読了 セバスチャン・ジャプリゾの『新車のなかの女』
【楽天ブックスならいつでも送料無料】新車のなかの女 [ セバスチアン・ジャプリゾ ]価格:1,209円(税込、送料込) フランスを代表する推理小説作家 セバスチャン・ジャプリゾ。『シンデレラの罠』が代表作。『新車のなかの女』はいかにもフランスらしい細かな心理描写と男女の関わり、愛憎と計算の入り乱れた作品です。連城三紀彦が絶賛したというのは、、頷けます。好きそう。巻末に連城三紀彦の解説もついていてちょっとお得感があります。あらすじは広告代理店に勤めるダニー・ロンゴは連休に入る前、社長で友人の夫でもあるミシェル・カラヴァーユに残業を頼まれます。相当、急ぎの仕事だということで社長の自宅でタイプライターを打つことになります。次の日、旅立つ社長たち一家を車で見送り、そのままその車(新車のサンダーバード)を運転して車庫に戻すはずが、ちょっと羽目を外してしまいそのままドライブ。 少しの間、借りるだけならいいわよねと南仏を車で旅行。初めての土地でうきうきしていたらなんと行く先々の人々が彼女を知っていて「お会いしましたよね?」「忘れ物がありますよ」などと声をかけてきます。 当惑するダニー。若く美しい女性なので男性から様々なアプローチも有り、「誰かが仕掛けたいたずら??」と考えていたところそうも言っていられない事態に陥ります。以下 ネタバレを含みますので、ご注意を。***********************************ある日、いかがわしい男性と知り合ったダニーは車のトランクに男性の死体があることを発見。紆余曲折がありますが、何者かが自分を窮地に追いやろうとしていることに気付きます。ただ、あまりにも自分に不利な証拠が多く、その「証拠」が大変プライベートなものであるため、自分自身さえ疑うことになります。もしかしたら自分は多重人格なのでは??そんな恐怖が彼女を襲います。、、、、、といっても読者なら「社長夫婦があやしいでしょう?それしかいないし」と思うのですがなかなか気付かないダニーにいらいらします。社長の妻アニタは友達だから、と疑惑を頭から追いやるダニーですが実はアニタとダニーの関係もとても複雑なんですね。旅と事件が進むにつれ、ダニーとアニタの過去が明らかになってくるのですがこの辺りの人間関係と心理描写はさすがシャブリゾ。女性が読んでもぞっとします。結末のネタバレ************************** 読者の予想通り、社長がしくんだ事。彼の妻アニタは奔放な女性。浮気の挙げ句、愛人を射殺してしまいます。それを社長であるミシェルがもともと苦手意識を持っていた事と、過去に妻を見捨てたことのあるダニーへの逆恨みで殺人事件を彼女になすりつけて殺してしまおうと画策したのでした。 南仏で土地の人々がダニーに見覚えがあるといったのも社長と妻アニタが偽のダニーとしてアリバイ工作した先々に彼女がふらふらとドライブしたため。 重要な物的証拠をダニーに捕まれたことと妻アニタからの懇願で計画を諦めるミシェル。事件は丸く収まり、ダニーはある男性と結婚するのでした。うーん、ちょっと後半がご都合主義で納得の行かない部分もありますがまあ楽しめました。ミステリーとしてより、心理主義小説を読む感覚で臨んだ方がガッカリ度が少ないかもしれません。ただ、このストーリー、もしカトリーヌ・アルレーが書いていたら、ダニーは死んでいただろうな、と考えてしまいました。