、長く楽しみたい方にオススメ。 ②「生きくらげ」は、収穫してから一度も乾燥していないきくらげのこと。乾燥させていないぶん長期保存には向かないので、国産きくらげが流通している今だからこそ食べられるきのこです。食べたときには適度な弾力と、ぷりぷりとした食感が特徴で、コリコリとした歯ごたえは乾燥きくらげに比べてやや控えめです。 4.きくらげの栄養素:きくらげは現代人には不足しがちと言われている「食物繊 維」が豊富なきのこ。特に不溶性食物繊維が豊富なので、腸の調子を整え て、便秘やお通じの改善が見込めます。また、コリコリとした歯ごたえの ある食感なので、しっかり噛んで食べることで、食べ過ぎの予防にも効果 的です。特に注目したい栄養が、乾燥キクラゲに多く含まれる「ビタミン D」。これはカルシウムの吸収を促す栄養で、丈夫な骨や歯を作り、骨粗 しょう症の予防効果が期待できます。また、鉄分等の各種ミネラルも豊富 に含んでいます。 5.生きくらげの食べ方:最近は、百貨店の青果売り場や直売所などで、生きくら してから食べてください。熱湯で30秒ほど湯通しすると食べられます。生 のきくらげの食感乾燥とは違った特徴があります。寒天質がプルプルの歯 触りで、コリコリとした独特の食感を楽しめます。ナムルや酢の物も良い ですが、生姜醤油をつけたお刺身風がおすすめです。せっかくなので生な らではの特徴的な食感を楽しみましょう。 6. 乾燥きくらげのおいしい戻し方:乾燥きくらげは水で戻すのが最適で、戻すと 7倍ほどの量になります。お湯(30℃)を使えば短時間で戻すことができま すが、この方法ではせっかくの栄養やうま味が溶け出してしまいます。乾 燥きくらげがかぶるくらいの水を加えて浸しておくと、20分ほどで戻りま す。水に長時間浸していると柔らかくなりすぎて、コリコリとした特徴的 な食感が失われてしまいますよ。 7.国産きくらげと中国産きくらげの違い (1)食感が違う:国産は肉厚です。そのため、食感が良く、ぷりぷり、コリコリの歯ごたえを強く感じられます。噛み応えがあり、存在感があるのが特徴です。 (2)香りと味が違う:味や香りにも違いがあります。中国産は無味無臭で食感を楽しむのがメインです。国産はしっかりきのこの風味と香りを感じられます。 (3)無農薬栽培なので安心安全:2015年の調査で基準値を超えた農薬が検出されました。純国産きくらげは完全無農薬栽培なので、安心で安全です。 (4)海外産きくらげは安く、国産きくらげは高い: 中国産:100g入り 390円、国産100入り 900円。国産きくらげの販売価格は海外産のきくらげの約3~4倍です。 8.乾燥あらげきくらげの戻し液の着色原因 乾燥あらげきくらげを水戻しすると戻し液が薄い赤褐色に着色しますが、その原因としては、あらげきくらげの構造上の特徴である「メデュラ層」が関係しており、乾燥することで同層が破壊され、内部の赤褐色の色素が液中に染み出してくるものと思われます。内部の色素が染み出してきたものですので、調理上特に問題となることはありませんが、シイタケの戻し汁と異なり特に旨味成分等を含んでいる訳ではありませんので、通常は調理に使用することはありません 9.保存方法 ①生きくらげの場合:水気をふきとり冷蔵庫の野菜室に入れ、乾燥を防ぐために保存袋やラップ等で包みます。保存状態にもよりますが、賞味期限としては1週間ほどが目安。さわったときにドロッとしているものや、腐敗臭がするものは食べないようにしましょう。すぐには使わないときには、石づきを落としてから食べやすい大きさに切り、冷凍庫で保存すると日持ちします。 ②乾燥きくらげの場合:水戻しする前は約1年ほど常温で保存することができ ます。戻してしまった後のキクラゲは早めに食べきるか、食べやすい大 きさにカットして、冷凍するようにしましょう。 10.「シロキクラゲ」と「白いキクラゲ」がある 白色のきくらげには2種類あります。ひとつは、「シロキクラゲ」といわれ るキノコ。もうひとつは、あらげきくらげの突然変異体でこれを「白いキ クラゲ」とよびます。 11.栄養を効率的に取り入れたいなら「きくらげパウダー」もおすすめ 近年では、乾燥きくらげを粉末状に加工した「きくらげパウダー」が、イ ンターネットを中心に販売されるようになりました。スープや炒め物に混 ぜたり、ご飯に加えて炊き込んだりという手軽さできくらげの栄養を取り 入れることができ、乾燥きくらげのように事前に水戻しをする手間も不 要。粉末状なので日持ちしやすく、薄力粉などと混ぜてスイーツにすると いった調理方法も!きくらげのコリコリとした食感を楽しみたいという方 にはやや物足りないかもしれませんが、より様々な料理に使用でき、ササ ッと振り入れるだけの手軽さが人気を集めています。きくらげが気になっ ているが調理に時間をかけたくない……と言う方は、きくらげパウダーを 試してみてはいかがでしょうか。
<増えるか!原木栽培のあらげきくらげ> あらげきくらげはおがくずなどを固めたブロックから生やす菌床栽培が主流ですが、原木きくらげに挑戦している農家さんがいます。日本には数件しかいないそうです。シイタケでの原木栽培のメリットは、一度、種駒を打ち込めば数年間収穫できる事です。逆に原木栽培共通のデメリットは収穫までに時間がかかる事です。原木きくらげの場合は、発生が接種年内の7月下旬頃から始まり、翌年からは、春から秋までの長期に渡って降雨ごとに発生しますから、収穫適期を逃がさないことが必要です。5~8cmの大きさに生長した時点で収穫しますが、高温時は害虫等の被害を受け易くなることから、早めの収穫を心掛けます。あらげきくらげは木口の周辺を主体に短期間で発生しますが、期間は榾木の太さに関係なく、1~2年とシイタケに比べると極めて短いため、現状では商業(販売)用としては不向きなのだそうです。でも、原木による自然栽培では、きのこがシーズンオフの夏に発生することから、時期外れの自然の恵みを楽しむことができるのだそうですよ。商用栽培に成功するとよいですね。
<茨城県の菌床栽培> 鹿嶋市が最大の産地ですが、近隣の土浦市・つくば市など県南地域でも栽培されています。 1.菌床づくり ①菌種えらび:きくらげの菌種を選び、販売先から仕入れます。 ②材料の配合(培地製造):おが粉、ふすま、ぬか、石灰(カルシウム含有)などをミキサーで混ぜ合わせ培地を作ります。 ③袋詰め(充填):混ぜ合わせて作った培地を専用の機械を用いて、栽培袋に詰めます。 ④殺菌:高圧殺菌窯に袋詰めが完了した菌床を入れ、不要な細菌を除去します。殺菌完了まで5時間程度。長時間かけて殺菌をし、きくらげ菌にとって最適な菌床にしていきます。殺菌が完了したら、朝方まで冷やして15℃〜20℃になったら接種を開始します。きのこの菌床づくりの前日は納豆を食べてはだめ!きのこ栽培において被害をもたらす害菌の一つに納豆菌が含まれており、さらには熱に強いので、培地の殺菌が不十分だと生き残ってしまうのだそうです。 ⑤接種:殺菌した菌床に雑菌が混ざらないよう、接種専用のクリーンルームできくらげの菌種を培地に植えます。専用の服に着替えて、接種が完了したものを培養していきます。 ⑥培養:きくらげの菌種を植えたら、湿度・温度管理を徹底した培養室に移動し、菌床の中にきくらげ菌がしっかりまわるまで培養をします。培養にかかる期間は約2ヶ月。少しずつ菌が回っていくと黒い菌床がじわじわと白くなって いくので、全体が白くなるまで施設で管理をします。培養が終わったら、栽培用のハウスに移動してきくらげの栽培と育成をします。 2.育成環境づくり きくらげの安定した育成には、以下3つを常に数値管理をしていかないといけ ません。「温度」「湿度」「二酸化炭素濃度」 特に重要なのは、湿度です。 湿度は1年中80%を維持することが、肉厚のプリプリきくらげを作る最大のポ 3.発生 培養完了後、袋に切れ目を入れるなどの発生作業を加えること、そして、きくらげハウスの環境づくりを徹底することで、きくらげが発生します。 4.収穫 収穫に適した時期を迎えたら(またはきくらげの表面が波を打ったら)きくらげを収穫します。あらげきくらげの場合は、3回程度にわたり収穫が可能です。 5.加工・出荷 収穫したきくらげを人または機械で選別をし、乾燥きくらげにする場合は天日干しなどの作業を行なった後、大きさや色など取引先に合わせた規格で包装をして出荷します。
今、国産で急成長しているのが、乾燥にはないプリプリの食感が楽しめる「生きくらげ」です。乾燥と異なり、水戻し不要で手軽に料理に取り入れることができるのも魅力です。皆さんもぜひ料理に取り入れてみて下さいね。
その時は茨城県産のあらげきくらげを是非ご賞味あれ!
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最終更新日
2023.09.11 07:58:54
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