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ヒロトが死んで2週間が経った頃、
ナギコさんに出会い、 ヒロトの死の意味を知った。 ヒロトの闇に触れた。 あの日から、私は変わった。 ヒロトの死から、ただ、呆然と生きていた私。 そんな私に、ひとつの目的ができた。 それは、ヒロトのそばにいくこと。 ヒロトがいなくなってから、私は、ただ、何も考えられなくて、 後を追う、なんてことすら、思いもつかなかった。 だけど、もしかして、後を追うってある意味自然だよね? って、思う。 とても愛していたヒロトを自殺で喪って、自分もそうしたいって。 それまでそう思わなかったのが、かえって不思議に思えた。 だけど、なかなか実行できなかった。 いつもそばに慶介がいたから。 慶介が仕事でいない日は、凪子さんがいたから。 あるいは、2人とも、が、そばにいたから。 布団を2組並べ、3人で川の字で寝たこともある。 奇妙な3人の関係。 多分、、ふたりで、私から目を離さないって約束をしたんだろうな、と思う。 特に、ヒロトが死んだ真夜中は。 だから、なかなか実行できなかった。 第一、私は、ほんと、能天気な人間で、 正直、自殺には向いていなかった。 すぐに、思いとどまっちゃって。 どこまでも、まとも、で、 どこまでも、前向き、な、 自分が、うらめしかった。 だけど、それでも、、ナギコさんが、時々、渋々見せてくれた、 ヒロトの闇に触れるたび、一番、「死」に近づけた。 だから、私は、待っていた。 ケースケがいない日を。 ナギコさんと2人になれる日を。 そして、ヒロトの死から3ヶ月経ち、 やっと訪れたその日。 私は、ナギコさんの飲むワインに、一粒、クスリをいれた。 市販薬だし、別にやばくない、 でも、お酒と飲むと、ちょっとハイになっちゃうって注意書きのクスリ。 機嫌がよくなったナギコさんに、私は、ねだった。 いつもより、多くの闇を見せてくれるように。 そして、私は見た。 ヒロトの闇。 圧倒的な、暗闇。 絶望的な、孤独。 ヒロト、私、辛い。 苦しい。 だけどヒロトを愛したこと後悔してないよ。 そして、こうして、死ぬことも。 もう一杯の特製ワインで、ぐっすり寝入ったナギコさんを見つめ、 心の中で、謝る。 (ごめんね、ナギコさん) 私は、リビングに向かう。 望むことは、同じ場所で、同じ方法で。 でも、 なぜか、ロープをしっかりと結べなかった。 私って、こんなに不器用だったかな? だからって、焦る気持ちはない。 ナギコさんは、全く起きる気配はない。 ケースケは、地方で泊まりの仕事。 絶対に帰ってこない。 だから、私は、落ち着いて、「死」に向かって作業を進めていた。 そして、何とか、目的の輪を作り上げ、吊るし終わり、 何度も何度も引っ張ってみる。 よし、大丈夫。 満足な気持ちでその輪を見上げた。 もうすぐ、ヒロトに会える。 ![]() お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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