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カテゴリ:first kiss ケースケ×ミリ
俺はミリに隠し事をしている。
隠し事っていうか、言わなくちゃいけないのに、どうしてもなかなか言えないことがある。 毎日マンションのドアを開ける前に思ってる。「今日こそ言わなくちゃ」って。だけど、言えない。 「お帰り~」って、駆け寄ってきてくれるミリの、穏やかな笑顔を見てしまったら。 腰をかがめて、キスした後、イノセントに見上げてくるミリの瞳を覗いてしまったら。 途端に、「明日でも、、いっか」って。 そんな日が続いて、きっとミリも気づいてる。 俺が少し違うこと。 笑顔のトーンが下がってる。 目を合わせる回数が減っている。 俺の瞳の奥に何かを見つけるのを恐れるように。 俺に負担をかけないように、そんな自分を必死で隠そうとしていることも分かる。 ったく、情けない俺。 ミリを不安にさせてどうすんだよ。 ただ、意識したらなんだかどんどん言えなくなってきた。 言わなくちゃって思えば思うほどどんどん言いづらくなってきた。 喉元まで出かかっても言えないとき、俺は、ただ、ミリにキスをする。 ミリは瞳を閉じて、俺のキスを受け止める。 心の奥にたくさんの小さなため息を飲み込んでいる。 だから、俺は何度も何度も口づける。 そのまま最後までヤっちゃうこともある。 てか、ほとんどそのまま最後までいっちゃうんだ。 不安に思うミリを安心させたくて。 心から愛してるのはミリだけなんだって分からせたくて。 「愛してるよ、ミリ」 その言葉なら、いつでも何度でも口にできる。 耳元で囁きながら、優しく、強く、ミリを抱くんだ。 終わったら、ミリは、薄闇の中、俺の瞳を丁寧に覗きこむ。 その暗さなら、見つけたくないものを見つけなくて済むから? そっと俺の頬に手を添える。 俺を見つめる、トロリとした瞳に、ひかれ、俺はまた何度もキスをする。 ミリは、その全てを受け止めてから、 俺の胸に、きつくしがみつくようにして眠る。 俺はミリの寝顔を見つめながら思う。 でも、ほんともう、言わなくちゃ。 「今度のドラマで、俺、キスシーンがあるんだよ」 って。 別に、女優さんとキスをすることに、なんの感情もない。 ただ、仕事、って感じだ。 だけど、ミリは。 俺が、他の女とキスをすることに、きっと何の感情もなくはないだろう。 ああ、どうしよう。 知った日にあっさり言っちゃえばよかったんだよな。 さらっと、なにげなく。 でも、それができなかった。 なんとしても撮影までには話さなくちゃな。 でも、もう、それも目前だった。 ああ、今日は随分遅くなってしまったから、多分、先に眠ってるだろうし。 俺は、ため息をつきながら、マンションの鍵を開けた。 ←1日1クリックいただけると嬉しいです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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