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2008.02.17
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カテゴリ:lovesick
俺の理性を危うくする楓の濡れた瞳。抱きしめるのを我慢するのに必死で、、気がつけば、ろくでもないことばかり口に出してる俺。どうすんだよ、俺が、楓を追い詰めて。やっぱり、謙吾と楓のこと、ショックなのは間違いないんだよな。。。だからって、楓に当たってるなんて。心底、自分に嫌気がさすけど。
「俺、何言ってんだよな?、、、ごめん」
楓は自分の手で涙を拭き、俺を見上げる。
「愛してる、、って言った以外のこと、忘れて」
とがんばって、できるだけ軽く言い、楓がかすかに微笑んで、、頷くのを見てから、
「あっち、戻ろうか。俺、まだ誰ともろくに話してないんだ」
と気を取り直すように言った。これ以上2人でいると、自分があやしい。全然冷静になれないから。最初は、、長く時間をかけて、ゆっくり待つつもりだったのに、どんどん欲張りになっているよな、俺って。一緒に時を過ごし、楓の苦悩を知れば知るほど、時間をかけようという気持ちが間違いなく増していることも事実なのに、同じように一緒に時を過ごすことで楓自身の魅力ももっと知ることになり、誰にも渡したくない、早く自分のものにしてしまいたいという焦りも増して、追いかけっこになっているのだ。

顔を洗ってから行くという楓よりも先に、リビングに戻る。ソファの宗太郎が心配げにこちらを見る。俺は、一応、ばれなかっただろう、ということで、頷いた。ほっとした様子の宗太郎。
楓が入ってきたので、一緒にカウンターの所に行くと、彩が、
「お酒?」
と聞く。楓は、にっこり笑って、自分で白ワインとグラスを取って注いだ。
「悠斗は?」
「俺は、ウーロン茶もらっていい?」
彩は、淹れてくれながら、
「今日は泊まれないの?」
「ああ、明日、ロケバス出るのが早いんだよ。だから、帰るわ」
「そっか。楓はどうする?」
俺は、楓に考える隙も与えず、即座に、
「俺が送るよ」
と言った。それから、声を潜めて、
「こんな、野郎もいっぱいいる中に、楓を置いて帰れるかよ。まして、眠らせるなんて」
と真剣に言うと、楓は彩と顔を見合わせて笑った。
よし、大丈夫。みんなの中にいると、俺の理性も通常運転開始だ、と無理に自分を励ます。

それから、少し、初めての人たちとも、いろいろ話した。みんな宗太郎と彩の友達だけあって、気のいい人ばっかりだった。楓の育ったあの町、そして、あの川原。みんなそこで幼い頃からの日々を共有してきたんだな、という空気が感じられる。ゆったりおっとりしていそうで、ゆるぎない筋がそれぞれに通っている。

目は時々、楓を探す。楓は女の子たちに囲まれて、にこにこ微笑んでいた。パソコンを持っていないところを見ると、ほとんど聞き役に回って、どっちかというと、、、というか、思いっきり、飲むことに集中しているような感じ。とりあえず、人前では、さっきみたいに、ボロボロになったりしないんだな。ていうか、こうやって、大勢の中にいるのも、悟さんの事件以来?にしては、楓、よくがんばってるじゃん。だけど、それにしたって、、あのワイン、瓶ごと持ってきてるし、、ほとんどひとりで空けてね?、、ったく、飲みすぎなんだよな。。。なんて、楓を眺めながら、カウンターにおかわりを取りに行くと、
「悠斗はさ、楓のことが好きなの?」
それまで、隣に座っていた、カワノくんという人がついてきて、俺の視線を追って、そう話しかけた。おっと。ストレートに聞くのが当たり前の地域なわけ?とか思ってしまう。彼とは何度か野球で会ったことがあるけれど、宗太郎ではなく、彩と楓の同級生らしい。茶髪で色白の顔に、丸い目とアヒル口で、かっこいい&かわいいが半分半分の顔で、同い年とは思えないくらいの童顔くんである。
「えっと、ああ。まあ。。」
我ながら、うろたえた返事である。俺ってそんなにバレバレかなあ。。カワノくんはがっかりしたように、
「やっぱり、そっか。。。」
その様子に俺は愕然としながら、
「何?君も楓が好きなの?」
カワノくんは、上目遣いにこちらを見て、小さくうなずく。ったく、楓って魔性の女?あっちもこっちも、、楓に夢中だらけかよ。
「こっわい悟さんが楓の隣にいつもいたから、、、みんなはあきらめてたけど、、僕はあきらめきれなかったんだ。悟さんがあんなことになるんじゃなくて、、もっと、普通に別れたりしたんだったら、、僕だって勇気出して、ちゃんと告ったかもしれないんだけど、さすがに、そうもいかなくて。」
彼は、楓を遠目に眺めながら言う。
「あの後、楓、いつのまにかどこかに引っ越しちゃって、窯に行ってもフジシマくんにガードされるし、全然会えなくてさ。でも、今日は、楓も来るっていうから、すっごく久しぶりだったし、ちょっと期待して来たんだけど、その幸せもつかの間だったよ。」
と一気に言ってから、こちらを向き、
「また、悠斗みたいな人がいるんじゃ、キビシイな。」
それでも、いやみな感じじゃなく、微笑んでくる。
「でも、、悠斗がいるから、楓が出てくる気になって、また会えたんだとしたら、、自分のものにはならなくても、感謝しなくちゃね。どっちみち、僕には高嶺の花だったんだし」
「俺だって、楓を自分のものになんてできるかどうか。。」
気弱につぶやく俺に、カワノくんは笑って言う。
「悠斗でダメなら、、、僕ならもっとダメだよね。まだ悠斗は告ってないわけ?」
「いいや。愛してるっていいまくり。」
ほんと、いいまくりなんだよな、俺。心の中でもずっと。ただ、どれだけ言葉を重ねても、浜辺の砂のようにさらさらと、楓の表面を空しく滑り落ちていっているだけな気がするけど。一粒でも、、楓の心に残っているだろうか。


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最終更新日  2008.02.17 00:07:08
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