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カテゴリ:シナリオ
近年の茨城県食用キノコ生産量の伸びは著しく、林野庁の「令和3年 特用林産物生産統計調査」によると、2021年の茨城県のきのこ類の生産量は長野県そして、新潟県に次いで3位になっています。茨城県は特になめこの生産量が多く、全国の約半分を占めています。また、ひらたけやエリンギ、そして、ブナシメジも上位にランキングされています。令和元年の統計によると、茨城県のブナシメジの収穫量は約2,300トンで、全国の約3割を占めています。茨城県はきのこ栽培に適した気候や土壌を持ち、中小の生産者が多く活躍しています。 茨城県でブナシメジが盛んに栽培されるようになったのは、昭和40年代後半からです。 それまでは、茨城県のきのこ栽培は主にシイタケが中心でしたが、シイタケの価格低迷や病害虫の発生などの問題に直面しました。そこで、茨城県農業総合センター園芸研究所が、シイタケと同じ原木栽培ができるブナシメジの研究を始めました。その結果、茨城県の気候や土壌に適したブナシメジの品種や栽培方法が開発され、昭和50年代には県内の多くの農家がブナシメジの栽培に取り組むようになりました。茨城県のブナシメジは、歯ごたえが良く、風味が豊かで、栄養価も高いとして、消費者に人気があります。ブナシメジは、炒め物や煮物、スープなどの料理に幅広く使われますが、茨城県では、ブナシメジの天ぷらや唐揚げ、酢の物などの郷土料理もあります。 また、ブナシメジは、乾燥させて保存することもできます。 乾燥ブナシメジは、水で戻すとふっくらとした食感になり、風味も増します。今回は茨城県産のブナシメジの紹介です。
<国内の食用キノコ生産事情> 令和4年の食用キノコ類の生産量は46万1,659トンで、前年に比べ0.1%減少しました。品目別では、1位がえのきで12万6,321tで最も多く、2位が肉薄してブナシメジの12万3,134t、3位は生しいたけで6万9,504t、4位はまいたけで5万7,299tです。えのき、ブナシメジ、まいたけ、エリンギなど上位品目は全て菌床栽培での生産で、大手企業の工場で量産されています。一方、しいたけ、なめこは中小の生産者が多く、生しいたけは主要産地が全国に散らばっています。そして、乾しいたけの生産量は2,032tで、九州地方が生産の中心です。
<国内でキノコ栽培が盛んな県はどこか> 1位が長野県158,950t(34.4%)、2位は新潟県99,718t(21.6%)、で断トツです。長野県にはホクト株式会社、新潟県には株式会社雪国まいたけがあり、両県の生産量が多い理由になっています。品目別で見ると、えのき、ブナシメジ、エリンギ、なめこは長野県と新潟県が1位、2位を占めており、ひらたけ、まいたけは新潟県が1位となっています。 乾しいたけは大分県、宮崎県、熊本県の九州地方が主な産地です。 生しいたけは徳島県、北海道、岩手県、群馬県、秋田県、新潟県が生産量の上位に位置しています。きのこ類は、菌床栽培の技術が確立されており、通年で生産できる点や生産のための作業負荷が大きくないこと、小規模でも出来ることから全国で栽培されています。
<ブナシメジとは> ブナシメジとは、シメジ科シロタモギタケ属のキノコの一種です。ブナやトチノキなどの広葉樹の朽木や倒木に自生し、秋に収穫されます。傘の表面には白から赤みがかった灰色の大理石模様があります。ブナシメジは原木栽培、菌床栽培が共に可能です。栽培したものに比べて大型になる野生のブナシメジは、9月~11月に旬を迎えます。ブナシメジは栄養価が高く、ビタミンB群やビタミンD、食物繊維、必須アミノ酸などを豊富に含んでいます。風味が良く、歯ごたえがあるので、炒め物や汁物、ご飯などに使われます。ブナシメジは、日本の食文化に欠かせないきのこの一つです。
<シメジの品種について> シメジの種類は、分類学的には定義が曖昧なので、食用品種で紹介します。 1. ブナシメジ:一般にシメジと言えばこのブナシメジで、一年中店頭で見られます。特徴は味にくせがなく、和洋中とさまざまな料理に使いやすいこと。人工栽培へ移行したことで改良され、味がよく食べやすいきのこになっています。 2. 本シメジ:人工栽培が難しく収穫量が少ない高級きのこ、本しめじ。「香り松茸、味しめじ」という言葉にあるしめじとは、この本シメジを指します。丸っこいかわいらしいフォルムと濃厚な旨みがトレードマークのきのこで、流通量が少ないため店頭に並ぶものはわずかです。この本シメジも菌床栽培に成功したようです。 3. はたけしめじ:カサが平たいため一見するとしめじの仲間とはわかりにくい。カサの色は薄灰色~褐色で、大きさは3~5cm、畑の周辺に生えていることが多い。味にクセがないため和・洋・中さまざまな料理で使われる。弾力性が魅力で、ホイル焼きやきのこごはんが特におすすめだ。 4. 白ブナシメジ:ブナシメジの改良品種で、名前の通りに白いシメジです。特徴はぷるんぷるんとした歯ごたえとツルンとした喉ごし。ブナシメジと比較すると苦みは少なく、ほんのりとした甘みがある。これも一年中店頭に並んでいます。
<ブナシメジ栽培の概況> ブナシメジの生産量は、令和4年の特用林産物生産統計調査によると、全国で約12万3,134トンでした。そのうち、原木栽培の生産量は約125トンで、菌床栽培の生産量は約12万3,009トンでした。つまり、ブナシメジの生産量のほとんどは菌床栽培によるもので、原木栽培はわずか0.1%程度しか占めていませんでした。原木栽培と菌床栽培の生産量の差は、栽培の難易度や効率性に関係しています。原木栽培は、ほだ木の調達や管理が大変で、収穫までに1年以上かかることが多いです。また、気温や降水量などの気象条件に左右されやすく、収量や品質が安定しにくいです。一方、菌床栽培は、培地の製造や殺菌などの工程が必要ですが、収穫までに約4ヶ月程度で済みます。また、室内で環境をコントロールできるため、収量や品質が安定しやすいです。このためブナシメジの栽培は菌床栽培が主流なのです。しかし、原木栽培は自然の風味や歯ごたえが良く、高級品として評価されていますし、原木栽培は森林の保全や活用にも貢献することが期待されます。
<ブナシメジの人工栽培は長野県が発祥の地> 昭和45年に現タカラバイオが人工栽培に成功し、昭和48年に飯田市の旧上郷村の農業協同組合と独占契約を締結して栽培が本格的に開始されたとあります。当時は、形状や食味が菌根菌のホンシメジに似ていることから、「ホンシメジ」という商品名で販売されていました。しかし、本来のホンシメジとは別のものであることから、1991年に林野庁はそのような慣行を改めるよう通達しました。それ以降は、「ブナシメジ」という名称を使用するようになりました。現在も長野県はブナシメジの生産量で全国1位を誇っています。 <ブナシメジの豆知識> 1. ブナシメジの栄養素と効能効果 ① ビタミンC:抗酸化作用やコラーゲンの合成に必要な栄養素で、風邪の予防や ② ビタミンD:カルシウムの吸収を促進する栄養素で、骨や歯の健康に重要で ③ ビタミンB群:エネルギーの代謝や神経系の機能に関わる栄養素で、疲労回復 ④ 鉄分:血液中のヘモグロビンの生成に必要な栄養素で、貧血の予防や免疫力 ⑤ カリウム:体内の水分や電解質のバランスを調整する栄養素で、高血圧やむ ⑥ 食物繊維:腸内環境を整える栄養素で、便秘の解消やコレステロールの低下 ⑦ アミノ酸:タンパク質の構成要素で、筋肉や骨、皮膚などの組織の生成に必 ⑧ チロシナーゼ阻害物質:メラニン色素の生成を抑制する物質で、美白効果が ⑨ オルニチン:しじみに豊富に含まれることで有名なオルニチン。肌のターン ブナシメジは低カロリーで栄養価が高いので、ダイエットや健康維持にもおすす 2.調理に関して (1)選び方:傘に弾力があり、傘と柄がしっかりしているものを選びます。 鮮度が低下してくると、傘の一部がしなび、きのこ全体がやわらかくなります。 傘の大きさの大小で味に大きな差はありません。また、傘色の濃淡は栽培環境の違いに由来するものですので、味に大きな差はありません。 (2)ブナシメジの汚れは洗っちゃダメ!:きのこは水にとても弱く、洗うと風味や味が落ちてしまいます。水に濡れると劣化も急激に進んでしまいます。軸の汚れが気になるときは、包丁でサッと削ぎ落としたり、ペーパーで拭き取るようにすれば風味を落とすことなく綺麗に処理できます。 (3)ブナシメジの切り方:食べやすい大きさに育てられるブナシメジは、基本的には包丁を使わず手で小房に分けて使うのがおすすめ。大きすぎるものは、軸の部分で半分にカットしてもいいですね。 (4)ブナシメジの冷蔵保存の方法:きのこは常温保存してしまうと菌糸が発生するので、温度の変化の少ない野菜室で保存しましょう。湿度がこもらないよう透明のフィルムは外して、新聞紙でくるんでから、再度ポリ袋で包み保管しましょう。この状態であれば1週間くらいおいしく食べられます。 (5)ブナシメジの冷凍保存の方法:使い切れそうにないブナシメジは、冷凍庫で保存することもできます。石づきをカットしたら小房に分け、チャック付きの袋に入れてから冷凍庫で保存しましょう。約3週間から1ヶ月ほど日持ちするようになります。料理に使うときは解凍せず凍ったまま調理するのが、べちゃっとならずにおいしくいただくコツです。 3. ブナシメジの栽培:ブナシメジは、原木栽培と菌床栽培の両方で栽培可能なキノコです。原木栽培は、ブナやコナラなどの広葉樹の倒木や伐根に種菌を植え付けて育てる方法で、自然に近い環境で栽培されます。菌床栽培は、オガクズやチップなどの木材を粉砕して栄養剤や水を加えた培地に種菌を入れてハウス内で育てる方法で、室内で温度や湿度を管理して栽培されます。市場に出ているのはほぼ100%菌床栽培です。 4. 本シメジとブナシメジの違い:ブナシメジは本シメジの名称で市場にでていたことがありました。しかし、全く別物ということで、行政指導により現在は「ブナシメジ」で統一されています。本シメジは根生菌で生きた木の根に生えますが、ブナシメジは腐朽菌という死んだ木から生えます。 5. 天然ブナシメジ:色は薄茶色で、傘は大きいものだと5cm程にもなり、一般のスーパーなどで売られている栽培物とは見た目がかなり違っています。天然のブナシメジは栽培のブナシメジのように立派なきのこは発生せず、生える数や大きさにもかなりの個体差があります。栽培のブナシメジのように何本も集まってひと株になるのではなく、1本~数本で生えてきます。「ブナシメジ」という名前の由来は、その名の通り、ブナの巨大倒木に発生するためと考えられていて、傘表面に大理石模様があるのが特徴。学名のmarmoreusも大理石を意味しています。
<茨城県のブナシメジ栽培> 茨城県の大手では、ハラキンが鹿嶋市で40年以上きのこ栽培一筋に取り組み、ブナシメジの生産量は年間4,000トン近くに達しています。全国のブナシメジ生産量約12万tのシェア(3.1%)です。ハラキンは、ふるさと納税の返礼品として、ブナシメジを提供しています。この企業は茨城県がきのこ生産量を上位にアップした原動力です。又、ローソンファーム茨城が鉾田市田崎にブナシメジ生産の植物工場を設けており、室内で温度や湿度を均一に保つ管理栽培で、高品質のブナシメジを安定生産し、年間約70トンを関東や東北地区のローソングループ店舗に供給しています。
(ローソンファーム茨城) ブナシメジの生産を専門に行っている有限会社 鬼澤食菌センター(鉾田市)がローソンとタッグを組みました。
ブナシメジの生産工程
① 攪拌:オガ粉、水、フスマなどを混ぜ合わせ、しめじを栽培するための培地を ② ビン詰め:攪拌した培地をビンに詰めます。 ③ 殺菌・放冷:雑菌を無くす為に培地を殺菌し、その後クリーンルームに移して ④ 接種(植菌):殺菌した培地の上にブナシメジ菌を植えます ⑤ 培養:培養室で温度・湿度・風を管理しながら約3か月菌を繁殖させます ⑥ 菌掻き:菌が繁殖した菌床の表面を掻き、芽出しを促します ⑦ 発生:温度・湿度を細かく調整した発生ルームでブナシメジを大きく成長させ ⑧ 計量・包装:厳格な社内基準に適合したものだけを収穫し、包装します。 ⑨ 検査・出荷:包装されたものを出荷し、店頭に並びます。 これらの工程を経て、約100~120日で収穫します。
鬼澤さんは、「きのこは温度と湿度が管理された部屋で作りますが、春夏秋冬その日の天気等にやはり影響されるんです。そんななかで一番大事なのが、換気をこまめにすること。この作業を怠ると、いいきのこはできません。でもきのこは本当に難しい。昔より少しはきのこの事を分かってきましたが、それでも分からないことだらけ。まだまだ勉強中です」と言います。
① いばらきコープのお店 ② サングリーン旭 ③ 水戸京成百貨店
茨城県のブナシメジは、歯ごたえが良く、風味が豊かで、栄養価も高いとして、消 費者に人気があります。是非、茨城県産のブナシメジをご賞味あれ!お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.11.27 07:29:16
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