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お茶かけごはん と ねこまんま

お茶かけごはん と ねこまんま

エピローグ

エピローグ


「クーリングオフという事で決着しました。業者側には申し開きできる事はなにもないので、当然ですけどね。返金されないなどの問題があったら、またお電話ください。」

国センからの電話をもらって数日後、無事私の口座に払った分の金額が振り込まれてきた。
国センにお礼の電話を掛けて、一件落着。
これで晴れて悪徳業者と縁が切れた。
―と、思ったが。

その筋に流通している、カモリストなるものがあるという。
一度悪徳の罠に掛かるとそのリストに名前が載り、次から次へとその手の業者から電話が掛かってくる。
「こいつは食い付いてくるぞ」
ということらしい。
実際、こういう手口に引っかかる人は何度でも騙され、何社とも契約をしてしまっている場合があるようだ。
「今度こそ大丈夫かもしれない。」
と思ってしまうのは、その人の持っている宿業とでもいうのだろうか。

私のところへも、この件以来ひっきりなしに怪しげな会社からの電話が掛かってくるようになった。

「事業拡大にともない、お仕事をして下さる方を探しています。」

最初のうちは、
「すみません、今手が離せないので。」「うちは、結構です。」
などと言って電話を切っていたが、ひどい時には一日3件も掛かってくるようになった。
どうもこれでは埒が明かない。

そこである日、芝居を打ってみた。

「そうですか。お宅様は今までにお取引はありませんでしたよね?では、見積もりをいたしますので、お仕事の簡単な仕様をfaxで送ってくださいますか?」

すると大抵

「あ、いえ、そういう話ではないんですが…。」

とくる。

「申しわけありませんが、うちはそういう形でしかお仕事をお請けできないんですよ。」

と言って終わり。

心配ない。
「では、仕様書を送ります。」と話が続く事はありえない。
ちゃんとした会社が、見も知らぬ相手にいきなり電話で仕事を依頼するなんてことは考えられないからだ。
偶然かどうか、こう対応するようになってから目に見えて電話は少なくなり、そのうち滅多に掛かる事はなくなった。

向こうはこちらの事を、電話番号とひょっとしたら住所・性別・年齢以外に、悪徳業者に騙された事があるお人よしだという事くらいしか知らないのだ。
その後経験と訓練を積んで、今やバリバリのSOHOワーカーだという事を、何で知り得ようか。
そして、それがお芝居であるという事も。
ハッタリかまして気取るのも、たまには楽しいものだ。

かくして、私と悪徳業者との攻防は終焉を迎えたのであった。


一つ付け加えるとすれば、夫はこの一件を事が起きている最中も、そして今も、これから先も、知る事はないだろうということだ。
夫の信頼を逆手にとって、悪い妻である。


(vs悪徳業者 終わり)



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