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ラッコの映画生活

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2008.05.13
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TROIS COULEURS: BLEU/BLANC/ROUGE
Krzysztof Kieslowski
(所有VHS)

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このブログを開設して約20ヵ月。350本ぐらいの映画作品についてレビューめいたものを書いてきた。映画にも色々な作品があるから、すべてに同じというわけではないけれど、自分の感じたこと、解釈したこと、調べたこと、それらを織り混ぜながら、ストーリーを追っていくというのが、ボクの基本スタイルかも知れない。映画鑑賞記録としての備忘録を兼ねつつ、読んで下さる方にご紹介できれば、と思っている。今回キェシロフスキの三部作『トリコロール 青の愛・白の愛・赤の愛』という、かなり好きな映画について書いていたら、三部作で互いの関連性があることもあって、ここまでに既に6ページを費やしてしまったが、本腰を入れて文章を構築しているわけではないから、色々と書きたいのに触れられなかったことがある。それらを、あまり脈絡など考えずに「蛇足」としてここに書いてみたい。

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この三部作を、つまりは最後の『赤』を見終わって、非常に気になってしかたのないことがあった。それは恋人に裏切られた失意の中で若い判事オーギュストが一度は捨てようとして、でもフェリーに乗るときには胸に抱えていた犬の運命だ。フェリー事故で救助されたのは三部作の登場人物6名と、乗員でバーテンの計7名。いったいあの可愛い犬はどうなってしまったのか。そのことに関して今回見て気付いた。『赤』の老判事(トランティニャン)と若い判事オーギュストは35年の時間を越えた生まれ代わりであり、分身でもある。過去を振り返ったフラッシュバックというのは映画によく描かれるが、そうではなくフラッシュフォワードなんてどうかなと思ったと監督はどこかで言っていた。主人公の過去の回想ではなく、若い方の判事オーギュストの物語として見れば、すでに老判事が過去として彼の人生を生きている(これは『ふたりのベロニカ』も同じ)。ヴァランティーヌに出会うことで最後だけは変わるのだけれど。犬を飼っていることも、ズボン吊りをしていることも、偶然開いた本の1ページと司法試験のことも、裏切る金髪の恋人にしても、その彼女にお祝に万年筆をもらうことも、すべてを監督は共通させている。ヴァランティーヌは時空を越えて、過去に老判事が出会ったはずで今は50才になった姿で老判事の夢に登場もし、映画の現在進行形の現在にオーギュストの出会うべき恋人としても登場する。ヴァランティーヌに出会ったことで人間不信の殻を割って老判事が最後に解放されるのは、割れたガラスから老判事が外の世界を見ているラストに象徴される。ガラスという殻は壊れた。ちなみに『デカローグ6』(愛に関する短いフィルム)ではそのガラス(殻)は破られなかった。判事の変化を期する出来事はヴァランティーヌを求めての自分自身での密告であり、それは殻の中から外界の人々を盗聴することをやめることでもあるのだけれど、その密告の手紙を近隣住民に書くとき、彼がかつて裏切りの恋人にもらい、終世使い続けてきた万年筆が使えず、鉛筆を使う。それはこの万年筆に象徴される裏切りの恋人からの自分が解放されたことの象徴ともとれるのだ。そしてリタの生んだ7匹の子犬。その1匹をヴァランティーヌに贈る。子犬とは新しい生命なのだけれど、これが実は若いオーギュストが飼っていた犬の代わりなのではないかということだ。つまりこの子犬が、若いオーギュストという老判事の分身と老判事自体を、同一の一人の人物に統合するのだ。こんな行き過ぎた深読みをすることで、オーギュストの犬の遭難したらしいことは納得しよう。

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赤の冒頭の電話でミッシェルはポーランドでカロルに助けられたことをヴァランティーヌに話す。かつて『白』の中では、パリのカロルは自分が不幸だから空ビン回収ボックスに上手くビンを入れられずに苦労する老婆を、いわばせせら笑う。しかしポーランドで実業家となったカロルは、かつて自分がパリの寒空の下で味わわされた境遇と同じ境遇のミッシェルを助けるゆとりを持っている。くどくど説明すれば、季節は春前らしいから、ポーランドはまだ極寒だろう。そこで自由化されたとは言っても旧共産国のポーランド。パスポートがなければホテルにも泊れないだろう。夜でフランス領事館も閉まってしまっている。だから寒空の下で一夜を明かさなければならないのは同じなのだ。キェシロフスキはこの三部作、順番通りに見てもよいし、1作だけ見ても良いし、順不同に見ても良いと言っている。しかしやはり三部作で、既に書いたように人物再登場の手法を用いた一種の『人間喜劇』(バルザック)で、だから『赤』なら『赤』を知った上でまた『白』を見るとまた新たに面白い。『白』のカロルのポーランドでの状況が、最初からドミニックへの復讐に燃える男ではなかったことが、この『赤』で知らされるエピソードからわかるのだ。ミッシェルを助けるという『赤』の象徴たる「友愛」を持てるほどにカロルが成長していたことがわかる。そしてそういう目で『白』を改めて見られるのだ。

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同様に既にどこかに書いたと思うが、赤い物や赤い光で映画全体を赤で統一した『赤』を見て知っていると、『青』を見ながらジュリーがリュシールの心の叫びに応じてピガールに出かけていくシーンの赤い色彩は、赤の気分、「友愛」の気分を観る者に想起させてくれる。そういう意味で、この三部作はあちらこちらと3作品を見返すと面白い映画だ。いちどきにというのではなくても、久しぶりに『白』だけ見るとか、『青』を見るとか、そういうことだ。どんな見方でも良いという監督の言葉を引用したが、でも短期間に3作品を見る順序としてのオススメは、『赤』→『白』→『青』→『白』→『赤』という順番かも知れない。

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『デカローグ』(『殺人に関する短いフィルム』や『愛に関する短いフィルム』を含む)以降の彼の作品を見ると、女性の髪の色には使いわけがされているように感じる。金髪の女性は軽薄であったり、真実の愛をあまり持っていなかったり、人間としての成長の程度がまだ低かったりだ。『青』と『赤』の主人公ジュリーもヴァランティーヌも(ふたりのベロニカも)金髪ではないが、『白』のドミニックは金髪だ。『青』の若い弁護士見習いは妻子ある男の愛人だけれど、彼女は金髪だし、『赤』の裏切り者の恋人は、現在時制のカリンも老判事の語るのも金髪だ。『赤』で老判事が盗聴しているホモの男の妻も金髪。老判事は「献身的に妻」と言ってはいるが、ヴァランティーヌが訪ねていったときに彼女を見る目は、夫への愛からではなく嫉妬の目として鋭く冷たい。(どこまでキェシロフスキの遺稿かはわからないが)『美しき運命の傷痕』の三姉妹のいちばん下のアンヌ(マリー・ジラン)の愛人の教授の妻も確か金髪だった。彼女も夫を愛しているというよりも、良き夫として確保するのが目的のようであり、だからこそ教授も若い愛人を作ったのだろう。『デカローグ2』『9』の不倫妻、『7』のエゴな母親、『6』(愛に関する短いフィルム)のマグダも金髪だったと思う。一方『4』の娘アンカは金髪ではない。

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細部のことで言えば『赤』のボーリングのシーン。なぜこのことを書くかと言えば、「あの割れたグラスと吸いかけのタバコの映像が意味不明」と書いているブログを目にしたからだ。誘われて気分転換にボーリングに行ったヴァランティーヌ。観客は老判事の盗聴でその晩オーギュストとカリンもボーリングに行くことを知らされている。また赤と白のパッケージのタバコ・マールボロが言わばオーギュストを象徴していることも気付いているはずだ。ヴァランティーヌのレーンからカメラは横にパンして数レーン先の小テーブルで止まる。そこには飲みかけのビールの入った割れたグラス、吸いかけで灰皿から煙の立ちのぼるタバコ、握り潰されたマールボロの箱、この荒んだ(?)ような小物による情景は、まだ実際には映画では描かれてはいないが、カリンとオーギュストの破局を暗示しているのだ。ちょうどそこに流される音楽も「他人の妻を盗ってはならない」のテーマだ。

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音楽と言えば『赤』で獣医費用の精算金をヴァランティーヌが受け取るとき、お金はブッデンマイヤーのLPの上に置かれていた。彼女はレコード店で同じCDを視聴して買おうとするが、これは偶然(つまりは必然)の一つと捉えることも出来るが、ヴァランティーヌが老判事に関心を持って同じ音楽を聴こうとしたということかも知れない。この会見の後ヴァランティーヌは「哀れな人」と言って去るけれど、その帰り道涙を流す彼女はこの哀れで孤独な老判事に何かを感じているから、そんな老判事がいったいどんな音楽を聴いているのか知りたいと思うのは当然だろう。

こんな風ふ細部に注目して鑑賞するのは面白いし、深読みも楽しい作品なのだけれど、この辺でそろそろやめましょうね。

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三部作『トリコロール』まえがき
『トリコロール 青の愛』
『トリコロール 白の愛』
『トリコロール 赤の愛』




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Last updated  2008.05.21 05:02:29
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