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2008.04.20
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カテゴリ:let me sleep beside you
凪子さんは、その場所に立ち、目を閉じる。右目だけが何度か強く瞑られる。

凪子さんは、今、ヒロトの最期の思考を吸収している?

そう思うか思わないかの瞬間に私は、凪子さんに駆け寄り、手に触れていた。

一瞬にして、流れ込んでくるものを受け取ると、私は、またその場に崩れていた。

頭の中で少しずつ、受け取った情報がほどけていく。
私は、ヒロトの声が語りかけてくるのを聞いていた。

『美莉。今、僕は、ロープを吊るし終わり、それを視界の隅に捉えながら、君への最後の手紙を書いている。「美莉へ。・・・

淡々と続いていく、ヒロトの声。
それに並行して、自分に呼びかけるケースケの声。
「ミリ!」
体を抱き起こされる。だけど、頭の中での動きが激しいからか、体を動かすことができない。あるいは、体を動かすための指令を送ることができない。

私は、頭の中でのヒロトの声と、耳から入ってくるケースケとナギコさんの声をデュアルで聞き続ける。

「大丈夫、すぐに目を覚ますはずよ。」
ため息が聞こえる。
「ほんと、無茶するんだから」
「さっきはすぐに目を覚ましたのに」
心配そうにいうケースケに、
「さっきは私が、コントロールして、セーブした量だったから」
「じゃあ、今は?」
「今のは、私が吸収している最中のものをそのまま受け取ったのよ。ショックが大きいわ」
「ミリは・・・何を見たんだ?」
「ヒロトの、ほとんど最期の思考よ」
「・・・」
「どこまで見たかは、私にも判断できないわ」
「俺にも同じものを見せろ。ミリが見たかも知れない最大限の量で」
「それは、やめておいたほうがいいんじゃないかしら?」
「ナギコ、頼む。」
凪子さんは、もう一度ため息をつき、
「じゃあ、ゆっくり見せるから、ずっと手を握っていて」
・・・・しばらく沈黙が流れる。そして、ぐったりとした声でケースケ。
「ヒロト、ミリにこんなに遺書を?」
「そうみたいね。ミリちゃんに見える形で遺すことはできなかったようだけれど」
「ミリには、言うなよ」
「言わないわ、でも、もう見たかもしれない」

そう、私は、見た。
というよりも、聞いた。
ヒロトの最期の手紙。
ヒロトの声で。


美莉、ごめんな。
                                     紘人。」


立ち上がるヒロトの影が見える。

視点はヒロトのものになる。
暗い部屋。
見たことのない角度から、今私がいる場所を見下ろしている。
そして突然の落差。

ヒロト!

声にならない悲鳴のような叫び声を、
心の中であげてから、
私は、今度こそ本当に、気を失った。


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最終更新日  2008.04.20 06:29:36
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