邦画の良さが実感できる映画だと思う - スペーストラベラーズ
全然知らなかったがこの映画、監督が本広克行(踊る大捜査線THE MOVIE1・2、サトラレ、交渉人 真下正義、UDONなどの監督を務める。テレビシリーズ踊る大捜査線では演出を担当)。公開当時(2000年)そんなことは知らず、普通に邦画として楽しんでいた気がする。舞台が、犯人が立て篭もる銀行内部と外を包囲する警官隊のみで構成され、ちょっと間抜けな銀行強盗とその場に居合わせた客・銀行員を巻き込んで様々な人間模様が描かれる・・・といういかにも邦画っぽい内容(洋画「ジョンQ-最後の聖戦-」も良く似た設定であるが、こちらはより人間関係に比重が置かれ、脇役も主人公並に扱われている)。人質にされたハズの人々が銀行強盗に協力、劇中アニメ「スペーストラベラーズ」を模した犯人一味のフリをする。その内にだんだんと親近感が生まれ、アットホームな雰囲気になっていくという、ちょっとコメディっぽいもの。警官隊を騙してピザをせしめ、皆で大喜びする場面などは思わず顔がほころぶ。邦画というと「ハリウッド映画大好き!」な人には何かと馬鹿にされがちであるが、やはり役者さんが日本語で芝居をする、という点で非常に登場人物の心情を理解しやすく、良いものである。根底に流れるテーマやストーリーにも共感しやすいのも見逃せない。・・・と言うと「邦画は画面がしょぼくて嫌」、「何か地味でB級っぽいのが嫌」という意見が聞こえてくるが、僕はその「B級っぽさ」というのが洋画と邦画の大きな違いであり、むしろそこが邦画の魅力であると思う。ハリウッドと違い、限られた予算の中で撮られる邦画は、舞台が限定された中での人情モノや愛憎劇、細かい人間模様が描かれるコメディが多い。この様な部分を見て、ハリウッド映画を観慣れた人々が「地味」やら「B級っぽい」という感想を抱くのかもしれない。しかし言語が母国語、というのは思いの他大きな効果をもたらす。役者の演技の良し悪しがすぐに分かり、笑顔や涙を流す表情には素直に共感出来る。これが、言語も顔の造りも違う白人や黒人だとなかなか分からない。いや、頭では理解出来ても心で共感できていないことが意外に多いのである。これらの点で僕は邦画がかなり好きである。「ドラマの延長」などと揶揄される事もあるが、それで良いと思う。それこそが邦画の個性であるのだから。無理をしてハリウッドの真似をする必要などない。主演は金城武、深津絵里。「ラストサムライ」で大ブレイクする前の渡辺謙や名バイプレーヤー・筧 利夫なども出演しており、思わずニヤリとさせられる。それにしても渡辺謙はマッチョだなぁ。ラストは何というか、いかにも邦画っぽく、テーマを観客に問いかける形で終わる。「現実はアニメみたいにいかないよ」という台詞がラストを飾り、決して八方丸く収まる形にしないのも良い。その上で「私は今、自分だけのパラダイスを探しています。どこかに必ずあると信じて---あなたは今、何をしていますか?」と問いかけるのは感動的。本広克行監督作品にしては全く有名ではないが、未見の方は一度観てみる事をオススメする。やっぱり邦画は面白い!スペーストラベラーズ