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カテゴリ:first kiss ケースケ×ミリ
予想された展開だったけれど、やっぱりミリを傷つけてしまったことで胸が痛む。
心にもないことを捨て台詞に、後ろ手でドアを閉めようとするミリを、まさかそのまま行かせるわけにはいかない。 ドアを思い切り引き返し、そして、胸の中でミリを包み込む。 「ミリ。愛してる。ごめん、イヤな思いさせて」 身動きしないミリ。俺は続ける。 「。。イヤな思いをさせることは謝る。だけど、仕事でキスすることは謝らない。仕事だから。これから同じような思いいっぱいさせるかもしれないけど、俺は役者を辞めないよ。まだ少しやってみただけだけど、自分ではこれが天職だと思うんだ。つらいの分かる。だけど、そのこと、ちゃんと分かってほしい。」 ミリは少し顔を上げる。俺は胸からミリを離し、潤みかけた瞳を覗きこむ。ひどいこと言ってるかもしれない。だけど、仕事を続けていく上で、理解してもらわなくてはならないことなんだ。ミリは言う。 「・・・そうだね。ケースケは、今の仕事、本当に向いてると思う」 ポツリとつぶやくように告げ、少し目を閉じるミリ。目をもう一度開いて言う。 「だから、がんばってね」 言葉の内容とは裏腹な、突き放すような言い方に、俺は胸を締め付けられる。自然に手に力がこもる。身をよじって逃れようとするミリを、より強く抱きしめる。 「離して・・?」 「いやだ」 こんなんで終わるわけにはいかないんだ。 「なんでよ。離して。私、怒ってないよ」 穏やかに告げるミリ。俺は少し体を離して、瞳を見つめる。確かに、、。でも。 「怒ってない」 繰り返すミリ。俺はミリの体から、ゆっくりと手を離す。 「なんかちょっと妬けただけ。子供みたいだね、私ってば」 にっこりと笑ってくれるミリ。 くそっ。俺、無理させてる。ミリにガマンさせてるんだ。 確かに、俺の仕事で、つらい想いさせること、納得してもらわなくちゃならない。 だけど、こんな風に気持ちを押し殺して無理してほしいわけじゃない。 俺はミリをもう一度抱き寄せる。 「んだよっ。無理しなくていいんだよ。いつもみたいに、イヤだとか、キライとか、バカとか言ってくれよ。大声で叫んだっていんだぞ?」 ミリはあきらめたような笑顔で俺を見る。俺はなんだか不安になって、 「泣いたっていいんだぞ?」 こっちが泣きそうになりながら言うと、ミリはそのまま首を横に振る。 「無理なんてしてないよ。泣きたくなんてない。ただ。。。」 「ただ?」 ミリは、 「何でもない」 と笑ってごまかす。 「言えよ」 ミリは気弱そうに目を伏せ、 「ケースケには役者は天職でも、、」 「・・でも?」 「でも、私は、こんなことくらいで動揺して、、役者の恋人には向いてないのかな、なんて思っちゃった」 頼りなげに微笑むミリ。俺は、愕然としながら、 「ミリ、、、まさか、」 言葉につまる俺を見つめ、ミリは、ニッコリ笑う。 「な~んてね、こんな気弱なキャラは似合わないない。ね?」 明るく言ってくれるミリだけど、俺は立ち直れず、 「俺には、ミリしか、いないんだぞ?」 呆然とつぶやく。少し声が震えてしまう。ミリは、笑って、 「はいはい。分かってるよ」 と言ってから、 「あ、そうだ」 「え?」 「せめて、NG出さないようにがんばってよね?」 「NG?」 「うん。だって、NGになったら、何度も、、、するんでしょ?」 「ああ、きっと1回で決めるよ。約束する。」 静かに頷くミリ。 「もう、、、寝るね」 「・・俺もシャワー浴びたらすぐに行くから」 そういってから、俺は付け足す。 「なあ、練習台なんて、ありえない。いつだってミリのことだけ思ってキスしてるよ?」 「・・分かってるよ。そんなこと。なんだか動転しちゃって、、バカなこといってごめんね」 俺は少しだけ安堵し、ミリを抱き寄せて、いつもどおりキスをする。 だけど、いつもと違うこと。 唇が触れる瞬間、ミリの体が固くなった。唇も固くなっている。 体が、、俺を拒んでる、、の、か? ミリは自分から唇を外し、俺を優しく押し返してから、俯いたまま、 「おやすみ」 そう言って寝室に消えた。 俺はしばらくその場から動けなかった。 俺が、キスシーンのことを話せば、 きっと、もっと、ミリは泣いて怒って拗ねてって思ってた。 俺はそれを抱きしめて、なだめて、 腕の中で思いっきり泣かせて、気が済むまで泣かせて、 キスして、しっかりと抱くことで、何度も愛してるってささやくことで、 これまでと同じだって、 これからもずっと同じだって、 何も不安に思わなくていいんだよって、 伝えようと思っていたのに。 ミリは、あんなに穏やかに、、ひとりで飲み込んでしまおうとしている。 ひとりで・・? そんなことできないだろ? なあ、ミリ。 頼むから、他の誰か、なんかに、助けを求めないでくれよな? 『役者の恋人には向いてないのかな』 ミリの言葉が脳裏に甦る。 役者であろうと、、なんであろうと、 俺の隣には、ミリ、お前の居場所しかないんだよ? 一体、俺、今のミリに何をしてあげられるんだろう? 1人残された部屋で、途方にくれる俺、だった。 ←1日1クリックいただけると嬉しいです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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