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一般財団法人INSTeM(理事長・佐倉統東大教授)は、2024年3月9-10日、東京大学の福武ホールを会場に、コンベンション「大人のためのリテラシー:これからの知恵と技法を考える」を開催した。みんなの大学校も重度障がい者への生涯学習の知見を提供するのを「大人のリテラシー」として出展し、私自身も参加者向けにお話する時間をいただき、活動を紹介した。福祉や教育の領域で語られている活動がリテラシーの切り口で社会につながれば、新たな可能性が広がる。その種を新しい場所で播く作業をイメージしながら、専門家との対話は刺激的だった。「INSTeM」(インステム)は、“Inter-field Network for Science, Technology and Media Studies”の略称であり、自らを「科学技術社会論、メディア論を2つの目玉としつつ、inter-disciplinary(学際的)で、inter-field(領域横断的)なシンポジウム、出版、ワークショップ、ネットでの情報発信などをおこなう」と説明する。
ここは、領域なあいまいな時代の新しい学会、ではなく、「ハンドリングしやすい適度な規模を維持し、INSTeMならではのユニークな研究と学習の場を生み出す。英日バイリンガルで活動し、東アジアを中心として『グローカル』に人や組織をネットワークする」との機能性を重視した団体だ。今回のリテラシーについても時代に応じ、また未来を見据えた意味づけを意識する。つまり現在では「幅広い領域で、従来の教育制度に収まりきらない学びや協働活動を指して『リテラシー』という言葉が使われつつあります」との現状を受け、「幅広い領域をゆるく包み込み、おもに『大人のためのリテラシー』に注目して、みなさんの知恵や技法を共有し、ネットワークし、バザールのような雰囲気のなかで一緒にその可能性や課題を考えていきたい」という趣旨。研究部サブディレクターの水越伸・関西大教授からのお声掛けがあり、この日の出展とトークに至った。
出展は「科学とデジタル技術」「ビジネスとライフスタイル」「市民社会とデザイン」の3つのフィールドに分かれ、みんなの大学校は「市民社会とデザイン」に振り分けられたが、市民社会をデザインする視点から見れば、私たちの活動への参入の敷居は低くなる。いや、別の入口もある、とのメッセージにもなる。バザーのように出展された各種団体は従来のメディアリテラシー教育を担ってきた団体から、インターネットニュース会社、大学のゼミ、個人でのアート活動など多岐にわたった。グーグルマップで見つけた風景を絵で描く活動では、コロナ禍を乗り越え、グーグルマップで空間を超えた国際的なつながりが生まれる柔軟な世界が示されたし、スマートニュース研究所からは、従来のメディアリテラシー教育が米国のトランプ前大統領の支持者らが「フェイク」を信じる状況下で困難さを極めている現状も語られた。
このようなメディア側や市民の活動がごちゃまぜのバザーをリテラシーで括るという取り組みは新しい何かを生み出す胎動が始まるようなワクワク感がある。立教大学の中原淳教授は、この集まりを「説明が難しい」と言う。ゲーム作家で東京工業大教授である山本貴光氏は「(説明が)すんなり出てこないのは悪い事ではない。すらすら出てしまうほうがやばい。悪くない。『大人の学園祭』は良い言い方だ」と総括した。人が個体として本来持っているケアの感覚と、人がつながりグループ形成する時にも意識するケア、同時にグループ形成の目的に囚われ、他者の排除に向かうことで薄らいでいくケア、この狭間にある私たちの社会に目を向けていこう、という通底する感覚は共有できたに違いないが、この狭間をどのように表現し、また環境整備をしていくかはこれからの課題だ。毛利嘉孝・東京芸術大教授は「新しいものにつながれる」ことの重要さと、表題の「大人」について「大人って誰?」を考える面白さにも言及した。
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執筆者紹介 引地達也(ひきちたつや)仙台市出身。みんなの大学校学長、博士(新聞学)、一般社団法人みんなの大学校代表理事、一般財団法人発達支援研究所客員研究員。
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2024.03.27 06:45:45
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