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ラッコの映画生活

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2007.02.24
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カテゴリ:フランス映画
SUR MES LEVRES
Jacques Audiard
(115min)

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寸評:たんなるサスペンス調のラブストーリーである以上に、人間の孤独と愛を深く描いた名作。

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土地開発会社で働くOLカルラ(エマニュエル・ドゥヴォス)は難聴。補聴器をつければ電話の応対などもできるから、そこそこ社会に順応して生きている。これが男好きのする美女だったりすれば話は違ってくるんだろうけれど、そういう美女ではない。耳が不自由だから話している人の唇を見て会話を読み取る読唇術が出来る。だからオフィスや喧騒の食堂にいても他人の会話がわかっちゃう。それで人が陰で何言ってるのかもわかっちゃうから、ある意味人間不信っていうのもあるのかも知れない。自分に子供預けて浮気している女友達なんかを見てるせいもあるかも知れない。で結果として難聴と人間不信で自分の殻に籠り気味で生きている。オシャレして明るく生きればそれなりに魅力的で奇麗だとも思うんですが・・。仕事はテキパキとこなして、かなり能力もあるように見えるんだけれど、そんな彼女だからつまらない仕事しか与えてもらえなくって、せっかく乗り気でやってる仕事も男の同僚に奪われてしまったり。「どっちだって給料は変わらないでしょ」って上司には言われるのだけれど、他に何もない彼女の生活だから本当は責任ある仕事をしたいって欲求がある。なのに毎日単調な雑務ばかりだから、ある日彼女はオフィスでストレスのため気絶しちゃう。そうすると社長は「アシスタント雇ったらどう?」って提案。首とかになるのとは反対の状況。ある意味恵まれた環境と言ってもいいかも知れない。もしかしたら障害者を雇うと補助金とか何か出てるのかも知れませんね、よく分からないけど。

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それで彼女は職安にアシスタントを求人に行く。彼女は「25~30才男性」とか条件出すのだけれど、「性差別になるから男性限定はできない」って係員に言われて「じゃ歳は25で」とか。男に飢えていると言ったら言い過ぎだろうけれど、若い男性と日々仕事が一緒に出来たらいいだろうってぐらいの発想かも知れないし、30才、35才のオフィスの周囲の男性に嫌気がさしているということかも知れない。それでやって来たのは仮釈放中の青年ポール(ヴァンサン・カッセル)。殺しはしてないって言うのだけれど、まあチンピラのような生活をしてきたんでしょう。カルラは上司に「以前ゼロックスで働いていた」とか嘘つくのだけれど、実はコピー機やファックスの操作もよく知らない。でもそんなポールをカルラは雇ってのオフィスでの日々が始まる。住む所もなくオフィスに隠れて寝泊まりしていたのを知って、会社の物件の改装中の部屋を世話してやったりする。

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ポールは仮釈放中の身だから、毎週火曜(だったと思う)に保護監察官マッソンのもとに出頭しなければならないのだけれど、来なかったものだから保護監察官マッソンがオフィスに来たりするけれど、そうすると「私がポールを現場に行かせてしまった」とかかばったりする。金を取りにきたヤクザに殴る蹴るされてケガをすると介抱する。血のついた彼のシャツを捨てるために家に持ち帰るけれど、シャツの匂い嗅いで、身につけてみたり。でも結局ポールはヤクザのボスの経営するバーで働くことになる。

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(以下ネタバレ)
バーの仕事っていうのはカウンターでお酒作ったりっていうものなんだけれど、ここでやたらと彼の忙しさが描かれる。ほんとうに休む暇もなくこき使われる。それで段々解ってくるのは、実はポールとカルラは似た者だったということなんですね。カルラの方は、真っ当な会社とでも言えばいいでしょうか、そんな普通の社会の中でノケ者にされた存在であり、一方のポールはヤクザの世界でいいように使われる小者とでも言うか。どちらもそれぞれの社会の中で不遇な位置にあるというか。それでどちらもそれぞれの社会に一泡吹かせることを考える。もともと自分が担当していて外され、その仕事を奪った同僚の車から、カルラはポールに書類を盗ませる。その書類持って大事な説明会には自分が行って、怒る同僚に対しては横領的に金を使っていた証拠を提示して辞職に追い込む。ポールはボスのマルシャンの部屋を隣のビルの屋上から双眼鏡で覗かせ、読唇術で得た情報から取引のための組織の大金を盗み出そうとする。カルラにとっては同僚の仕事を自分の手に取りかえすとか、ポールにとっては大金を入手するとか、そういう実利的意味はあるのだけれど、どちらも自分の属する社会に対する復讐なんですね。カルラは問答無用のポールに寒空の下でビルの屋上から毎晩双眼鏡で窓を観察させられるわけだけれど、それはポールに対するストレートな愛とかではないですね。社会違えど同じ境遇にあるからこそ素人の彼女が犯罪的なことに関わっていく。カルラはオフィスでの仕事、つまり自分の世界にポールを引き込もうとするし、ポールはヤクザの犯罪の世界にカルラを引き込もうとするという意味でも同じ関係がなりたっている。それで一緒に活動をする中で男女的にも微妙に相手のことが気になり、惹かれていくんですね。

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物語の大詰めは、捕まってボス・マルシャンの部屋に監禁されたポールにカルラが懐中電灯で合図をし、消えた金を盗んだのはマルシャンだとするポールの計画をカルラが読唇術でポールの唇を読んで知り、それを実行してめでたく大金をせしめる。朝車で帰ってくるのはちょうど火曜なんですが、保護監察官の家の前に来ると監察官マッソンは妻殺しの容疑で警官に護送されるところ。2人に気付いて振返ったマッソンの唇に「妻を愛していた。でももう終わりだ。」とカルラは読むのだった。停めた車の中、カルラがポールの手を誘い、2人は激しく抱き合う中で映画は終わります。

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この映画の日本語タイトルは英訳題そのままの『リード・マイ・リップス』で、「私の唇を読んで」という意味でしょうか。フランス語の原題は『SUR MES LEVRES』。「MES LEVRES」は「my lips」で「私の唇」ですが、「SUR」は前置詞で英語の「on」のような意味で、「SUR MES LEVRES」と言うと、頬やオデコじゃなくって「唇に」キス、というような場合に使われます。物語が難聴の主人公の読唇術に関係するから「唇」という語を使ったと思いますが、それを外せば『唇にキスして』とも訳せるような題です。そういう意味でこの物語は、アウトサイダーである主人公カルラが真実の愛を求める物語と解釈してよいのではないでしょうか。だから決して長くはない最後の車内でのラブシーンはものすごく重みがあります。それまで社会にも人間関係にも、そして愛にも恵まれなかったカルラが、ここまで1時間50分で描かれた経緯の末にこの濃厚な愛の一時に至ったと見ると、人として生きることの孤独と愛が切実に胸に刺さってきます。

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副ストーリーとしての保護監察官マッソンの妻殺しに関しては、ただ主ストーリーだけでは映画として何処か物足りなくなるからの刺身のツマのようにも考えられますが、真実妻を愛した男の愛も最後には妻殺しにも至るという人の愛の現実を、カルラとポールの話に対比して描くことで、その直後に描かれるラストのラブシーンの2人の愛の絶対化、つまりは本当の意味でおめでたいハッピーエンドになることを避けているのだし、逆にだからこそ今一瞬の2人の愛が真実で深く避けられないものであることを強調していると思いました。

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余談ですがこの映画を見ていて思ったのは、我々は普通に受け入れていますが、ナレーションの不思議です。主人公は難聴で補聴器を外すと音のない世界にいるわけですが、映画の映像は外からの視点で彼女を撮っていながら、音は彼女の感覚である無音の世界であるという矛盾です。

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Last updated  2007.03.05 19:57:01
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