がんばりましょうがんばりましょう国センの指導のもと、まずしなければならない事の一つとして、期日が間近に迫った口座引き落としの差し止めがあった。 契約しているローン会社は聞きなれない名前だった。国センの担当者は、おそらくもとは業者と同じ経営か、業者とグルになっている可能性が大きいと言う。いずれにしても、書類を見ただけで問題があると分かるこのような契約のローンを、いとも簡単に組んでしまう事については、国センから指導が入ることになる。しかしその前に電話でかまわないから、とにかく口座引き落としの差し止めを伝えるようにとの事だった。 ローン会社に電話を掛けて驚いた。 「はぁい」 化粧の濃い女の子が肩とあごで受話器をはさみながらマニキュアを塗っているという、B級ドラマのワンシーンが思い浮かんだ。 「あの、○○信販ですか?」 「そうですけどぉ?」 どういう社員教育をしてるんだ?ろくな会社ではないとは思っていたが、あまりのことにムカムカしてくる。 気を沈めて、今回の契約をクーリングオフする手続きをとっているので口座引き落としを差し止めるように申し出た。 「はぁ…。そうですかぁ。」 「あの、大丈夫ですか?」 「はぁ…。」 だめだ。 これは話の意味がぜんぜん分かっていない。電話を切ったあとも不安が消えない。 引き落としを指定していた口座は、幸いその他には利用していない私名義の口座だった。そこで全額引き出して残高をなくし、引き落としたくても落とせないようにした。 次に、最初に相談した消センに窓口を切り替えた事を電話で伝えて、国セン担当者の言葉を胸に思い浮かべた。 「クーリングオフを目指して、がんばりましょう。」 大丈夫。うまくいく。そう自分に言い聞かせた。 数日後。 国センが業者に連絡を取った上で電話をくれた。 「代理人としてクーリングオフをはっきりと主張しました。出方によっては裁判も辞さないと伝えましたので。」 担当者のきっぱりとした態度が心強かった。とりあえずはこちらの意思を伝えたので、相手からの反応を待つということだった。 数日後の夕方。 電話の呼び出し音に、国センからだろうとはやる胸を押さえながら受話器をとった。が、聞こえてきた声に一瞬戸惑った。 あの業者の“担当の男”の声だった。 もくじへ戻る ジャンル別一覧
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