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ふらりかずたま ひとり言 

ふらりかずたま ひとり言 

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2008年08月01日
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7月28日午後2時40分頃、神戸市灘区の都賀(とが)川が一気に増水。10人以上が流されたり、取り残されたりし、うち児童ら5人が亡くなりました。

事件直後から、雨が降ってきたのに川から離れず、橋の下で雨宿りさせていた指導員が悪いという論調がありました。
国土交通省の担当者は「雨が降ったら川に近づかないという単純なことが何より大事。急激な増水時には避難が間に合わないため、雨が降り出したら、川べりで雨宿りをしたり、様子を見たりせずに、まず川を離れるという大原則を守ってほしい」と、河川管理に問題はなく、逃げるよう指示しなかった学童クラブ指導員などの問題であるかのような談話を発表していました。

河川敷に下りる階段など17カ所に降雨による増水の危険を知らせる看板を設置してあった。携帯電話ネットサービスで1キロ四方の雨量を10分毎に情報提供していた。だから、情報をキャッチせず、逃げなかった人間が良くない。そんな単純な話で終わらせていいのでしょうか?

六甲山系の地形
神戸市など六甲山系の麓に広がる都市は、夜景の美しい観光スポットとして有名。六甲山の山頂や随所にある展望台からは100万ドルの夜景が楽しめ、有数のデートスポットにもなっています。
海岸線から2~4キロメートルの位置に山がせまっており、山から海にかけて急傾斜の「すべり台的地形」を形成しています。また、東西30キロメートルにも及ぶ六甲山系が瀬戸内海に沿って壁のように立っているため、豪雨が発生しやすい特徴を持っています。
六甲山系は日本でも代表的な花崗岩の風化地帯であり、また多数の断層が走っているため崩れやすく、大小あわせて100 に及ぶ河川が流下しています。芦屋川、住吉川、石屋川などは川底が道路よりも高い天井川になっていますが、全河川とも土砂堆積が大きく広大な扇状地が形成され、その上に都市が形成されています。

特異な程の急流河川・都賀川
列島の中央を山岳地帯が貫いている日本の河川は、外国の川と比較して急流だと言われていますが、六甲山系の「すべり台的地形」を流下している都賀川は、河床勾配が急であることから特異な程の急流河川であるといえます。洪水時、都賀川の水は一般的な河川の1.5~2倍、毎秒8メートル程で一気に流下するのです。しかも杣谷川と六甲川が、今回の事故現場の1キロほど上流(JR山陽本線北側)で合流しているため、降水時の水量は急激に増加します。

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児童らを襲った濁流(神戸土木事務所監視カメラ)

河川改修と住宅開発
都賀川は昔から「あばれ川」と言われ、明治時代から改修工事を続けてきました。昭和初期までの改修は、過去10年間の統計資料をもとに、平時に水量が少なく、洪水の例がなかったことから計画されました。川幅を狭め、川筋を移動し、直線化して暗渠(地下のトンネルに川を流す)に変えるといった方法です。さらに土砂を食い止める「砂防ダム」を上流域に設置しました。しかし、この工法では、大雨に耐えることが出来ず、昭和13年の阪神大水害で大きな被害を出しました。川幅が狭く、暗渠入口が膨大な土石で塞がれ、行き場を失った土石流は氾濫して、家屋を呑み込み、橋などを破壊しつつ下流に進み、下流域が土砂により埋没しました。 
都賀川では、昭和14年から34年まで、27年28年を除き毎年改修工事がおこなわれてきました。
六甲川・杣谷川では、暗渠の取り壊し、合流地点までコンクリートによる護岸・床張・床止工事(3面護岸工事)、川幅2.5 倍・深度2 倍化の工事を実施。また、都賀川では、合流地点付近及び合流地点以南の拡幅・掘削、全線の護岸・床張・床止工事(3面護岸工事)が進められました。さらに、上流の六甲川と杣谷川、その他小河川に
堰堤が更に施工されたのです。
しかし、昭和42 年7 月、記録的な集中豪雨がこの地域を襲い、昭和13 年に次ぐ大災害となりました。昭和42 年災害は被災範囲は比較的狭かった半面、高度経済成長下で宅地の乱開発が進み、本来ならば宅地としては不適当な山地や河岸を切り開き、河川敷にまで建築物を建てるまでになっていたため、土砂災害の直撃を受け、被害が集中しました。

防災ふれあい河川・都賀川
昭和50 年初期の都賀川は汚水量が増加、三面護岸で水深が浅く、ヘドロが堆積する「死んだ川」でした。しかし、地域の人たちが「都賀川を守ろう会」を設立、定期的な川の清掃活動、ゴミの不法投棄防止の啓発やイベントなどの活動を展開し、徐々に浄化されていきました。
そして、河川公園としての整備に至ります。神戸市は住民の要望を反映し、「都賀川河川公園」を整備したのです。整備内容は、公園から河川に降りられるように階段を設置、河床に深さ20~35cmの水遊び場を設置しました。さらに神戸土木事務所に対して、都賀川にアユがすめるよう魚道の設置を要望、平成5年に完成しました。このとき設置した、魚が遡上しやすいように水がたまる隔壁が、阪神・淡路大震災時に消防・生活用水に利用されました。

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阪神・淡路大震災時には生活用水として(兵庫県資料)

「排水路」としての都賀川
報道でも明らかにされていますが、事故当時の降雨量は、山頂付近よりも山間部と市街地の境界付近の方が多く、杣谷川での降水量を測る「永峰」で午後2時40分からの30分間に38ミリ、六甲川の測量点「鶴甲」で30分間に36ミリ、周辺の観測点でも27~44ミリを記録しました。
都賀川上流の境界付近は道路が舗装され、排水設備も整備されているため、大量の雨水が地面に吸収されることなく一気に都賀川に流れ込みます。兵庫県によると、都賀川水系には周囲8.9平方キロの範囲の雨水が排水されるのだそうです。さらに、傾斜がきつく、両岸と川底がコンクリートで三面張りにされています。要は「排水路」としての役割が大きい川なのです。国土交通省六甲砂防事務所は、境界付近の局地的豪雨は5~10分で都賀川に排出されるとしています。監視カメラの映像がテレビでも流されましたが、降り始めから10分間のうちに濁流は人々に襲いかかりました。
国土交通省も兵庫県も、都賀川の危険は十分認識していたのです。

戦後から高度成長期、洪水に強い三面張り工法は全国の河川で採用されました。「構造上、集中豪雨があると急に増水する危険性が高いと指摘されていた。しかし、川べりに人が降りることは想定していなかった」と国土交通省は言います。
しかし、都賀川は「防災ふれあい河川」として、「普段は水に親しめる心地よい川を、そしていざというときは都市災害から住民を守ってくれる川づくり」をスローガンに、これまで整備されてきました。

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親水公園で遊ぶ子供たち(兵庫県資料)

そのことは周知の事実であるのに、「想定していなかった」で済ませられるのでしょうか? 降雨による増水の危険を知らせる看板設置と、携帯電話ネットサービスでの雨量情報提供で、あとは利用者が自衛してくれというのは、国も県もあまりにも無責任ではないでしょうか? 

泥縄式の安全対策
兵庫県と神戸市は、親水公園や遊歩道などが川べりに整備され、六甲山系から大阪湾に流れ込む河川を対象に、回転灯や警報を鳴らすスピーカーなど警報装置の設置を決めました。
表六甲河川は全部で24水系51河川。これらのうち都賀川など川べりに下りられる14水系21河川を対象に設置を検討し、個所数を絞り込むとしています。
05年、県は新湊川に初めて警報装置を設置しました。過去の水害被害で住民から損害賠償訴訟を起こされたからです。ほかの河川についても同様の危険があると分かっていたのに、以前に変わらず看板などで注意を呼びかけていただけ。信じられない人命軽視、場当たり行政です。

個数制限などせずに、危険が予想される全河川に警報装置を直ちに設置すること、河川増水の危険情報が、防災無線、防災放送などで迅速に消防・警察・水防団および川にいる住民などに、伝達できるよう緊急連絡体制を整備することが求められます。
また、川を直線化し急激な増水をもたらす3面護岸と砂防ダムに頼る治山・治水行政の見直しも重要です。
住民が安心して水に親しめる心地よい流れを、コンクリートで固められた「排水路」としての川で実現することは、あまりにもリスクが高いと思われます。本当に自然と交わり、水と親しめる環境の再生こそが大切なのではないかと思います。

自衛のために
夏場は局地的豪雨、雷を伴う雨の危険も多いです。真っ黒な雲が出ていたり、雷鳴が聞こえたりしたら、自分のいる場所から遠くても注意が必要です。上流に雨が降れば、下流ほど増水量は大きくなります。上流方向の空にも注意を払いたいものです。
流れに濁りが混ざったり、木の枝などが流れてきたとき、雷が近づいてきたときは、すぐにその場から退避しなくてはいけません。
今回の事故のように3面護岸になっている場所では、水が滑り台を下るような速度で押し寄せ「鉄砲水」が発生します。様子を見る余裕すらありません。大急ぎで逃げるしかありません。
また、テントを河原や中州に張ることも危険です。特に上流にダムがある場合、放水のために予期しない増水が起こることもあります。サイレンが聞こえた場合には、すぐに川から上がる、中州などから退避しましょう。また、水門下で遊ぶことも危険です。突然、水門が開き水位が一気に上昇し、激流に巻き込まれることも。
砂防ダム(堰堤)の下も危険。土砂の多い川では、砂防ダムは短期間で土石に埋まり、満杯になります。そのような砂防ダムの上流で大雨が降ると、水はもとより土石もダムを乗り越え、土石を含んだ滝となって襲いかかります。巻き込まれたら、助かる見込みはありません。
本格的な川遊びの際は、子供にはライフジャケットの装着も必要です。流されると大人でも危険な状態になるのは、以前のブログで報告しました。子どもが流されて、大人が不用意に助けに入ると両方とも助からないケースが少なくありません。ライフジャケットと万が一のとき救助に使える道具を準備すること、その前に流されないようにする準備と対策が必要です。
その他、水に関係するところで遊ぶには、事前に調査して対策を立てて出発するように心掛けたいものです。






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最終更新日  2008年08月01日 21時12分29秒
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