◆ 浅野屋丁稚塾・・番頭への道「その110 居敷当て」 ◆
単衣や薄物の着物の仕立てをお受けすることが多くなると、よくお問い合わせを頂くのが居敷当てです。昔は普段着の場合、肩当・居敷当てをつけていました。浴衣・ウールの着物などがそれに該当します。ウールの場合は本モスの生地を浴衣の場合は晒しを肩当・居敷当てに用いていました。浴衣も昔は綿の平織りの生地が殆どで、今の様に透ける織り方の生地はなかったものですから、表に響くと言う心配は殆どありませんでした。それでも、居敷当ては正方形に裁断した生地をお尻の部分に縫い付けることになるため、縫い糸の縫い目が覗いたりすることが気になる方は敢えて外してお召しになっていました。また、正絹の絽や単衣の着物を仕立てる際には背縫いの補強の為に背伏を付けることと、表に響いてしまうことを避けるため、居敷当ては付けないで仕立てをします。逆に正絹の長襦袢を胴抜きで仕立てる場合には、メーカーからの居敷当を付けてくださいと言う指示で、付けて仕立てるようにします。この場合は、着物のようにお尻の部分に縫い付けることはせず、後身頃の腰の縫込みに胴裏を入れ込む形で縫い付け、裾の少し上まで長く綴じ付けます。そうすることにより、座った時のお尻に掛かる圧力で、背縫い部分が引けてしまうことを防ぐことになるのです。このような居敷当ての付け方が今では着物でも主流になっているようですが、当店ではポリエステルの夏物・単衣の場合や、透け感が一つの魅力である麻素材の着物は、正絹と同じ仕様にしており、シルックの背伏を付けることで、背縫いを補強し、表に響くリスクのある居敷当は敢えて付けないようにしています。浴衣の場合でも、綿絽や透け感のある変わり織、地色の薄い場合には敢えて居敷当てを付けておりません。但し、お客様からご指定のある場合は、付けることもありますが・・・・毎日のように仕事着・普段着として着る着物や浴衣は見てくれよりも耐久性が求められます。逆にファッションとして着る着物や浴衣の場合は、その逆の優先順位になる訳です。これと同じことは、袖付けの閂止めも同じです。その辺りを、呉服屋としては見極め、お客様に納得していただくことが肝要です。頑張ってください!・・・目指せ 大番頭!!