高校サッカー決勝戦後の鹿実・松澤隆司総監督の会見
9日の決勝戦から2日がたちましたが、決勝戦に敗れたあとの鹿実・松沢総監督の会見時のコメントがとても話題になっています。お読みになれなかった方のために、ご紹介させていただきます。2006年01月09日●試合後、鹿児島実・松澤隆司総監督会見<決勝 鹿児島実(鹿児島)vs.野洲(滋賀)> ■核が消えてチームのバランスが崩れた まず、みなさんがよく2連覇、2連覇と言われましたけど、(それが)いかに難しいというのが分かっていただけたと思う。今はもう全国で100から150のチームが、いつでも優勝できるレベルまで底上げができている。たまたま、うちがここまで上がったとも言えるんですけど。 その中で野洲高校は前の静岡学園とか桐蔭(学園)とか、そういうチームのように、1人1人がジュニアの時代から技術を、あるいは個人的な戦術をしっかり持っていた。それがあの2点目にそのまま出てきているんじゃないか。そういう意味で、野洲が今年優勝したのはやっぱり当然。MFの5人というのは1人1人がしっかりしているし、お互いのコンビネーションも取れている。試合前のミーティングで、今日のゲームのポイントは中盤をどう切っていくかだと語ったんですけど、そのつもりでかかったが、やはりMFのお互いのコンビネーション、あうんの呼吸が(野洲は)素晴らしかった。 うちの方は攻撃の一番の要になっていた栫(大嗣)が(準決勝の)イエローカードで出られなかったので、攻めの起点が前半できなかった。起点がないためにMF、あるいはDFの押し上げができなかったという感じがする。後半、2年生の飯森(裕貴)を入れた。体は小さいんですけど、キープする力はある。彼が入ったことで起点ができつつあった。MF、DF陣の押し上げがだんだん効いてきて、いろんなチャンスが出てきた。ビッグチャンスも何回かあった。しかし、ビッグチャンスを嗅ぎ分けて(ゴールを)ゲットするのがやはり栫の役目なんですが、そういうのが影響したのかなと思う。 1点目のCKにしても、クリアの後、うちのDFはラインを上げていないんですよね。上げておけばオフサイドだったと思う。ああいうところに、なんかやっぱりリズムが……。FWのラインとMFのラインが前半、お互いバラバラだった気がするし、コンパクトにできなかった。ああいうセットプレーでも、クリアしたらDFは上げるというのがやってきたことなんですが、なんかちょっとお互いにリズムが狂いかけていた。そういったところで統率が取れていなかった。 たった1人のプレーヤーがいなくなったということが、こんなに大きいのかなという感じはします。特にうちの場合は、そこそこの選手のバランスの良さは持っていたんですが、全国的に見てこれという選手はわずかなもので、そういう中で一番の核が消えてチームのバランスが崩れた。気持ちがですね。 ■野洲は一人一人に適応能力があった やはり野洲の場合、中盤のつなぎもですが、一発のサイドチェンジ、一発のディフェンスの裏(へのパス)、そういう使い分けがうまかった。あれは恐らくジュニアからしっかり育てなければ、ああいうチームはできないでしょうね。高校3年間では難しいと思う。 うちはそれをパワーとスピードで補っていたと思うが、(野洲は)どこが違うかというと、2点目なんかは典型的なパターンなんですが、センタリングがきちんと精度高く入る。うちはチャンスはあるが、肝心なときにクロスがひっかかってしまったり、肝心なときの技が……。激しい中で余裕がないと、技術は半減する。なぜ半減するかと言えば、技術的に未熟な面があるから。技術があるところまで達していれば、上がらないと思えばもう1つフェイントを入れてかわして(クロスを)上げるとか、適応性が出てくる。野洲は一人一人に適応能力があった。意外とミスが少ないチームで、そこが素晴らしかったと思う。 前半は起点ができなかったが、後半に飯森を入れて起点ができて、クロスの場面も出てきた。だが、クロスの精度がもうひとつだった。いいクロスに飛び込む栫のような選手がいなかった。いいクロスが上がっても、誰もニアに走り込んでいない。走り込んでいたと思ったら、クロスが相手のディフェンスにひっかかっている。とにかく後半、あれだけ攻めながら、(クロスの)精度が欠けていた部分があった。それは余裕がなかったのかな。(飯森は)スタミナがまだないので、最初から後半に入れるという計算はできていた。(前半の)最初から入れていたら(もっとうまく行ったかもしれない)、というのはあくまで結果ですから。 ■高校時代は人生のスタート あとは人生の挑戦でしょうね。高校時代が終わりではないですから。私はあくまで高校時代は(人生の)スタートだと思っています。昨日、栫に話をしたんですが、もし栫が今日の決勝戦で点を取ってヒーローになったとしても、イエローをもらって悔しい思いをした方が彼の人生にはプラスだろうと思います。われわれは死ぬまで挑戦ですから。スポーツだけが挑戦ではないし、そういう意味で、スポーツにはいろんな意味があるのでは。こういう負けを次に生かしてこそ、挑戦ではないかと思う。人間生きている以上、死ぬまでチャレンジ。そういうことを子どもたちに言い続けている。うちのメンバーは高校を出た後もそれぞれ頑張っていて、これは一番うれしいこと。 世界のサッカーにしてもいろいろなスタイルがある。サッカーはそこが幅が広く、底が深い。ワールドカップもブラジル、ブラジルと言うが、ブラジルが優勝できない場合もあるだろうし。いろいろなスタイルがあるところがサッカーの面白さだと思う。 ただ地域性の問題もある。うちもディアマント(FC鹿児島)という下部組織を持っていて、今の3年生が第1期生。そういうことを考えながらわれわれも努力しているが、いつもそれが成功につながるとは限らない。でも、努力を忘れてはいけないと思う。かえって野洲と当たったことで、この負けがわれわれの今後の指導に大きなプラスになる。常にチャレンジしていかなければと思っている。【adidas】シューズケース【adidas】F10+TRXTF銀青【adidas】リュックサックLサイズ