|
カテゴリ:translucent ケースケ×ミリ
別れて、、、あげ、、、。。
私はぼんやりと涼子さんの目を見た。無抵抗な私に、初めて穏やかな目を向けて彼女は続ける。 「ね?反論できない。つまり愛、なんてないわけよね?」 ケースケ・・・・。 愛、、じゃ、ない、、のかな。。。私たち。 あんなにあんなに確かめ合ったのに。 そのことすら、白いもやの中に霞んだ記憶になって今の私には掴み取れない。 「ケイちゃんも優しいから、きっと、あなたのことほっとけなかっただけなのよ。分かるでしょ?あなただってすぐそばにあった手をつかんだだけでしょう?」 確かに、伸ばされた手を私はつかんだ。 だけど、あれは、、ケースケじゃなくても・・なの・・・? 「私には理解できないわ。どうして、あなたとケイちゃんが付き合うのか。そんなことしたって、お互いにヒロくんの影にずっと悩まされるだけじゃない?」 ヒロト、、、その影。 「お互いに愛もないのなら、、お願い。これ以上、大場の家に関わらないで。あなたさえいなければ、ケイちゃんだって、ヒロくんのことはそれなりに、、過去のことにできるのよ」 私が、いつまでも、忘れられないから。 私は、ケースケを苦しめている、、よね。たしかに。。 さっき手を合わせながら考えた想いが戻ってくる。 「ね、まだ付き合ったばかりなんでしょう?あなただってケイちゃんだって、まだ人生これからなんだから。だから、ケイちゃんを自由にしてあげて。別れて、ヒロくんのこと、忘れて、新しい誰かを見つけなさいよ。あなた、私から見たってかわいいもの。すぐにいいヒト見つかるわよ。ケイちゃんのことは、私に任せておいて、ね?」 新しい誰か。 その方が、、ケースケは。 ヒロトの影からも解放されて、 私みたいな、わがまま、、からも解放されて。 自由に。 私はいつの間にか目を閉じていた。言いたいことを言い終えたらしい涼子さんが、出て行く気配。 私、、私は、どうしたら・・。 そのとき、襖が開いて、お母さんが入ってきた。ぼんやりとする私を見て、心配げに声をかけてくれる。 「美莉ちゃん、どうかした?」 私は、持っている意識を総動員して、微笑んで言う。 「・・なんか、ちょっと、体調悪くって。ごめんなさい、今日はもう失礼してもいいですか?」 お母さんは、私に近づき、眉を寄せて言う。 「ほんとだわ、少し、顔色がよくないみたい」 「ごめんなさい」 力なく謝る私にいたわるような目を向けるお母さん。 ヒロトと同じ、ケースケと同じ、その優しい目に、私はいたたまれなくなる。 涼子さんの言うように私は、この優しい人も苦しめてきたんだ。。 「ごめんなさい、、ほんとに、、ごめんなさい」 わびる言葉ばかりが、何度も口をついて出る。 「何そんなに謝ってるのよ。水くさい」 微笑んでくれるお母さん。 その笑顔をみるだけで、とたんに涙があふれそうになる。 私は唇を噛んだ。 泣いたりするわけにはいかない。これ以上。 私は軽く頭を下げ、すぐそばに置いてあったバッグを取ると、立ち上がった。 軽いめまいを覚えるけれど、なんとか踏ん張って、告げる。 「ほんとに、、ごめんなさい、失礼します」 お母さんはあわてたように、 「ちょっと、帰るつもりなの?2階で休んどきなさいよ。もうすぐケースケだって帰ってくるはずなんだから」 優しくそういってくれるけれど、私は、微笑んで軽く首を振って、玄関に急いだ。 「美莉ちゃん、」 心配してくれるお母さんには本当に悪いけれど、私はもうその屋根の下にいることはできなかった。 挨拶もそこそこに逃げるようにドアを開け、外に出る。 私は、目を閉じ、軽く息を吸い込んでから、 ふらつく気持ちを抱え込んだまま、歩き出した。 ←1日1クリックいただけると嬉しいです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[translucent ケースケ×ミリ] カテゴリの最新記事
|