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「月の裏側」恩田陸(幻冬舎文庫・平成14年8月25日初版発行)
「ようこそ、箭納倉へ」 駅のロータリーで大手レコード会社プロデューサー塚原多聞は、大学時代の恩師・三隅協一郎に迎えられた。 箭納倉は有名な水郷都市。掘割には白い法被を着た船頭が何人か川下りのお客を待ちながらタバコをふかしている。 湿地だった土地を掘り積み上げ住居にし掘ったところを遊水地として利用していた掘割。 かつてその地にあった箭納倉城は自然の川と人口の堀を使い三重の堀で守られた「水の城」として名を馳せていた。どんなに大雨が降っても溢れず精密機械とも評される箭納倉の掘割は現在も機能している。 その箭納倉で連続して起こった女性失踪事件。 消えたのはいずれも掘割に面した家に住んでいた老女だったが何故か失踪後数日でひょっこり戻ってきている。失踪中の記憶は無い。 N日本新聞福岡支社箭納倉支部長・高安則久が失踪事件の三人をインタビューしたテープを携えて協一郎と多聞の下に訪れる。 三年前に箭納倉にやってきた高安が最初に遭遇した事件が失踪事件。その時失踪して戻ってきたのは協一郎の弟夫婦だった。 高安のテープを聴き、底に流れるボーッボーッと鳴る低い音に気づく多聞。聞き覚えのある音だがなんだったか? 一人目、二人目と聞こえた音だが、三人目のインタビューでは聞こえず少しホッとする三人。 しかし三人の元失踪者には全くと言っていいほど恐怖感が感じられない。 協一郎の家に戻ると鍵が開いている。誰が? 多聞が協一郎に続き恐る恐る入っていくと感じる違和感。 ”えっ?なんなんだ、この部屋は?” そこには七年前に京都の老舗料亭に嫁いだ協一郎の娘の藍子が立っていた。 お互いの近況を語り藍子の土産で夕食を済ませた後、宿をとっていた藍子をホテルまで送るよう頼まれる多聞。 途中で多聞が藍子を見たときに感じた違和感「びしょぬれの部屋」について話すと、多分それと同じものを藍子も中学生の頃に一度見たことがあるという。 藍子を送り、協一郎の家に戻った多聞は猫の白雨が持って帰った土産を見て悲鳴を上げる。 三和土に白雨が吐き出したものは・・・ 翌日協一郎の隣人が失踪。 隣家に来て気づいたヘルパーに頼まれ一緒に交番に事情を話に出向く協一郎。 やってきた藍子に隣人の失踪について説明をした多聞は藍子にここ箭納倉で連続失踪事件が起きていることをはなし、藍子の叔父夫婦の失踪事件について尋ねる。戻ってきた叔父夫婦にも会ったと言う藍子。しかし戻ってきた叔父夫婦は「そっくりだけど、にせものよ」 そこに戻ってくる白雨。白雨は以前叔父夫婦飼っていた白秋の子ども。 白秋は叔父夫婦の失踪中しばらく行方がわからなかった。 引っ越しでペットを飼えなくなった叔父夫婦に代わり当時東京に住んでいた協一郎に引き取られた白秋は何匹か子猫を生んだ後死んだ。 可愛がっていた協一郎と藍子は白秋を火葬にしたが焼却炉にはタールのような黒い液体が残っていただけだった・・・ 図書館での出来事。白雨の向かった先。無意識に全く同じ行動をとる人々。明けない梅雨。 高安の前任者の残していた日誌。以前から”あれ”に気づいていた小林武雄。 低音の正体とは?藍子が見た隣家での物体。高安が向かった「農協倉庫」にあったものとは? 失踪の真実を探る四人を見張る何物か・・・うぉーんと響く音。 そして意外な?結末。 多聞ではないですが協一郎の掘割についての講義?は中々じれったかったのですが後で読み返すと何故丁寧に解説が入ったのか納得です。 途中までいつ「盗まれる」かとかなり緊迫した雰囲気だったり(白秋の火葬の話とか白雨の持ってきたものとか図書館の場面は中々怖かった)、取り残された四人の憔悴がもっと恐ろしい結末を予想させていたのですが、意外と最後にあっさり「盗まれる」結末だったのでホッとするような感じ。藤子・F・不二夫のマンガを思い出したりして・・・(町中吸血鬼になってしまう話。題名は忘れてしまいましたが) 小林武雄の行動からまあ何となく予想は出来たのですが・・・ 水は人間にとって無いと生きていけないし、役立つものでもあり、恐怖の対象でもある。 水の持つ何ともいえない恐怖感がますます怖くしていたと思うのですが結末が・・・だったのでむしろ母なる水だったのか?と思ったり。 途中出てきた文学しりとり。もうこの人は本当に本好きだなあと思いつつも、「動く標的」ってもしや高橋留美子のマンガですか?と読みながら突っ込んだり。 協一郎の最初の講義を読み終えたら、後は一気読み。梅雨の頃の夜に読めば恐怖倍増だったかも。 読んでいる間中、何故か思い出していた天沢退二郎 作中で藍子が連続失踪事件で思い出したという「盗まれた街」が原作の映画 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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