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カテゴリ:小説
私は自分が恥ずかしく思えた。
それと同時に、なぜ彼がこの問題に 真剣になるのが聞きたかった。 「何か、思うことがあるから、真剣なんだよね?」 思わず、聞いてしまった。やはり、マズかっただろうか。 その不安を一掃するように、彼はこの質問に答えてくれた。 「オレのじいちゃん、戦争のとき、兵隊として東南アジアに行ったんだ。 やさしくて、気のいいじいちゃん。 今でも元気で庭いじりしたり、買い物したりしてる。 パソコンなんかオレより詳しいんだよ。 そんな、じいちゃんなのに、戦地では人を殺し、 食料を奪うなど罪を犯した。これが、戦争なんだろう。 でもさ、この話を聞いたときショックだった。 身内が、アジアに対して罪を犯したことがショックだった。 中国・韓国、東南アジアと日本における歴史問題が、 身近にあることを思い知らされた瞬間だったね。 正直、歴史問題に関して難しすぎて、オレも分からないよ。」 聞いているこちらも真剣に聞き入ってしまう話だった。 当然、私は「うん、うん」と相槌を入れるだけだった。 「でさぁ、中国からの留学生さんと話す機会があったんだよね。 そのとき、歴史の話にもなったわけだ。留学生さん、こう言ったよ。 『自分が中国と日本の架け橋になりたい』 こうして、ビジョンをもってるんだなぁと、驚いた。 そして、何も考えていない自分が恥ずかしかった。 だからこそ、こうやって勉強して、研究して、 分析して答えを探すことが大切なんだと思う。 だから、教科書問題を扱うこの授業を 真剣に取り組んでしまうんだよねぇ。」 と、羽鳥君は伝えたいことを全て言うことが できたのか、ちょっと満足そうな顔をした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2005年12月25日 17時31分59秒
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