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いつものひとりごと

いつものひとりごと

第四話

☆第四話☆




あれから5年。

僕はあの時公園で出合った女性と結婚した。
そして、かわいらしい女の子が生まれたんだ。

2歳になる娘は明るく元気に育っている。

今僕はとても幸せだ。
この幸せは『彼女』がくれたものだと思っている・・・




******************************


あの日。
事故を知った僕は当てもなく夜の街を走り回った。
『彼女』を見つけるために。

初めて会ったバス停近くの花壇、いくつものビジネスホテルを探し、
一緒に行ったパスタ屋さんも覗いてみた。

しかし『彼女』はどこにもいなかった。



途方にくれてアパートに戻り、ぼんやりとアルバムを開いた。
『彼女』が一枚一枚興味深く見ていた写真達。

そして一枚の写真を見つけた。

そこは女性(今は僕の妻だが)から渡された、
僕のお気に入りの写真が収まっていたスペースだった。

僕は目を疑った。
アルバムから写真を取り出して穴のあくほど眺めていた。

場所は病室のようだ。写真には3人の姿。
1人は『彼女』だった。
もう1人は妻・・・?
けど今よりも少し歳を取っている。そして疲れ果てた笑顔。
2人は仲良さそうに寄り添って写っていた。

そして。

最後の1人は、ベッドに寝ている。たくさんの管を体中につけられて。
白髪交じりの男性。目は開いていないが、僕に間違いなかった。

ベッドの横にはたくさんの写真が並べてあった。
3人で仲良く写っているもの。
『彼女』であろう、赤ん坊の写真。
それから・・・今手元にある・・・僕のお気に入りの写真。



頭がフラフラした。
写真の裏側には、妻の字でこう記されていた。

『結婚15周年☆
 ~パパ、あの事故からもう20年ね。
 一度は回復したあなたもまた長い長い眠りについてしまった。
 赤ん坊だった娘ももう15歳になるのよ。
 私もすっかりおばさんだわ。

 あの事故がなければ出会っていなかった私たちだけど・・・
 あの事故のせいであなたは眠り続けている。
 あなたのいない15年は長すぎました。
 早く逢いたい~』




僕は女性の働く病院へ走った。
そしてプロポーズをしたんだ。


******************************




あの、病室での写真はいつの間にかなくなってしまった。
いったい何処へ・・・?

なんにせよ、僕らはあの、病室での写真とは違う未来に向かっている。
『彼女』が僕らを救ってくれたのだろう。

夢だったのだろうか・・・




・・・妻が僕の顔を覗き込んだ。
『な、なんでもないよ』そう言って、空っぽのコーヒーカップを口につけた。

クスクスと妻が笑い、つられて娘もキャッキャッと喜ぶ。




僕は娘の右目下の泣きぼくろにそっとキスをした。


僕らのキューピットとなった、『彼女』・・・最愛の娘に。



*終わり*







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