『俺は海の若大将！！』

　漁師は

海に出ているときよりも

家にいるときのほうが仕事がきついものだ。

時化になると、仕掛けの製作をする。

例えばイカ釣りの場合

竹薮に行き竹を切り

（今時分の季節の物が一番いい）

それを割り箸ぐらいの長さに割り切る

いかにもイカがノリ易い格好に削り込む

（イカ釣りの場合・・・釣れることをノルと言う）

その形成に時間がかかる。

同じような格好は出来るが、二本と同じものは出来ない。

手作りだからだ

写真は左から

イカを獲る（釣る）為のイカ針と曲げるもの

大きさを比較するための１０円玉

竹を削りこみ

イカ針を巻き

曲げて

さらに

各種の色に糸を巻く

右から２番目は、鉛を叩き上げて作ったもの

右は既製品のベークライトの軸に、針を巻きつけたもの

大事なのは糸の色と質なのだ

イカは色を見極めて、餌と勘違いするようだ。

その日の海水の色によりイカの好みが違うから複数色になる

この糸が重要で

綿のしつけ糸が一番いい

色鮮やかなナイロン糸があるが、全くといっていいほど釣れない

不思議としつけ糸がいいのだ。

だが・・・しつけ糸は汚れが付き易い

だから毎日巻き変えないといけない。

すなわち、時化の日は沢山作り置きをする

写真の仕掛けはヤリイカ用のもの

で、沢山切ってきた竹は

削る前までの工程に切り裂き、冷蔵庫に水分が乾かないように冷凍保存する

季節が変わると、イカの種類も変わる。

それに対応するために大きめにして保存する。

今の季節が竹の水分が一番少ないとされるから

固い竹だから丈夫で、青い表面の色が変色しにくいのも重要なことだ。

俺も、昔の大先輩の教えに従い

竹を切る日を選ぶのである。

それは・・・旧暦の２月の闇夜月の日。

厳密に言うと、切る日のチャンスは一日だけ

新月前の月が出ない日だけ

本当にそうなのかは実験したことが無いが・・・。

夏にストックしてある竹が無くなってしまい夏の竹を使ったことがあるが、

それでも釣れたのだが・・・

水分が多いから削るのは楽なのだが、釣っているときに折れやすいことがわかった。

夏に、冬のヤリイカのために、せっせと削り、また冷凍保存する。

漁師の時化休みは道具作りに忙しい。

もっとも・・・楽しみはある。

造ったイカの干物を肴に、真昼間から酒を飲みながらなのだ。

干物の出来を評価するには実際に酒を口にしながらの味見が大切だからだと

自分に言い聞かせている。

ふと表を見ると・・・雪が降っている。

更に、雪見酒と洒落込もうか

イカの干物も特級品に仕上がったようである。

バックには大好きな加山雄三やベンチャーズのサウンドを聴きながら・・・