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あの日、俺が、ミリを助けられたのは、ほとんど偶然だった。
地方のロケが、現地悪天候で中止になり、飛行機に乗らずに、 突然、スケジュールの空いたみんなで、飲みにいった。 最終的には、そのうちの1人の家で、雑魚寝って感じになった。 随分飲んでいたし、ヒロトが死んでからこっちの寝不足のおかげで、強烈に眠かったし、 もちろん、地方で泊まりの予定で帰れないって事で、 ミリにはナギコをつけておいたから、 俺も、そのまま泊まってもよかったんだ。 ただ、 何かが、俺を呼んだ。 強烈な胸騒ぎが俺を襲った。 だから、俺は、突然立ち上がり、 驚くみんなにロクに説明もせず、 慌ててその部屋を飛び出した。 タクシーに乗り、ジリジリとしながら、マンションに向かう。 ナギコに何度か電話するが、出ない。 ミリにも電話するが、電源が切られている。 俺は、恐ろしいほど嫌な汗をかいて、やっと部屋にたどり着く。 そして、ドアを開けたときに見えたのは。 今、まさに、輪にしたロープに首を突っ込もうとしている、ミリだった。 「ミリ!よせっ」 信じられないほど、切迫した声が自分の喉から吐き出される。 ミリは、驚いた拍子に、あろうことか、バランスを崩し、イスを蹴ってしまう。 俺は、それこそ心臓が止まりそうになる。 ミリの首がロープにかかり、体が吊られる。 信じられないほど長く感じた一瞬。 ・・・ で、 その後、 何が起こったかって? ・・・落ちたんだよ、ミリのヤツ。 ロープごと床に。 ・・・・ロープくらい、ちゃんと結べないわけ? って、つい、思っちゃったよ、俺。 そこまで、思い出して、なんだか、ふっと笑ってしまう。 いや、もちろん、決して、笑い事なんかじゃなかったし、 その後、ミリが、落ち着くまで、大変だったんだけど、それでも、やっぱり。 そんな、遠い日のミリの自殺未遂。 あの日ほど強烈ではないけれど、 やっぱり重なる胸騒ぎ。 俺はまさか、と思いながらも焦って、部屋に入った。 静かに、でも、相当慌てて、寝室に向かう。 そして、ベッドの中に、ミリの安らかな寝顔を見つけてほっと息をつく。 だけど、ほっとしたのもつかの間だった。 その後で、俺は、やっぱり、見たくないものを見てしまったんだ。 ![]() お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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