短編小説 「 芥子華( けしのはな ) 」
この物語はフィクションです。登場する個人や機関等の名称はすべて架空のものです。方言は上手くなっていないです。よろしく お願いします。バブル全盛時からの回想。北見 「土地も建物も何でもたまらんなぁ。」浦和 「そうじゃ。」中山 「それでどうだ、上がりの一部でなぁ、またやろうと思とるんじゃが、どうじゃろう。」水沢「バブルの時は、ほんと、よかったなぁ。」福井 「たしかに、あの時はよかった。」浦和 「あとは、しんどかったなぁ。」水沢 「そう言えば、しんどったなぁ。」北見 「おれんなんか、娘に言われて...ハッとしたなぁ。」水沢 「しかし、バブルは本によかった...。」福井 「...。」北見 「それで今度は何本いるんや。」中山 「前回が一人当たり5本じゃただろぅ、今回はビジネスなんで10本や。」浦和 「そうじゃのう。」水沢 「前回が博打で、今回がビジネスか?」中山 「そう、組合に出資するんじゃ。」福井 「ビジネスかぁ、今は若いもんが上手くやって、何にもしないでいいと言うじゃ。新鮮やなぁ。」水沢 「そう、投資とどこが違うんじゃ。」中山 「ちょっと、前とは違うんだけれどなぁ。プロジェクトAと言う会社に投資する組合なんじゃ。」水沢 「株式を手に入れるんか。」中山 「いや、出資すんじゃろぅ。」北見 「まあ、また若いもんに、はっぱかけりゃ済むことじないかぁ。」浦和 「そうじぁ、そうじぁ。」福井 「また、夢、魅せてもらおうかのう...。」戸田 馨は、1996年、666万円で、コンテンツの会社を設立。社名をプロジェクトAと言った。のちにプロジェクトXと社名を替えることになる。しかし、大学を中退して、会社が順調でも、あせる気持ちを常に感じていた。早くあいつらに伍するまで大きくしないと吸収か潰されてしまうと。そんな時に、戸田に近寄るものがあった。松戸 武である。郷里が一緒で大学の先輩にあたる。松戸 「戸田君、会社の方はどうだ、うまくいっているか。」戸田 「お金が集まれば間違いなく...極楽に、そしてライトバンクに将来必ず..。」松戸 「わたしは、君の夢を応援したい。だから、信用できる投資してくれる人を紹介するよ。」戸田 「お願いします。」それから、神戸・芦屋にて。中山 「松戸君は、君の事を強く言っていてね。」中山 「わたしもそうしたいと思ってね。」中山 「がんばって、心配いらないから。」中山 「後は、君達でね。」松戸 「君は、もう分かっていると思うけれど、あの方は...。」戸田 「分かります。」戸田 「今は、とにかく、その金がどのようなものであっても。勝ちたい。」のちに この関係を知ってのことか、マスコミを前に、近空球団がプロジェクトXを断る理由にしたのが「調べれば判る。」発言となる。会社設立から、8年...。株式を分割に次ぐ分割で爆発的に増やしていったのだった。個人投資家は、そんな、大判振舞いの戸田 馨を振興のヒーローに祭上げ支持して行ったのである。相次ぐ企業買収を...。強引に株式交換をもして行く戸田 馨を...。戸田 「松戸さん、本と、ここまで来ることが出来ました。」戸田 「恩をもっともっと返そうと思っています。」戸田 「投資事業組合の配当をもっと大きくしていきますから。」戸田 「どうして、うちの株券を持ってくれないのですか。」松戸 「株券は、君が体制と戦うための実弾ではないか。」戸田 「...。」話しは変わる、2005年後半 ある月日。アメリカの金利打止めが明確になった時。官邸のホットラインが鳴った。深夜のことである。電話での通訳は、24時間 交代で詰めている。ピムリコ大統領 「今後ドル安になることがハッキリとしている。」ピムリコ大統領 「まだそちらの政策を変えては困る。」川崎首相 「分かりました。」川崎総理は、さっそく閣僚を呼び調整。日銀牽制の動きをとる。それに、宮島金融・経済財政担当大臣 「しかし、株式市場の加熱は押さえないといけない。何か良い方法があるか。」金融庁官僚 大村「信用規制の強化があります。制度信用と一般信用が。」宮島金融担当大臣 「まずは、規制強化をマスコミに...。」そして、12月半ば過ぎに発表。株式市場は、急落。しかし、強い相場により、次の日には戻してしまう。しかし、市場はこれにより時限爆弾を抱え込んで行く。その頃、福島法務大臣は、閣僚調整の席で、プロジェクトXの立件が整ったことを告げる。笠松経済産業大臣「旧体制が、新興のものに対しての不満が強く、放置することは、われわれ政府の責任なんだとも言ってきている。」農林水産大臣「いつものことじゃないですか。」小倉官房長官「いつでも動けれるように。」川崎総理 「東証はどうなの。」宮島金融担当大臣 「まだ、取引急増によるシステム体制が整ってはいない。」川崎総理 「それならちょうどいい。」そして、2006年1月、決行の月。アメリカの意向。昨年後半からの官僚による度重なる日銀牽制。株式市場の加熱沈静のための規制強化。プロジェクトX子会社による粉飾決算、それに伴う風説の流布が、親会社によることの立件。証券取引法第158条違反としてである。旧体制の不満。新興財閥への見せしめ。東証の不具合。某閣僚の主席秘書 川口 明は、同じ大学の後輩、松戸 武に16日に決行する旨を漏らす、4日前のことである。また、福島法務大臣は、金沢検事総長に電話で16日と。そして、決行の日。世間は、強制捜査のことで騒然となる。押収書類を入れた沢山の段ポールが運ばれ行く映像だ。特捜もこの運搬の為に、いろいろな部署から事務官の応援を受ける。16日夕刻ことであった。明日は、株式市場がさがると誰もがそう思った。しかし、市場エネルギーも強く、折込みもその日のうちと観ているものは多かったのだ。案の定、17日昼にプロジェクトX関係会社はストップ安は変わらないが、市場は吸収、引けにかけて上昇に転じていった。個人投資家も安堵して行った。そして、二の矢が...。同日、前場が引けてからネット証券のマネル証券が、個別証券会社が投資家に行う一般信用について、プロジェクトX関係会社の掛け目を18日よりゼロにすると発表。実は、これが、個人投資家を心胆を寒からしめさせたのだった。マスコミは、プロジェクトXショックと騒いでいるのだが。本当の原因は、制度信用による規制強化は考えていたが、一般信用が個別に、それも、いとも簡単に規制強化に動くとはだれも考えはしなかったのだ。ましてや、マネル証券が規制強化をすると、他のネット証券等までが同調すると誰もが想像のつくことだった。誰が、マネル証券を動かしたかはここでは差控えることにしたい。午後、個人投資家は、狼狽、一斉に売りを浴びせたのだ。マネル証券が、掛目をプロジェクトX関係会社株を既に持っている投資家にも波及させたのであるから、売りが売りを呼ぶしかなかったのだ。それは、次の日も続き、終に取引件数438万件に達したところで東証は14時40分、取引を全面停止せざる終えなかったのである。東証始まって以来の失態、前代未聞のことである。一部・二部、そして、マザーズが停止した。停止前の駈込みによる売り注文が殺到したことは言うまでもない。この一連により日経平均株価指数は、1,113円、 6.8%のさげを記録した。このことは、昨年の8月と10月との上昇分を相殺するのと同じ値幅なのである。また、一般信用の規制強化は、一社のみで終わったが...。結果として、安易な個人投資家の振い落としとなり、他のネット証券等の代表の役目を買って出たとみるものもいた。また、東証もシステム強化を取引件数450万件から800万件にすることを約束した。そして、プロジェクトXを頂にその関係会社は...。宴はまだ終わってはいない。中山 「今回は、不良再生事業銘柄で銀行株・建設株に始まり、投資事業組合があっちなら、こっちがマネル証券のおかげの急落もで、往復ビンタで、もう、バブルが弾けての損がプラスにも何十倍にもなった。」浦和 「本当にそうじゃ、世間はプロジェクトXショックと言っているがのう、夢が現実じゃ。」水沢 「やぁ、本当だ、ありがたい。」北見 「本に...たまらんなぁ。」福井 「お上、さまさまよぉ。」北見 「これでまた、慈善事業が出来るわ。」中山 「あい変らず好きじゃのう。」北見 「何でも社会還元じゃ。」中山 「...。」同じ頃、新宿のホテルの一室にて。松戸 武は、ふと窓の外に眼をやった。都会のイルミネーション。いろいろな事が頭を駆け巡って行く。ふと、「そうだ...。」と呟いていた。大陸で見た一面に咲き誇る芥子の鮮やかな花々。ここがまるで天国だと錯覚してしまうほどの...。 その中に赤黒くまるで見つめると身も心もすべて吸込まれてしまうような魅惑の華...。「あぁ...。」と腹の奥底からの呻き声であった。おわり・完この物語は、最初のタイトル「短編小説 東京証券取引所 取引全面停止 !! 」としていたが、主人公の一人、「松戸 武」の心象風景を加えてみたかった。閣僚レベルの話しが多くなってしまったが実際は官僚レベルが大方なのだろうと思う。書く側の思いは、このことに限らず結果の原因が必ずしも取沙汰されている原因なのかを僭越ながら考えて貰いたい。そう思う次第だ。 また、登場する人物の名前はすべて、もうお分かりだろう。最後まで、読んで頂き、感謝に絶えない。 ブログ、ウオーミングアップ中の羽柴恵暢(ハシバ ヨシノブ)でした。