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2009.08.13
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別れて、、、あげ、、、。。

私はぼんやりと涼子さんの目を見た。無抵抗な私に、初めて穏やかな目を向けて彼女は続ける。

「ね?反論できない。つまり愛、なんてないわけよね?」

ケースケ・・・・。
愛、、じゃ、ない、、のかな。。。私たち。
あんなにあんなに確かめ合ったのに。
そのことすら、白いもやの中に霞んだ記憶になって今の私には掴み取れない。

「ケイちゃんも優しいから、きっと、あなたのことほっとけなかっただけなのよ。分かるでしょ?あなただってすぐそばにあった手をつかんだだけでしょう?」

確かに、伸ばされた手を私はつかんだ。
だけど、あれは、、ケースケじゃなくても・・なの・・・?

「私には理解できないわ。どうして、あなたとケイちゃんが付き合うのか。そんなことしたって、お互いにヒロくんの影にずっと悩まされるだけじゃない?」

ヒロト、、、その影。

「お互いに愛もないのなら、、お願い。これ以上、大場の家に関わらないで。あなたさえいなければ、ケイちゃんだって、ヒロくんのことはそれなりに、、過去のことにできるのよ」

私が、いつまでも、忘れられないから。
私は、ケースケを苦しめている、、よね。たしかに。。
さっき手を合わせながら考えた想いが戻ってくる。

「ね、まだ付き合ったばかりなんでしょう?あなただってケイちゃんだって、まだ人生これからなんだから。だから、ケイちゃんを自由にしてあげて。別れて、ヒロくんのこと、忘れて、新しい誰かを見つけなさいよ。あなた、私から見たってかわいいもの。すぐにいいヒト見つかるわよ。ケイちゃんのことは、私に任せておいて、ね?」

新しい誰か。
その方が、、ケースケは。
ヒロトの影からも解放されて、
私みたいな、わがまま、、からも解放されて。
自由に。

私はいつの間にか目を閉じていた。言いたいことを言い終えたらしい涼子さんが、出て行く気配。

私、、私は、どうしたら・・。

そのとき、襖が開いて、お母さんが入ってきた。ぼんやりとする私を見て、心配げに声をかけてくれる。
「美莉ちゃん、どうかした?」
私は、持っている意識を総動員して、微笑んで言う。
「・・なんか、ちょっと、体調悪くって。ごめんなさい、今日はもう失礼してもいいですか?」
お母さんは、私に近づき、眉を寄せて言う。
「ほんとだわ、少し、顔色がよくないみたい」
「ごめんなさい」
力なく謝る私にいたわるような目を向けるお母さん。
ヒロトと同じ、ケースケと同じ、その優しい目に、私はいたたまれなくなる。
涼子さんの言うように私は、この優しい人も苦しめてきたんだ。。
「ごめんなさい、、ほんとに、、ごめんなさい」
わびる言葉ばかりが、何度も口をついて出る。
「何そんなに謝ってるのよ。水くさい」
微笑んでくれるお母さん。
その笑顔をみるだけで、とたんに涙があふれそうになる。
私は唇を噛んだ。
泣いたりするわけにはいかない。これ以上。
私は軽く頭を下げ、すぐそばに置いてあったバッグを取ると、立ち上がった。
軽いめまいを覚えるけれど、なんとか踏ん張って、告げる。
「ほんとに、、ごめんなさい、失礼します」
お母さんはあわてたように、
「ちょっと、帰るつもりなの?2階で休んどきなさいよ。もうすぐケースケだって帰ってくるはずなんだから」
優しくそういってくれるけれど、私は、微笑んで軽く首を振って、玄関に急いだ。
「美莉ちゃん、」
心配してくれるお母さんには本当に悪いけれど、私はもうその屋根の下にいることはできなかった。
挨拶もそこそこに逃げるようにドアを開け、外に出る。

私は、目を閉じ、軽く息を吸い込んでから、
ふらつく気持ちを抱え込んだまま、歩き出した。



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最終更新日  2009.08.13 12:43:08
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