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カテゴリ:医学
糖尿病、負の烙印解消へ ――「本人のせい」と追い詰めない
今日のポイント▶▶▶ 患者中心の「治療サイクル」を 糖尿病には不摂生、食べ過ぎ、運動不足など否定的なイメージがこびりつき、生活習慣病という用語が、それに拍車をかけます。同じ生活をして発病しない人もいますが、「患者本人のだらしない生活が原因ではないか」という負の烙印(スティグマ)が広まっているために、患者は前向きな治療から遠ざかり、時として周囲に病気を隠すにいたります。関係者は、こうしたスティグマの解消に向けた取り組みをスタートさせました。
自尊心の低下や自己否定 治療に悪影響
関西電力病院(大阪市)の糖尿病・内分泌代謝センターの田中永昭部長は「糖尿病に関する誤解が依然多い」と嘆きます。 例えば、食べ過ぎ、運動不足という認識です。熊本県立大学の報告では、2型糖尿病の人は食事によるエネルギー消費量も健常人と変わらない。平均余命も差がなくなり「適切に治療を続けなければ人生の目標を達成できる」と田中さんは力説します。 田中さんらが、糖尿病患者のスティグマを調査した研究結果があります。 生命保険に入れなかったり、住宅ローンが借りられなかったりする「社会的すてぃぐな」、病状が改善しないと患者の落ち度のように言われる「治療中のスティグマ」、医師の指示を守れない自分をみじめな存在と思いこむ「自己スティグマ」の三つで回答を数値化し、比較しました。結果は歴然、糖尿病でない人が約6点に対して、糖尿病のある人は約12点と2倍になりました。 こうしたスティグマの影響で患者は差別や疎外感を感じ、仕事場や家庭で病気を隠す場合もあります。自尊心の低下や自己否定によってやる気を失い、隠れてものを食べたり、通院をやめたりします。治療への悪影響は明らかです。
上から目線の「療養指導」「教育入院」「順守率」
「医療やの言動もスティグマを生んでいた」と田中さん。 「模範的な患者像を設定し、できなければ患者の生、もっと頑張れと求めた。患者という属性だけで生きているわけではなく、個別の人生の中でそんな模範的な生活ができる人はいないのに」 スティグマの構造は、糖尿病に特有の用語にも現れています。 「療養指導」「教育入院」などのうえから教えを導くような表現があります。服薬の「順守率」など、模範的な患者像とのずれが強調される傾向もあります。 診察では「食べ過ぎましたか」などと言外に患者を責める言葉遣いも多くあります。糖尿病治療の指導が食事内容から日常活動量まで生活の隅々までに及ぶことも、患者を追い詰めます。 病名も問題です。1907年に日本内科学会で決まった病名ですが、尿に糖が出るのは症状の一つに過ぎず、病気の本質ではありません。 日本糖尿病教会の患者アンケートでは、自由記述欄に「不潔なイメージが不快」「排せつ物の名前は入っている」など強い抵抗感が吐露されました。
用語や病名の見直し 行政に働きかけ
同協会はこの問題を解消するプロジェクトを開始。用語変更や病名変更の必要性についても今後、関係する学会や行政に伝え、見直しを働きかけていく方針です。 田中さんは、用語変更は重要だとしつつ、「欧米では、患者と話しあって目標と計画を共有する『治療サイクル』という手法が主流。偏見解消と同時に、こうした動きを取り入れたい」と話す。 病状に加え、仕事やライフスタイル、暮らしぶり、経済的な背景などを評価します。その上で患者と相談し、どんなことからできそうか、短期で達成可能な目標を立てます。 医療側はそれを支援し、次のステップで達成率を評価しより良いやり方を提案し、新たな目標を立てます。このサイクルを回すことで、患者は目標達成を励みに、取り組みやすくなるといいます。
【医療ⅯedicalTreatment】聖教新聞2022.12.26 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
April 6, 2024 05:42:39 AM
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