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2008.01.07
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カテゴリ:lovesick
客間にはパソコンを持っていきました。彩は何冊かのアルバムと、写真の入った箱を出しながら、私がパソコンをセットするのを見て、首を傾げました。
「なあに?」
私は、打ち込みました。
『悠斗の隣の席でも、、いいんだよね?』
彩は覗き込んで、
「ん?」
私は少し考えてから、
『なんか、変な風に思われないかなって、ちょっと心配になっちゃって』
彩も少し考えてから、
「ああ、もしかして、新しい男連れてきた、みたいな反応??」
私がうなずくと、彩は笑って、
「大丈夫だよ。そんなこと思う人、招待客の中にいるはずないもん。それにね。」
彩は言葉を切って、
「それに、楓、どんどん新しい男に乗り換えて、人生エンジョイ?してるようには全然見えないし。まだ、幸せ満点な顔じゃないから、安心して。っていうのも変だけど」
私は彩の言い方に思わず笑いました。
『ならよかった。悠斗が隣にいてくれると心強いし。』
「うん、あとで招待した人のリスト見てね。ハルカやサキも来てくれるって」
『そうなんだ。懐かしいな』
「みんな楓のこと分かってるし、リラックスしてね」
彩は微笑んで、
「お父さんとお母さんさ、私と宗太郎がどんなに楓が元気なこと伝えても、2人で楓の個展の度に見に行って、ちゃんと作品作り続けてるの見ても、やっぱりまだまだ楓のこと心配してるから、そうね、、多分、楓がちゃんとしっかり食べてるとこ見ると一番、安心するんじゃないかな。だから、しっかり食べてね。お料理もおいしいの選んでるから」
私は微笑んでうなずきました。
「楓が出席してくれるの本当に嬉しいわ。お兄ちゃんもきっと、ちゃんと私の花嫁姿見守っててくれるはずだし。楓がその場にいなくちゃ、私、式の間中、ずっと、楓のことばかり考えちゃいそうだったもん。これは、宗太郎も同じだと思うよ。」
そうね、と思いました。そうだよね、悟、あなたもきっと見守っているはず。かわいい妹の花嫁姿。
『一緒に式できなくて、残念だわ。彩は、私の義妹になるはずだったのにね』
「そうだね、楓」
彩は少し目をうるませてから、
「だけど、私はちょっとラッキーだったわ。楓みたいに可愛い子と花嫁姿比べられなくてすんで」
と、笑いました。そしてふと、真顔になり、
「でも、でも、いつか、楓の花嫁姿も見れるって信じてるよ。絶対、きれいだもん。私楽しみだわ。」
といいました。私は、曖昧に微笑みました。そんなことうまく想像できませんでした。
「じゃあ、写真選ぶの手伝って。ちょっと、楓には辛いかな?」
私は、彩の広げだした写真に、すでにドキドキし始めていました。いろんな思い出の断片。幸せだった時間の破片。
「でもさ、式でいきなり見るよりいいと思うんだよね。私と宗太郎の2人の写真選んでも、ほとんど4人でどこかに行って撮ったものばかりだから、思い出すでしょう?」
私はうなずきました。少し目を閉じてから、思い切って写真を見ていきました。いろんな写真がありました。それこそ赤ちゃんの頃からの、4人兄妹のように写った写真の山。公園で遊んだり、自転車に乗っていたり、夏祭り、市営プール、運動会、いつもいつも一緒でした。大きくなってからは、4人で出かけ、自分たちで撮る写真が増えました。遊園地や海水浴や、川遊び。川のそばで育ったから、みんな水遊びが好きで海や川、プールにいくことが多かったのです。あとは悟と宗太郎の野球の応援。窯でみんなで撮った写真もあります。1枚1枚ごとに、1瞬の記憶が鮮やかに私の頭をよぎっていきます。自転車の練習で真っ赤な夕日が落ちるまで空き地にいたこと。みんなで競争した金魚すくい、なぜかとても上手な宗太郎に、誰もかないませんでした。お弁当をもって朝から夕方まで泳いでいた市営のプール、プールサイドで昼寝もしたっけ。運動会では私はかけっこが苦手で、いつも帰り道みんなに慰めてもらいました。ジェットコースターが大好きな彩に付き合って、3人が何度も交代で隣に座った遊園地。日焼け止めを塗りあうのがくすぐったかった海水浴。私たちの生まれた町を流れる大きな川は、いつも優しく私たちを見守ってくれていて、魚とりをしたり、泳いだり、川原で寝転んだり、大好きな場所でした。私たちの高校には野球部がなかったので、悟と宗太郎は町内会のおじさんたちと草野球や、学内で作った同好会で練習してよく試合をしていました。そして、私が窯にこもる時には、みんなが来てくれて一緒に作ることもありました。どうしようもない悟の作品。あれは、本当に、すごいセンスだったな。
そして、私は見つけました。悟が1人で写ったセピアカラーの写真。
高校の修学旅行に持って行きたいからと、ねだって私が撮らせてもらった写真です。久しぶりに出会う、私目線の悟。そうそう、出来がよかったから、彩も欲しいって言ったんだっけ。この写真、私はどうしただろう。少し考えてみても思い出せませんでした。多分、実家の部屋にあるのかな。長い間部屋に帰っていないから。悟のその写真を見ても、意外にも、私の心は乱れず、写真の中の悟と同じように微笑んでしまう自分がいました。
心が暖かくなる笑顔。いつも私を包んで癒して許してくれた笑顔。
ああ、今も、隣にいてくれたら、悟。


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最終更新日  2008.01.07 00:13:25
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