|
カテゴリ:本・マンガ・アニメ(未分類)
「春になったら苺を摘みに」梨木香歩(新潮文庫 2006年3月1日発行)
2002年2月刊行されたものに文庫版のための書き下ろし(「五年後」)を加えて出版されたようです。著者初のエッセイ集。 エッセイなのであらすじは書きません。 梨木さんと言えば「裏庭」「西の魔女が死んだ」「りかさん」などが思い浮かびます。 「西の魔女が死んだ」に出てくるおばあさんも「りかさん」に出てくるおばあさんも背筋をぴんと伸ばし、智慧があって、生活の達人と言うか何とも格好良いのですよ。 また「からくりからくさ」に出てくるような女性(オーナーは「りかさん」の所有者なのです)たちの共同生活にもその規則正しさや智慧が受け継がれている。 その原典をエッセイ「春になったら苺を摘みに」に感じました。 ”K・・”(梨木さん)が学生時代に生活した英国S・ワーデンの下宿屋。 そこの女主人ウエスト夫人の懐の深さと言ったら、昨日刑務所から出てきた元犯罪者を下宿させるほど。 信仰心は厚くても決して他人に押し付けないクウェーカー信者。 ボランティア精神にあふれ、行動力のある人たちが多く住むS・ワーデン。 その中でも自分たちと価値観や道徳観が異なる人々を受け入れることは困難なこと。 誰もが引き受けなかった人々をも受け入れるウエスト夫人。 とても世話焼きなのに、でも適度な距離感も取れる人。 今まで読んだ梨木さんの作品に出てきたおばあさんは漠然と梨木さんに近い人、きっと梨木さん本人のおばあさんがこんな人なのだろうな・・・と思っていましたが、エッセイを読んでからはウエスト夫人の影響がかなりあったのではないかと思うようになりました また「からくりからくさ」の共同生活の雰囲気はウエスト夫人の下宿屋にもあった雰囲気なのではないかと思います。 例えば「からくりからくさ」の作中、日本人形だったり、草木染だったり日本的なものが多く登場するのですが、どの作品にもどことなく漂う日本ではない感じ(自分が所属するものとは異なると言った方が良いかもしれません)、何世代にも亘る長い時間のゆったりした流れが確実に存在する感じがあります。 それはもちろん梨木さんが日本にいるときに獲得したものも多いとは思いますがやはりウエスト夫人との生活や海外での生活も大きな影響を与えているのではないかと思いました。 エッセイの中で出てくる価値観の異なる下宿人たち(梨木さんも含めて)。 価値観そのものを受け入れることは出来なくても違いを認識することが大切なようです。 間違った認識は質さなければならない。決して受け入れることの出来ない習慣を受け入れる必要はない。違いを認める。 ウエスト夫人の下宿をでてからの生活や旅、夫人との交流や手紙についても語られています。 どれも淡々と書かれてます。少し緊張しているのだけど何となく温かい。古いけど手入れが行き届いた家にいるような心地です。 何の下地が無くても読めますがやはり この辺り読んでからの方が楽しめるように思う。それぞれの主人公の年齢にあわせ、「りかさん」は小中学生、「からくりからくさ」はもう少し大人の読者に向けて書かれている様に思う。でも男性より女性の方が理解しやすいかも。 おばあさんがとても魅力的。孫娘の心の成長が良いです。題名から分かる通り少し寂しい結末です。迷いや悩み多い小中学生の方に。何かヒントが得られるかもしれません。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2006年07月26日 12時03分05秒
コメント(0) | コメントを書く
[本・マンガ・アニメ(未分類)] カテゴリの最新記事
|