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ラッコの映画生活

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2007.02.14
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カテゴリ:日本映画
でらしね
中原俊

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寸評:非常によく出来た映画。難を言うなら、すべてが少しずつ物足りない感じ。でもお薦め作品。

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脚本が小林政広ということなのでレンタルした。タイトル『でらしね』はフランス語で「根を抜かれた」という意味で、日本語なら「根なし草」という訳ででいいのかな?。画廊勤めの若い女がホームレスの画家の男に入れ込んで作品を描かせるという物語で、山梨の山中にこもって画家が絵を描く物語が、女が男に絵を描かせようとした経過や男の過去などの物語と平行して描かれ、最後に絵が完成することでひとつの物語として終結する。寸評に書いたように、物語、登場人物のキャラクター設定、役者の演技、撮影や編集、そうしたそれぞれが各80点の出来で、結果として全体の完成度は70点程度になっていると言ったらよいか。でもなかなか良くできていて、見せてくれるし、好きな映画でもある。ホームレスの描き方には小林政広の社会的な目も感じられる。

(以下ネタバレ)
この映画、脇役も含めて主な登場人物は5人。ホームレス画家水木譲司(奥田瑛二)、画商の橘今日子(黒沢あすか)、彼女が勤める画商社長の岡本光太郎(益岡徹)、ホームレス仲間の赤ちゃんと黄ちゃん(三谷昇、田鍋謙一郎)。

映画の一つに軸は、時間的にはより後で、これを映画の基本的時間の流れ、あるいは現在時制としてよいのだろう。一人の画家が山梨山中の旅館に泊まり、そこに画商の女が来て絵を描くように促し、別の方の軸の回想的シーンの挿入でこの画家が今は女を描かなくなっていることを観客は知らされているのだけれど、その彼が画商の女今日子に裸を見せるように頼み、やがて彼女が彼のヌードモデルとなり、約束の50号以上の大作を森の中で彼女を裸にして描くことで完成し、病身で倒れた画家を彼女が抱き起こし、肉体的に結ばれる。帰り道に湖に面するパーキングエリアに車を停め、湖面に向かったベンチで画家は対岸の山を見つめ、今なら「山が描ける」と今日子に画材を要求するが、彼女が車から画材を持ってベンチに戻ったとき画家は死んでいた。

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別の時間軸の方は上に書いた主要な軸の物語に至るまでを描くのだが、フラッシュバックと言うにはそれぞれ長く挿入される。画商岡本の愛人でもある今日子はホームレス画家水木の絵に出会い才能を感じた。水木は「青ちゃん」と呼ばれ、仲間の「赤ちゃん」と「黄ちゃん」が路上で彼が段ボールに描いた絵を売っていた。水木を売り出そうという計画を今日子は社長岡本に提案するが、彼は協力はできないと言う。彼女は私財を投げうって企画を進める。

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実は岡本は水木を知っていたことがやがて明かされる。水木譲司は学生時代から「池之端のエゴン・シーレ」と呼ばれ、岡本の言葉によれば「デッサンはシーレより上だったかも知れない」ほどの天才画家だった。女をモデルとしてヌードを描き、肉体関係ももち、そして描き終わる女を捨てる。岡本の恋人も同じように捨てられ、自殺した。主要時間軸の中で水木が今日子に過去を語るシーン回想として、女が裸でポーズをとり、水木はデッサンをし、画家は手しか写らないが、画家がモデルを見る視線のためなのだろうか?、モデルの女はやがて恍惚として悶える映像が挿入される。

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水木はある頃からまともに絵を描かなくなっていたらしいが、仕事(サラリーマン?)も家庭もズタズタだったらしい。しかしかつて岡本の恋人を自殺に追いやった頃からはずいぶん年月があるはずで、その間の事情は説明されない。たぶん絵を描きたい欲求と描けない自分と生活のための仕事や家庭など、その葛藤なのだろう。しかし半年前仕事探しをしていたある日、雨宿りに飛び込んだ画廊で河鍋暁斎の絵を目にして、絵を描きたいという欲求に襲われる。彼は家族を捨ててホームレスとなり、段ボールに描きたい絵を描いては、たまたま知り合った赤ちゃんと黄ちゃんと組んで、自分が描き、2人が路上で売るという生活をすることになったのだった。

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今日子は最初岡本が水木を知っていることは知らない。水木の絵に才能を感じ、自分の仕事として彼を売り出したいと思った。今日子は岡本に画商としての知識を教えられた。同時に彼の愛人にもなり、いわば彼女は仕事においても女としても岡本の従属物、あるいは所有物だった。岡本はそういう男として描かれる。だから彼女はその束縛から精神的に自由になりたかったのだろう。画商として独り立ちすることにはそういう意味がたぶんあった。50号以上の大作を1枚描くという要求を水木に一度は承諾させるまでにはこぎ着ける。水木は肺ガンのために倒れて病院に担ぎ込まれるが、彼は病院を抜け出し、結局彼は酒に溺れるだけだ。

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ホームレス3人組だった赤ちゃんと黄ちゃんは、水木(青ちゃん)に去られ、国に食わせてもらおうと、コンビニに忍び込み、自ら通報して捕まる。このコンビニはかつて赤ちゃんの店だったが、大手企業の攻勢で倒産し、乗っ取られていたのだ。個人商店の経営を食い物にする大資本の論理への批判。黄ちゃんの方はかつては警察官だったらしい。また食事の配給に列を成す(たぶん)本物のホームレス達の映像も挿入される。人間らしく生きられなくなった社会への批判は脚本の小林政広の主張だろう。無一文の水木が3人仲間の住処に戻ると、2人は逮捕されたから彼らの巣はすでに撤去されていた。そんな彼を探しまわっていた今日子が発見し、彼は絵を描かせてくれと訴えるが、ここで最初の時間軸の映画冒頭の山梨の旅館につながるわけだ。そして最後は過去と現在の2つの時間軸が合流し、今日子の催した水木の個展の場面となり、そこに既に出所した赤ちゃん、黄ちゃんが訪れ、彼女をモデルにした大作を眺める3人の後ろ姿で映画は終わる。

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この脚本は実によく書かれている。ある種ずる賢いと言ってもいいかも知れない。山梨の山中で絵を水木に描かせようとし、また彼の要求で全裸のモデルになっていく過程で、観客にはまだ知らされてないけれども、作中の今日子は既に過去の水木、岡本の彼女を自殺に追いやった事実を知っているのだ。一方水木は今日子が自分の過去を知っているかどうかは知らない。この物語は過去から現在へ1つの時間の流れで描いても映画は成立するだろうが、作中人物のそれぞれと観客が知っていることがそれぞれ違い、不確かにすることで、物語に見せるための牽引力を与えている。である以上各シーンでの役者がかもし出す雰囲気が重要となってくる。

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なかでもこの映画で重要なことの一つは画家水木の人物設定だろう。実際に絵を描く奥田瑛二は絵を描くシーンでの筆運びなどは、絵を描かない他の俳優よりは良かっただろう。精神的にうらぶれた水木を演じる奥田の演技もよい。でも画家としての面で奥田のものとされているある種のオーラに頼ったことが映画の失敗であった気がする。奥田のオーラは実のところ深いものではない。実は普通の人である奥田瑛二は、ある種の変人を自ら気取ることで自分に酔っているだけだ。その意味ではもっと役作りをしてこの役を演じる役者の方が望ましかったように思う。女画商橘今日子を演じた黒沢あすかは全体的に良い感じだが、最後に水木に身を任せるに至る心理を表現し切れていない。山中で水木が樹木などを描くシーンで、描く途中の紙面と描かれる樹木などが対比されるようにしつこく写されるが、このカメラはうるさいし、映画を安っぽくしていた。そんなこんなで、少しずつ不足のある要素の集合で出来た映画で、ただ2つの時間軸の交差する脚本力によって見せてくれる映画だと思う。この脚本にもっと適切な配役と演出が与えられたら、きっとかなりの名作になっていたことだろう。

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Last updated  2007.02.21 19:56:03
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