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2016年09月10日
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カテゴリ:四季感慨
我が国ものづくりの様変わり…客業生産に向かうか?(記事更新追加

 我が国はかっては工業大国といわれた。現在も「ものづくり大国」だと思っている人は少なくない。しかし、我が国のものづくりの代表である電機業界は、ソニーもパナソニックもシャープも大赤字となり、特にテレビ事業が厳しく、東芝はテレビ事業から撤退すると発表した。そして、欧州危機を背景にした円高(1=77円台)進行は輸出製造業に深刻な影響を及ぼし、自動車各社では1円円高で850億円減益となるということである。
 日本自動車工業会豊田章男会長(トヨタ自動車社長)は2012年6月4日の記者会見で「この超円高の状態が続けば日本の製造業は崩壊する」と改めて危機感を表明したと、次のように伝えた。最近の円高については「この超円高下では理屈で言えば日本でものづくりを続けることはあり得ない」と強調、その上で「もうかればいいという考えで100万台の国内生産を海外に移管したら一瞬にして20万人の雇用が失われる」とし、「自動車産業の影響力の大きさを知っているからこそ、石にすがりついても国内生産を維持している」と話し、政府に自動車産業を軸にした製造業強化の取り組みを訴えたと報じた。自動車産業も政府の強化策を要する時代となっている。
ものづくりを懸命に頑張っても、ワーキングプアーとなるだけでは、ものづくりは崩壊する。どうしてこういうことになったのか。ものづくりの経緯について見ることが、その理由を考えるのに役立つだろう。筆者は客業生産でないものづくりは厳しくなるばかりと思って、事態を憂慮している。
工業の今、昔: 経産省「日本の工業」をベースに、筆者が加筆したもの
●約86年前(1930年代頃)は、繊維工業が盛ん。
●約60年から46年前(1950年代半ば~1970年代前半)は、重化学工業が発展。高度成長時代といわれた。
●約46年前(1970年代)は、工業の中心は重化学工業などの重厚長大型工業から軽薄短小型工業の組立加工型工業(機械工業)に変わっていった。
1973年アメリカのダニエル・ベルは「脱工業社会の到来」を刊行。ダニエル・ベルの言う『脱工業化社会』とは、物理的な生産物(物的な財)に対する需要が減少して、知識的な生産物(知的な財)に対する需要が増加している知識社会(情報社会)のことである。
●約36年前(1980年代)は、円高の進行で日本の工場は海外へ移転し、日本の工業が将来衰退するという不安が生まれ、産業の空洞化が問題となる。
1985年に堺屋太一は「知価革命」を刊行し、工業社会が終わると説いた。
1990年頃、工業製品はコモディティ化による価格崩壊が始まった。
1993年アメリカのマイケル・ハマーは著書「リエンジニアリング革命」を刊行。脱コンベアの動きが起こった。
1995年頃より「工業生産」の代わりに「ものづくり」と称するようになった。
1998年筆者は「工業生産(Industry Production)」ではなく、「客業生産(Ordustry
Orduction)」であるべきだと提唱。(注記:Ordustry Orductionは2004年に造語したもの)
●約]6年前(2000年代)は、組立加工型の機械工業が発達し、自動車や半導体・電子部品の生産が盛ん。
2001年4月、ものづくり大学開学。
2002年より経産省は毎年「ものづくり白書」を発表するようになった。
2002年5月、筆者はアパレルビジネスマガジン誌に「常識守って消滅? 常識破って新生! 縫製品製造業が問われる存続」と題して寄稿し、その中で客業個産という常識破りを説いた。日本の縫製業界はどう進むべきかについて私見29項として示した。
2004年5月、「客業生産(Ordustry)」に関する理論を説く河内保二著書「チェックリストによる少量・短納期生産モデル縫製工場ガイド」(繊維流通研究会刊)を出版した。
2004年12 月、EU 衣服・繊維協会(EURATEX)は、EU 繊維・衣服産業2020 年ビジョンにおいて、量産脱却、コモディティ化克服のカスタマイズド・マニュファクチャリングのコンセプトを示した。
2005年7月、EUで「工業生産」から「カスタマイゼーションのものづくり」を目指す開発プロジェクトを発表。
2005年11月、経産省は「ものづくり国家ビジョン」を公表。従来の工業としての製造パラダイムから「ものづくりパラダイム」への転換を求めるもので、そこには新たな価値創造が目指され、サステナブルであるため「物質負荷・人間負荷」をかけず、顧客・消費者の満足を高めることにより実現を図ると提言している。
プレジデント誌2006年5.15号で東京大学大学院経済学研究科 藤本隆宏教授は、ものづくりは「擦り合わせ・インテグラル型」の日本、「組み合わせ・モジュール型」のアメリカと論じた。
2008年9月ユニクロを展開するファーストリテイリング社は同社の経営理念「FR
WAY」を発表し、その中心的ステートメントを「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」とした。この理念を読んで、その内容が筆者が提唱する客業生産の理念(特に2002年5月発表の内容)とよく一致していることに気づかされ、心強いものを感じた。2009年9月1日、消費者庁発足。2010年5月1日、日銀西村清彦副総裁は日本のものづくりは「組み合わせ型」でなく「摺り合わせ型」でと講演した。2011年 ドイツでは(正確には2011年のハノーファー・メッセの見本市では)、「インダストリー4.0」、すなわち第4の産業革命のコンセプトが生まれている。2011年6月17日、ものづくりが「摺り合わせ型」から「組み合わせ型」に変わっていくと、中ノ森清訓氏は記した。2012年は、工業生産が長期に減少を続けており、半導体工業や液晶テレビ工業が大赤字となり、自動車も楽観を許さない状態となった。2012年4月、野口悠紀雄早大ファイナンス総合研究所顧問は著書「製造業が日本を滅ぼす」(ダイヤモンド社刊)を発行し、円安・輸出頼みを捨て、新たな成長モデル(付加価値の高いサービス産業)を確立せよと説いた。いまや製造業の国内総生産(GDP)比率は25%を切り、7割強は広義のサービス産業が占める。日本はサービスで動いている国なのだと論じられている。そしてものづくりは、テレビ事業で「摺り合わせ型」の垂直統合モデルは敗北したのであると結論している。三菱重工業大宮英明社長は5月2日、ものづくり再生に関して、コモディティ化を超えて独創性、使い勝手で活路と語った。5月7日には、自動車業界のものづくりについて、特に電気自動車時代を目前にして、「組み合わせ型」への転換が進められていると、フリージャーナリスト井上久男氏は「トヨタの革新は本物か」と題して報じた。そして、モジュール化大競争時代到来すと説くのは、モノづくり経営研究所イマジン 日野三十四代表。2011年に独フォルクスワーゲン(VW)が世界第2位に躍進した要因はモジュラー・ツールキット戦略であり、VWは2018年に世界一になると宣言した。それ以降、トヨタ自動車がトヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー(TNGA)、日産自動車が「日産CMF」(CMFはコモン・モジュール・ファミリー)を相次いで発表し、モジュール化の流れに追随した。擦り合わせ型製品の代表といわれた自動車が急速にモジュラー型製品になろうとしている。電機、産機、素材、化学などの一般の製品にもモジュール化競争の時代が到来する。6月5日公表された2012年版ものづくり白書で、政府がものづくり基盤技術の振興に関して講じた施策に関して報告し、日本のものづくりはモジュール型への対応を強く求められていると記している。

2013年は、アベノミクスの初年度であり、TPP交渉に関心が集まった。2013年4月にドイツが国を挙げたプロジェクトとして「インダストリー4.0」を提唱したもので、第4次産業革命とも呼ばれる。ドイツ政府が2013年に「インダストリー4.0」、すなわち「第4の産業革命」を推進するという構想をぶち上げたことで、世界的注目を集めた。2013年ものづくり白書では、貿易赤字が拡大する中で、「輸出を支えるための国内生産基盤の維持」や、グローバルニッチトップ企業やベンチャー企業等の「新しい輸出の担い手の育成」、さらには、「グローバル需要の取り込み、経常収支維持のための海外収益還元促進」等といった課題と今後の方向性について記述した。

2014年はアベノミクス2年目となり、成長戦略に関心が向けられた。2014年ものづくり白書では、 IoT(Internet of Things)の進展により、ものづくり産業も大きな変革を遂げている中、製造業の新たなビジネスモデルへの対応は重要な課題となっているとし、インダストリー4.0 等の各国の動きも見据え、我が国ものづくり産業の今後の方向性を検討した。

2015年は、成長戦略どこへ行ったか―働き方改革に注目。格差拡大が指摘される。インダストリー4.0への記事が出始める。2015年ものづくり白書では、付加価値が「もの」そのものから、「サービス」「ソリューション」へと移る中、ものづくり企業には、市場変化に応じていち早く経営革新を進め、ものづくりを通じて価値づくりを進める「ものづくり+企業」となること等について分析が行われた。

●本年(2016年)4月28日、経済産業省は、ドイツ経済エネルギー省との間で、IoT/インダストリー4.0協力に係る共同声明への署名を行った。今後、この共同声明に基づき、IoT/インダストリー4.0に関する様々な課題の解決に向けて、日独両国間で連携して行く。2016年ものづくり白書では、我が国製造業の状況、IoTやビッグデータ、AIを始めとする第4次産業革命に対応する日本企業の状況や国内強靭化に対する取組、市場の変化に応じて経営革新を進め始めた製造企業の状況等について述べている。
インダストリー4.0は、日独の協力も盛んで、2017年にハノーファーで開催される国際情報通信技術見本市「CeBIT」では、パートナーカントリーとして日本が指名された。

 日本ではいまだに「ものづくりの国」という通念が定着している。日本は、「ものづくりに強い国」ではあっても、もはや「ものづくりの国」とは言えないことは、新興国の追い上げ、円高基調、空洞化等の現実から、明らかであると論じられている。工業の生産はあくまで顧客のために行われるわけで、生産は「客業(Oedustry)」なのであり、コモディティ化の毒を防ぎ、量産・量廃の害をなくすために「個産」とすることが迫られていると筆者は考えている。





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最終更新日  2016年09月11日 08時48分35秒



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