ミーティングルームの中で、山崎は呆けたように一点を見つめていた。衛が部屋に入ると、怯えたようにビクッと肩を震わせた。
「・・・大丈夫か?」
衛は、暁が座っていた席に座ると山崎の様子を伺った。山崎は色を失った目で、膝の上で組んだ自分の手を見つけると、ぼそっとつぶやいた。
「アキラさんを怒らせてしまった。」
衛は腕を机に乗せると両手を顔の前で組んで身を乗り出した。
「あれはあいつの防御反応なんだ。追い詰められたから突き放した。別にヤマサキのこと、嫌いになったわけじゃないと思うぜ?あいつは追いかけられると引くタイプなんだよ。」
山崎は姿勢も視線も崩さない。
「だからって、俺なんかが引いたところで、追いかけてくれるわけがない。忘れられるのがオチだ。」
確かにな、と衛は思った。正直言って衛が山崎にかけてやる言葉はこれ以上なかった。
「・・・あいつと、俺と、何が違うって言うんだ。」
山崎の目が微かに揺れた。突きとめてやる。そう言って山崎は立ち上がった。
「おい」
衛は何か不穏なものを感じて声をかけたが、その声は彼には届かなかった。
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君が思うほど僕は君のこと好きじゃない・33
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