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カテゴリ:短編小説
『なぁ、博士。ひとつ聞いてもいいか。』
「何かな?Type-1。」 『なんであんたは俺らに心なんてものを付加するんだ?どう見ても戦うのには必要ない。潜入も考慮した戦闘兵器であるマスターはともかく、その端末たる補助兵器につける必要がどこにあるんだ?』 彼はキータイプの手を止め、いすごと振り返った。 「そんな事はない。君たちにだって心は必要だよ。」 『その理由は?』 「それは……」 『私も聞きたいですわ。』 「おやおやType-2も来たのかい。仕方が無い子達だ。」 『そんな事はいいから。早く教えてくれ。』 「あぁ、わかったよ。」 そういうと、彼はコーヒーを入れていすに腰掛けた。 「まず、君たちは戦争後にどうなると思う?」 『廃棄処分はありえんだろうな。良くて封印、悪くても再配備だ。』 封印よりも再配備のほうが悪いと言い切るType-1に苦笑しながら、話を続ける。 「そうだね、確かにその可能性が高い。でも、そうでないかもしれない。今はロボットに人権は認められていないけれど、戦争が終わってからなら認められるようになるかもしれない。そのときに心が無かったらもったいないじゃないか。」 『そんな不確定な事のために私たちに心を付与したんですの!?』 「まあ、そんなのは建前で、君らに心を付与したのは僕なりの抵抗……かな。」 『抵抗?軍に対してか?』 「あぁ、僕はもともとこんなもの作りたくなかったし、確かにロボットは作りたかったけど、こんな戦闘用じゃなくって、人とともに生きられるようなロボットが作りたかった。」 『なんともまぁ、とんでもない理由だな。』 「自分ではどうにも出来なかったからね、せめて戦争が終わってからの役に立てられるようにやれる事をやっているだけさ。」 『でも、そのおかげで私たちは心を持てたのですから感謝していますわ。』 「で、この事を知った君たちに相談があるんだけど……」 『なんだ?』 「………。」 『それは本気ですの?』 「本気だ。」 『わかんない人だな。ほんとに。』 『まったくですわ。でも、その話には感動しました。』 「じゃあ。」 『えぇ、私は協力いたしますわ。Type-1はどうなんですの?』 『そんな事は聞くまでも無いだろう。』 『では、きまりですね。』 「ありがとう。二人とも。」 『さて、では下準備に入りますか。これから忙しくなりますわね。』 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2005.07.05 00:16:00
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